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優しさの種類

「あの人は優しい人だ」このような言葉を耳にすることは、たびたびあるのではないかと思う。この言葉には、どのような意味が含まれているのだろうか。どのような意味で使われているのだろうか。

そもそも「優しい」という言葉には、少なくとも2つの意味があるように私には思われる。

  1. 何事も丁寧に教えてくれる。物腰が柔らか。怒らない。厳しいことを言わない。辛い時に一緒にいてくれる。

  2.  方向性を修正して困難を回避させてくれる。厳しくても誤りを正してくれる。

1の優しさは、分かりやすい優しさである。正の優しさとも呼べるだろう。この優しさは、優しさの受け手が、正しい方向へ進んでいるとき、それをさらに後押しするような優しさである。そのため、受け手にとって心理的摩擦が小さく、「優しさ」として肯定的に受け止められやすい。

それに対して、2は分かりにくい優しさである。負の優しさとも呼べるだろう。この優しさは、受け手が間違った方向に進んでいる時に、それを軌道修正しようとしてなされる優しさである。そのため、受け手にとって心理的摩擦が大きく、時として「ひどい」人扱いされることもある。また、受け手にとっては受け入れにくいことも有り得る。

大事にすべきは、おそらく2の方の優しさだろう。1の優しさは、自身の喜びを増幅させてくれる。しかし、自身の進んでいる方向を軌道修正してくれたり、成長の機会を得られたりする可能性は低いだろう。それに対して2の優しさは、場合によっては受け手に苦しみをもたらし得る。しかし、正しい方向、間違いではない方向に進みやすくしてくれるだろう。また、2の意味での優しさを与えてくれる人は、多くない印象がある。

1と2の優しさを比べた時、後者を「優しさ」として気づける人は多くないのではないだろうか。この優しさは失って初めて気付くということもありそうだ。

ただ、2の優しさは与えることも難しい。与えるときはあくまでも冷静かつ論理的に。やり方を間違えれば、ハラスメントになる危険性も孕んでいるからだ。ハラスメントへの恐れもあって、2の意味での優しさを与えてくれる人が減ってきているのではないかと思う。その結果台頭してきたのが、自己責任論というものだろう。これにより、2の優しさを与える必要性も動機も解消され、「成長できなかったのは、あなたのせいでしょ」となる。

2の優しさにも気づけるような人として、生きていければ良いし、そのような優しさを与えられるような人になれれば良いように思っている。

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