なおさん

読んだ本のことや、日々の生活の中で思ったことなどを文章にしています。まとまった文章を書…

なおさん

読んだ本のことや、日々の生活の中で思ったことなどを文章にしています。まとまった文章を書く練習をすることが最大の目的のような気がしています。

最近の記事

政治的なものとは本来、自ら義務を負うことです

永井清彦編訳『言葉の力 ヴァイツゼッカー演説集』岩波現代文庫、2009年。 ヴァイツゼッカーはドイツの大統領を務めたこともあり、演説の名手としても名を馳せた人物である。 本書は、ヴァイツゼッカーの演説のいくつかをまとめたものである。そこからはヴァイツゼッカーの歴史認識と過去のドイツの行動についての姿勢、ナチスの時代を生きていない人も負うべき責務と、そうでない責務、政治家のみならず遍く人々の政治に対するあるべき態度といったものを読み取ることができる。第二次世界大戦での敗戦と

    • 写真撮影と自我を持つこと

      最近は趣味の一つとして、写真撮影が入ってくるようになってきた。カメラのメカニックな感じが気に入ったということからである。また、簡単に綺麗な写真が撮れそうというイメージもあった。 そんなこんなで出かける時にはカメラを持ち歩くようになった。また、出かける機会もカメラを使うようになってから増えたように思う。出掛けては何か被写体を見つけたシャッターを切るということをしている。しかし、現実というのは厳しいもので、なかなか納得のいく写真というのは撮れない。それはなぜなのだろうか。 納

      • 実に表現の自由こそは自主政治社会の本塁というべきです

        E. H. ノーマン著、大窪愿二編訳『クリオの顔』岩波文庫、1986年。 本書の存在を知ったのは色川大吉『歴史の方法』で度々引用されていたことによる。そこでの引用部分が面白いと思ったため、本書に手を伸ばすことにしたのである。 これまで、ノーマンという人物の存在は全く知らなかった。彼はカナダの外交官で日本語が堪能な上、日本を愛し、日本に関連する多くの論考を遺した人物のようだ。本書に収められている論考は、ノーマンの外交官人生と赤狩りに追われた時期に書かれたものである。 ノー

        • 文章の価値

          これまでのところ、私がnoteに投稿している記事は、全て無料としている。一方で、記事を有料にして、noteで副収入を得てみたいという思いがないわけでもない。有料化しても多くの人に私の記事を読んでもらうためには、継続的に、興味を持ってもらえるような文章を書くことが必要だろう。今のところ、記事の毎週連続投稿記録は順調に伸びてきていて、3月で連続100週の投稿を達成した。ということは、記事の継続性にはあまり問題はないと言えるだろう。 問題は、有料化しても読んでもらえるような記事の

        政治的なものとは本来、自ら義務を負うことです

          機能の存在を知り、理解する

          パソコンやスマホ、車、各種アプリなど、身の回りにあるありとあらゆるモノが、次々と高性能、多機能になっていっている。しかし、こうしたモノの性能向上に、我々が十分についていけているとは言えないだろう。つまり、高いお金を出してあるモノを買ったとしても、その機能の一部しか使っていないということが、しばしばあるだろうということだ。 そのような例の一つして、Excelが挙げられるだろう。Excelには何かを計算したり、何らかの数値を処理したり、結果をグラフなどで表現したりといった、とに

          機能の存在を知り、理解する

          自分の考えの不徹底は、必ず表現に出ます

          吉岡友治『シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術』草思社、2015年。 どのようにして文、文章を書くのか。どのようにして主張あるいは反論を構成していくのか。そして、どうすれば批判が行えるのか。こうした点を本書は説明していく。 本書を一読して、その内容には「なるほど」と納得した。しかし、納得できたからといってそれを実践することは容易なことではない。実践するためには、本書で述べられていた内容を常に意識して、文章と向き合うことが求められるのではないか。その結果、時間をかけ

          自分の考えの不徹底は、必ず表現に出ます

          修了確定

          先日、大学院の修了者が発表された。ネットで掲示板の両方での発表で、せっかくの機会ということで、大学にある掲示板を見に行った。大学院だけでなく、学部の卒業者発表も同じ掲示板で行われていたため、私の学籍番号を見つけるのに少し手間取った。一瞬「あれ、見当たらないな…」となったが、よく見ていくとしっかりと私の学籍番号も記載されていた。 修士課程というのは2年間が最短の終業年限である。これはとても短い期間であるが、この期間に得た知識、体験は、非常に密度の濃いものだった。失敗も成功も、

          生成AIと人間

          生成AIといえば、この分野を全くキャッチアップしていない私でも認識しているほど、わずか1年足らずで急速に成長した。2023年には、周囲の少ない人間が、何らかのAI技術を積極的に利用していた。生成AIを利用することで、勉強や研究活動の効率化を図っていたのである。私も頻繁にではないが、生成AIを利用することがある。 また、SNSを覗いてみれば、生成AIの数多あるサービスを紹介して、その使い方を説明するようなサイト、投稿、動画が溢れている。 つまり、生成AIは私たちの生活に密接

          生成AIと人間

          修了を見据えて

          修士論文の提出と口頭試問を終え、また月日も流れてもう3月になった。大学院修了まで秒読みといった時期に来ている。学生生活も残りわずかになったので、今は学生のうちにしかできないこと、まとまった時間があるときでないとできないことをしている。 今回、私は大学院から離れるため旅立つ側だが、それと同時に見送る側でもある。 それはどういうことか。大学院進学当初から、私と深く関わりがあり、よくしていただいた博士課程の先輩が2人いる。彼らは、私の終了直前までに留学へ旅立って行ってしまった。

          修了を見据えて

          地方公立高校と大学の再編

          国公立大学の前期日程試験も終わり、また2月から3月へと月日が移り変わろうとしている。3月になれば、国公立大学の中期・後期日程試験、さらには各地の公立高校の入学者選抜が行われ、入試シーズンもラストスパートといった時期だ。 受験生にとって重要な時期だが、こうした入試に携わる方達にとっても悩ましい時期だろう。少子化が急激に進む日本において、志願者の確保と定員の充足は死活問題だからだ。しかし、日本の大学全体でみたとき、少子化への対応は遅れていると言わざるを得ない。2024年度も新設

          地方公立高校と大学の再編

          文章執筆力の伸び

          昨年の11月初旬から修士論文の執筆が本格化した。それから修士論文の提出、さらには口頭試問に向けての準備において、自分の書いた文章を読み直す機会も必然的に増加していた。読んでいて思ったのは、卒業論文を執筆していた頃から文章力はさほど成長していないのではないかということだ。読んでいて、あまり面白くないのである。たしかに、文末表現のバラエティは豊かになってきた。しかし、長いこと読みやすい文章を書くことを試みてきたが、目立った成果が上がっていないように感じられてショックではあった。。

          文章執筆力の伸び

          最後まで帰国を信じていた男の物語

          辺見じゅん『収容所から来た遺書』文春文庫、1992年。 Mrs. Green AppleにSoranjiという曲がある。この曲は映画「ラーゲリから愛を込めて」の主題歌となっている。そして、この映画の原作となっているのが本書である。つまり、一つの曲をきっかけとして、本書にたどり着いたのである。 映画のタイトルにある「ラーゲリ」とは、ソ連による強制収容所を指す言葉だ。本書は、ラーゲリでの抑留生活について、山本幡男という実在の人物を主人公に描いた物語である。そこからは酷寒と貧相

          最後まで帰国を信じていた男の物語

          不十分、完璧

          「〇〇は対策として不十分である」 「〇〇は△△がないため不十分である」 このような主張は、政治、SNS、ゼミ、記事など、様々な分野・機会で見られる。「不十分」という言葉は、相手や対象を評価する際に用いる。 しかし、「不十分」と連呼されると、一つの疑問が生じてきた。この言葉を用いている人たちは、何をもって、あるいはどのような条件が備わっていたら「十分」だと見なすのだろうかということである。対象を批判するためだけに、「不十分」という言葉を安易に使ってはいないだろうか。本来、批判

          不十分、完璧

          研究するのは、「ゴールポストが動き回るグラウンド」でサッカーをするようなものだ

          E.M.フィリップス、D.S.ピュー著、角谷快彦訳『博士号のとり方(第6版)』名古屋大学出版会、2018年。 本書を手に取ったのは、ある学会の名大出版会のブースで、である。それ以前から本書の存在は知っていたが、意識の外にあった。しかし、偶然目の前に現れたため、購入することにした。研究大学の大学院にいると、博士課程というのも比較的身近な存在になる。そうなると、博士課程への進学ということも考える。私もいずれは博士に、という思いもあり、本書を購入することにしたのである。 本のタ

          研究するのは、「ゴールポストが動き回るグラウンド」でサッカーをするようなものだ

          問いがなければ何も返ってこないのです

          リュシアン・フェーヴル著、長谷川輝夫訳『歴史のための闘い』平凡社、1995年。 著者のフェーヴルは、現代の歴史学を形作った人物の1人である。そのような人物による歴史学の入門書だ。 もう古典の部類に入ってくるような古い本だが、フェーヴルの主張は明快で理解しやすいものとなっている。また、フェーヴル以前の歴史(学)に対するフェーヴルによる批判は、現在の歴史教育にも通ずるものがあるだろう。 過去の歴史学とは、どのようなものか。それは知識を重視し、事実の発見に重きを置くような学問

          問いがなければ何も返ってこないのです

          紙の本と電子書籍

          年々、紙の本の売り上げが減少している。以下の記事にあるように、紙の本は右肩下がりである。一方で、電子媒体の本は概ね順調に売り上げを伸ばしているようにみえる。 他方、世界情勢をはじめとした様々な要因によって、本の価格も上昇傾向にある。そうしたなかで、紙媒体と電子媒体で、棲み分けを進めて効率化を図る必要があるとも言われる。 すでに私自身も、両者の棲み分けは行なっている。マンガとライトノベルは電子書籍で読み、それ以外の小説とか新書、専門系の本などは紙媒体で読んでいる。 両者の

          紙の本と電子書籍