宗教勧誘に見放された話

 二十歳そこそこの頃、壮年女性とその娘さんと思しき二人組というなんともスタンダードな宗教勧誘がちょくちょく来ていた。

 おちょくって追い返すなどという悪趣味な真似はできない誠実な僕は、興味はないけどぞんざいにもせず半ば上の空で聞くともなく相槌を打っていた。私達と共に聖書を学びましょう。そうすればあなたの人生は素晴らしいものになります。天のお父様が必ずや良いお導きをお与えくださいます。とかなんとか。

 そんな中おばちゃんは言う。

「近頃は若い人の凶悪犯罪が多いでしょう?興味本位で人を殺したり。私達と聖書を学べば道を踏み外すこともありません」

 僕は言う。

「絶対実際にやりはしないけど体験としてどんなものなんだろうという興味はゼロじゃないですよ」

 来なくなった。

 どうやら僕は天のお父様に見放されたらしい。悲しい。こんな僕こそ導きが必要なはずなのに。不可思議なるかな。神の死したるを知らざるか。知らんがな。

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