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真夜中のフィレンツェで恐喝された時の話。

滞在許可証更新の為に、色々な役所に振り回されていた1ヶ月間は、精神的にも疲労がたまり、自分の運気も下がっていました。

携帯が壊れたり、
メガネが突然半分に割れたり、
仕事仲間の車が故障したり、
自分の周りの人のケガや体調不良が続出。

いつも皆大事には至らないものの、こういう時は1年に1回くらいはあるので気長に不幸の連鎖が止まるのを待つしかありません。
だいたいマイナス思考に陥りがちな精神状態や生活環境を少しずつ改善していくと、そのうち連鎖は止まるものです。

そんな中、僕がフィレンツェの警察署に、滞在許可証がちゃんと準備できているか直接尋ねに出向いた時の話です。

警察官に「予約がないならダメ。明日来い」
と言われてしまい、なんとなく予想はしていたものの、その日のホテルは取っていませんでした。

というのも、観光も含めて何度もイタリアの宿泊を繰り返していると、1泊ぐらいは野宿したって大丈夫なんじゃないかと思っていたからです。
語学学校の更新料が高かったので、この月は節約したかったのと、
まだぎりぎり夏の名残の気候だったので、大丈夫だろうと思っていました。

しかし、それが間違いでした。

そんなこんなで深夜0時ぐらいまではマクドナルドで過ごし、閉店時間になると、僕は広い公園のベンチに移動しました。
(ちなみにPiazza della Indipendenzaです。)
このままベンチで時間をつぶし、早朝になったら再びマクドナルドに行こうと考えていました。

深夜2時くらいになり、ひとけも少なく静かになってくると、僕と同じくらいの背丈の黒人が一人、僕に近づいてきました。

彼は僕の目の前で突然止まると、おもむろに話しかけてきました。
「やあ、兄弟!」

僕は笑顔で答えました。
「やあ。」
警戒心を抱きながらも、はじめはオープンマインドで接するのがよさそうです。

「ここで何してるんだい?」

「いや、ちょっとベンチで休憩。ケータイを見てるよ」

「こんなに夜遅く?ちょっと見せなよ」
彼は僕のケータイを覗き込んできます。

「いや、やだよ」
僕が拒否すると、今度は僕の隣に座りました。

「やあ兄弟。君は中国人かい?」

「いや、日本人だよ」

「お互い外国人だ。仲良くしようぜ兄弟!」

あーこれ、めんどくさいやつだなー。(僕の心の声1)

彼は僕の持っているバックパックにやたらとタッチしてきます。
遂には僕の後ろのポケットに入っている財布にも目をつけ、触ろうとしてきます。

あーこれ、ほんとにめんどくさいやつだー。(僕の心の声2)

「金は持ってんのか?」

「無いよ。」

「20ユーロくれ。生活が大変なんだ。」

「すまんが本当にないんだ。」

「少しくらいあるだろ」

「いや、本当にない!」

僕は頑なに拒絶すると、彼は突然立ち上がり、僕の胸を拳でいきなりドンドンと2回叩いて叫びました。

「なあ聞け! 20ユーロ俺によこすか、お前のこの心臓かどちらかを選べ。俺は今ナイフを持っている。本当だ。」

あーこれはとてもめんどくさいぞ。(僕の心の声3)

でもこの時、僕はなぜこんなにも冷静でいられたのかは分かりません。
この危険な状況と脅し文句の不釣り合いさに気持ちの悪さを覚えたからかもしれません。

だって自分の心臓がたった20ユーロ(約3000円)って安くない?
命と比べるなら、もっと高額請求しろよ!
それに「ナイフを持っている。本当だ。」って、
ナイフ持っていない奴の言い方じゃん!

僕は彼の言っている言葉が分からない振りをして、
「NO,NO,NON HO CAPITO!」と再び断りました。

すると彼は突然僕に飛びつき、首を絞めにかかりました。
彼は精一杯の力で僕の首を絞めます。
助けを求めようにも真夜中なので、他に誰もいません。

でもその瞬間僕は首を絞められたことよりも、彼が本当はナイフを持っていないことが分かったので、痛みよりも安堵の方が勝ちました。

その時の僕はフィレンツェの警察署の仕事の遅さに対するフラストレーションも溜まっていたのでしょう。
とりあえず力いっぱい振り絞って彼を前方にぶん投げました。
彼は僕の目の前に転げて、片方の靴が脱げました。
さらに肘を地面に打ち付けられて少し痛めたようです。

彼は「クソが!」的なことを言いながら、僕に力で勝てないことを悟ると、なぜか脱げた方の靴を放置したまま、何かよく分からない言葉を始終叫びながら去って行きました。

もし彼が力の強い大男だったり、本当にナイフを持っていたりしたら、大事になっていたと考えるとゾッとします。

とりあえずこの公園は危険だということが分かり、もっと平和そうな公園に移動し、木の根元で2時間くらい横になった後(懲りない人間)、
サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の近くの24時間やっている別のマクドナルドに移動し、うとうとしながら次の日まで過ごしましたとさ。


教訓
イタリアで野宿はやめましょう(当たり前)


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