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母のスライサー

先日の日曜日の事。私は作品展とワークショップがあったので大阪へ、夫は建築技能士会の見学会で朝から福井県へ行くことになっていたので中2と小6の息子たちだけで初めてお留守番をしてもらいました。

大丈夫かな?喧嘩しないかな?ご飯はちゃんと食べるかな?と心配をしていましたが、ガスコンロを使う時は連絡をくれて、夕方には買い物をして二人でハンバーグを作ってくれていました。なんと愛おしい息子たちでしょう。彼らもエッヘンという感じで自信満々のようでした。

子どもたちの留守番で私の小学校四年生の夏休みの時のことを思い出しました。姉の股関節の手術を受けるため岡山の大学病院に何週間か母が付き添いでいなかったので父と兄と私の3人だけの夏休みをすごしました。私はごく自然に家事を引き受けました。普段からお手伝いをしていたので少し自信があったんですよねきっと。母が使っていた道具で料理をしたり掃除をしたり日に日に自信をつけていく私はホワイトシチューを作ろうとルウの箱の裏を見ながら作ったこともないメニューに挑戦。仕上げの牛乳を入れた途端に火加減が強かったのか大きな鍋の底から焦げてしまい、これもまたはじめての経験で全体にかき混ぜてしまったものだから茶色くて苦くて美味しくないシチューができてしまいました。素直な父と兄は全く手をつけてくれず私は一人でそのシチューを食べたのでした。母はいないし、シチューは焦げちゃうし泣きたくなるような思いでした。

あれから30年。私は主婦になりブツブツ言いながらも日々の家事に時々やりがいを感じるのは、あの失敗から学んだ事がいっぱいあるからだと思います。

父が退職をして京都から香川へ戻るとき私は京都に残り結婚をしたのですが新しいものは買わず母から食器や台所道具の一部を譲り受けました。少しずつ自分達で使うものを選び入れ換えていくつもりでいたのですが母の使い古した何の変哲もないプラスチックのスライサーは今でも現役で働いてくれていて私の選んだ道具たちと肩を並べて台所のステージに立っています。プラスティックはあまり好きではないのですか、母との思い出がぎゅっと詰まっていて私のお守りになっています。

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