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ANTIPAST

毎シーズン大人気となっている”メッシュシリーズ”やソックスを筆頭に、そのデザイン性とクオリティの高さでアトリエ ニノンにもファンの多いブランド。

ジヌシ ジュンコさんとカトウ キョウコさんという日本人の女性デザイナーお2人で設立されたブランドで、きめ細やかな技術や遊び心溢れるデザインが魅力です。

今回は、そんなANTIPASTの歴史とこだわりについて、ご紹介していきたいと思います。


ANTIPASTの歴史

ジヌシ ジュンコさんとカトウ キョウコさんは、高校時代からのご友人。 ANTIPASTができる前は、ジヌシさんは大手の靴下の会社で企画の仕事をされており、カトウさんは外部デザイナーとして関わっていたそう。

その後1980年代末、ジヌシさんが雑誌の仕事で友人の編集者に頼まれ、「ものをつくる」という連載ページを担当することに。 
そこでカトウさんに手伝いをお願いしたとのこと。
その時カトウさんはというと、生地をつくる最初の過程であるテキスタイルデザインの仕事をしていたそう。ファブリック用だと言われてデザインしたものでも、その先どんなアイテムになるのかはデザインを購入した会社次第。 カーテンになるのかクッションになるのかそれとも…というお悩みを抱えていた、とお話にありました。

そして、「ものをつくる」連載ページのために、お2人共仕事の合間を縫って服や装飾小物を作ることに。
連載には毎回、アイテムや素材などのお題があり、それに合わせて自由にファッションアイテムをつくったり、スタイリングしたりしたとのこと。

その中の1つの記事にて「おしゃれなレッグウェアを作ろう」という話になったそうです。

ただし、その時代は機能優先で安価なものが人気を集めていた頃。
今でこそおしゃれなソックスブランドはたくさんありますが、当時、ファッションの主役はあくまで服であり、ソックスやストッキング、タイツなどは、どちらかというと後回しにされていたのです。
そしてさらに、当時のソックスといえば今より厚手のものが一般的。それ以外だと派手なキャラクターものや柄物の靴下でした。 だから、足が太く見えたり、エレガントな靴と組み合わせるのが難しかったりと、なかなかうまくいかなかったのです。

お2人は、そうではなくてスノビッシュにキチっと、かっこよく洋服と合わせられるものがあったらいいなと考えたそうです。
そんな2人が始めたのは、ハイゲージ(細かい編み目のもの)で薄手のソックス。

ある日、紳士用のソックスは、薄くて細かな柄が入っていることに気づき、そこに頼めば私たちが作りたいものができると思ったとのこと。
ただ、頼まれた工場も最初は随分と戸惑ったとか。メンズを手がけていたので、レディースと寸法が違うこと、きれいな色などを使うことに慣れていなかったのです。
紳士ソックスを作っていた工場と組んで、一緒に良いモノ作りに挑戦したことが、新しいレッグウェアの世界を創ったのです。

これは業界的にも画期的だった出来事だそうです。

縫製ではなくニットのリンキングという手法でソックス生地を縫製することで仕上がりが格段にきれいになり、デザインの幅も格段に広がってきました。
 柄も細かいものができるようになり、使える色数も増えてきて「靴下って、面白いかも!」となったとのこと。

そこから、1991年にCoup de Champignonを設立するまでに至ったそうです。

ブランドを始めた当初は、靴下やタイツは「ファッション」というカテゴリーの外側にあった時代。
でも、そうじゃなくて、靴下を「ファッション」に引き上げられたら、というお2人の思いがありました。

1992年、2人はパリで開催されるファッション・アクセサリー(バッグ、靴、ベルト、レッグウェアといったもの)の展示会「プルミエールクラス」に、応募してみることにしました。
「自分たちの作っているものが世界でも通用するのか、試しに出してみよう」と考えてのことでした。
そして、審査を通過して出展することに。
なんと、日本から出たブランドは「アンティパスト」だけだったそうです。 PARIS PREMIERE CLASS にて、ANTIPASTとしてデビュー。

そこでプレスやバイヤーからの反応を得て、半年に1回行われる展示会に定期的に出すことに。
欧米をはじめ、日本から出張して買い付けているところも含め、多くのショップのバイヤーとのビジネスが広がっていったのです。

営業も生産管理もわからない状態のままの海外進出。当時は人種差別もあり、彼女たちのことは友人が守ってくれたそうですが、展示会後のパーティで別の日本人がナプキンを投げられたりした光景も目にしたとか。

それでも、アンティパストを始めた当初からずっと根底にあるのは、服が好きだということ。どんな靴下を履きたいか?ということから考えて、だったらこんなスカートで、そしたらこんなトップスで…という感じに、靴下からファッションを考える。そんなものづくりもあっていいんじゃないかなって、とお2人は語ります。

引き続き2000年3月まで、パリの展示会に出展をしていました。

2005年S/Sシーズンからは、アクセサリー中心のANTIPASTに加えてウエアーを中心とした「+ANTIPAST」を開始し、2007年 10月にはパリの展示会をTER ET BANTINE SHOWROOMに移転。
現在、年2回のペースでパリ、ミラノ、東京にて展示会を開催しています。
2013年AWシーズンからは、単独の展示会場にてコレクションを発表しています。

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サスティナビリティ

また、現在話題にもなっているサスティナブルな活動も。

売れずに残ってしまった靴下にも愛着があるので、とサルのぬいぐるみ「ソックモンキー」をつくって、売上金の一部はユニセフに寄付しています。

アンティパストの展示会へ足を運ぶと、玄関マットやテーブルマットなどのいたるところに、靴下のデザインが見られます。
廃棄しない、ということも意識されているのだな、と細部から感じます。

また、服と違ってレッグウェアは最小ロット(最低限の生産単位)が大きいとのこと。
あるタイツを作ってみたら、最小ロットが何と1000足。売り切るのがなかなか難しいのでと手袋に仕立て直したところ、思いのほか好評だったといいます。
考えてみれば、脚を覆って温かさを保つタイツの実用性は手袋にぴったりだし、「アンティパスト」の美しい色柄は、確かなファッション性を備えています。

当店で仕入れているカーディガンにも、靴下と同じ柄のものがあり、柄は仕入れるときにこちらで選ぶことができるので、買い付ける人やお店の個性が出せるところも面白く、ANTIPASTの発注をするときはいつもワクワクできます。

ANTIPASTのデザイン性は、レッグウェアだけでなくどんなアイテムでも魅力的にしてしまうな、と思います。

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靴下作りについて

アンティパストの靴下は、1足2500円程度と決して安くはないですが、それにも理由があります。
ものをつくるときは、経験値として、素材はできるだけいいものを使いたいというお2人のこだわり。
その値段だからこそ、触ればわかる絶対的な良さを体感できる製品に仕上がっています。

アトリエ ニノンのスピリットでもある、手仕事というワード。
靴下づくりの中にはたくさん手仕事が詰まっていて、編み機だけが機械であとはすべて手作業です。
ひとつひとつコンピューターに柄をいれて、配色して。リンキングというひと目だけ縫うひともいて、アンティパストのハンコを押すとか、最後にシールを貼るのも手作業とのこと。

検品も、ひとつひとつ手作業です。
そして、手作業ではない、編み機で編む工程もたっぷり時間をかけて編みます。特にかかとの部分は時間をかけて編み、余裕を持たせることで靴の中で靴下がズレにくくなるようにしているそうです。

お2人は、若いスタッフには「質の良い、本当にいいものを手にすることが大切」と折々に伝えていきたいと思っているとのこと。
いいものを手にする経験がないと、それがどれだけ良いかというのはわからない。経験がないまま「ここらへんでいいや」となってしまうと、その範囲で一番いいのはコレ、という感覚になる。どうしてもそこから上にはいけないので、というお話もありました。

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メッシュシリーズ

定番的な存在になっている「メッシュ」シリーズ。

透け感があって伸縮する素材に色柄が付されたもので、プルオーバーやカーディガンなどに仕立ててあります。軽くてストレッチ性があるので着やすく、コンパクトにたためてシワにならないので、旅行や出張にも便利と、ロングセラーになっています。
もともとは、ある工場から「ストッキング用の布が余っていて、何とかできないか」と相談を受けたのがきっかけで出来たものだとのこと。

ナイロンなのにコットンのような肌触りに惹かれた2人は、きれいな色に染めるための試行錯誤を繰り返し、フロッキーという手法で柄をのせ、3年ほどをかけて服に仕立て上げました。
当店でも毎シーズン取り扱っているメッシュシリーズですが、洗っても型崩れせず、繊細なのに丈夫と評判です。
通常、伸縮性のあるナイロンの生地にフロッキーのプリントを乗せると、剥がれたり割れたりしてしまうのですが、そうならないような工夫を3年かけて編み出したのは画期的だと感じます。

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大切なこと

履いてくださる方たちの高揚感は本当に大事で、そこが一番うれしいし、やりがいになるとのお2人。
被災地に靴下を送った際も、「かわいい!」と言いながら柄物の靴下を選んでいく、というお話を聞いて涙が出そうになったとのこと。
気分が上がるものを身につけて、靴下から全体のコーディネートをして、うれしくなる。きっとそんな光景を思い浮かべながら作っている作品は、今日も世界中で人々を幸せにしています。

そして、ベースの「ANTIPASTらしさ」に加え、それが押し付けにならないよう折り合いをつけて柄に落とし込むことが大変とのこと。
自己満足にならないというのが大切だけれど、どんどん突き詰めていくとどうしてもひとりよがりなものになってしまう。 そういうときは一旦俯瞰してみることで「あ、違ったな」って気づく。そのくり返し。

それはアートとデザインの違いで、アートなら自分の世界を突き詰めてもいいけれど、デザインとしては「どう合わせればいいか分からない」っていうのは違うんじゃないかな、と仰います。
なんども俯瞰して「こういうの、ほんとに履きたい?」って自問して、サンプルを自分で着て、履いて、たしかめる。 そのくり返しでだんだんステップアップしていくんですよね。とのお話でした。

続けるということは、みなさんに認めてもらいながらじゃないとできないこと。 
靴下を履いてくれる方はもちろん、工場さんやバイヤーさんからも評価してもらいながら、ちゃんと、続けられたらいいですね。


お2人の思いやこだわりが詰まったANTIPASTのアイテム達。

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