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排除するためではなく、どう付き合うかを知る方法の1つとして


(※ずっと下書きに入れっぱなしだった記事を仕上げました。
随分時間が経っているので、記事内の"今"は、もう"今"ではないのですが、
そのままにして仕上げました。)

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今日のnoteを書くにあたり
完璧って言葉の意味を改めて調べてみたんですよ。

一つも欠点がなく、完全なこと。完全無欠。

だそうです。

これを見てどう感じるかは人それぞれだろうけど

私は…とても息苦しいです。


さー、今日私が話したいこと
どこから切り出そうか。
ほんとはずっとずっと前から
一度言葉にしたいと思っていたこと。

サムネの写真はnoteのシステムから借りた藍染をする人の手の写真。

実はここ数日、私の指の爪も徐々に真っ黒になってきていて
今日でその作業も終わり
これを書くことにしました。

なぜ私の爪が真っ黒なのか?
私の場合は染め作業をしているわけではなくて

原因はこの子↓

Coffee トートSに使っている
墨色の帆布
ヴィンテージ風加工
これは生地を痛めつけて加工をするのとは違って
あと染め+摩擦でムラ感を出して
それを表現している生地のようで
色落ちがすごい。

何かを優先すれば、何かは劣る

物事は得てしてそんなものです。

折り返して
手でしごいて
ひっくり返して

作る過程での生地と手との関係性は
通常バッグを使うだけとは異なる接触を連続して行うことになります。
しかも複数個製作し続けるわけですから。

結果、私の手は真っ黒に。

とはいえ
普段のご使用でも色落ち、色移りはするのでご注意を。
薄色の洋服と合わせたり、は禁物案件。

これでNOを突きつけるのか
その色落ちがあるからこその
この風合いを楽しむことを選択するのか
それは個々の判断。

まあ
そもそも
麻袋とヴィンテージ風加工の帆布、
お互い堅牢度最低ランク同士のものづくり。

※ここで突然出てきた堅牢度という言葉。アパレル系の方ならご存知かと思いますが、一般的には聞きなれない言葉ですよね。

堅牢度(読み方:けんろうど)とは、染色された生地の色落ちや色移りなどに対する強さを表すものです。
染色された生地は洗濯、摩擦、光などによる変退色のしやすさを試験し数値化します。

テキスタイルネット

なんだか小難しいこと書いてますが
実はこういう基準があるんですね。

以前、こういう検査をする機関で働く方のXの投稿を見かけました。

検査機関で働く方…それだけでもうなんというか、めちゃくちゃ厳しそう…みたいな、そんな先入観を持ってしまっていたんですが
実際は違っていて

アパレルメーカーは
消費者からのクレームに怯えて
本来使いたい素材
挑戦したいこと
優先したいデザイン
を諦めざるを得ないこの世の中の風潮に嫌気がさす

というようなニュアンスの投稿だったんですね。

検査をすることもいいけれど
その目的が
より無難なもの
リスクを負わない選択の基準になってしまっていて
商業施設に入っているブランドは横並びでつまらない景色になってきている。

リスクを知った上で
この素材を使いたいというデザインの意図、価値を伝える、
その基準として検査機関を利用する、
そんな世の中になってほしい

みたいなことが書いてあって。

その投稿でも
完璧な、何の欠点もない素材なんて存在しない、ということも言ってました。

昨今のデザイナーからは
消費者からクレームを受けないという意味で"安全"で、その上で目を惹く素敵な素材ないですか?ってよく質問されるそうなんですが
そんなものはない。
どんな素材も完璧ではない。
そもそも完璧とは何なんだ?

どこかの偉い人たちが
日本の基準
世界の基準
を決め
さらに今は個人の基準に悩まされる。

もうイタチごっこ。

消費者にも個人の基準があるように
ブランドごと
クリエイターごとに
基準があっても
不思議ではないはず。

それが色になり味になる。

私たちは選択する自由を持っているはずだ、とご自身の考えを述べていて。

あの投稿は私はとても好きで
印象的で、嬉しかった言葉でした。

検査機関で数字と睨めっこ
合格
不合格
の目線しか持ってないのかと…
私こそ先入観を持っていたことに、申し訳ない気持ち。

ごめんなさい。

そういえば昨年コーヒー染めをお願いした染め屋さんもおっしゃっていました。

いろんなブランドから染めの依頼を受けるたびに
堅牢度への不安の話になる、と。

もちろんご自身もブランドを持っていて、都心の百貨店で9年連続popupを続けていらっしゃる。

"でも私は堅牢度試験はとりません。"

とはっきりとおっしゃっていました。

この素材をいいと思ったら、堅牢度を気にするのはおかしいでしょ?
色落ちするに決まってるし、色落ちする素材だからこそ、その色落ちによって経年変化を楽しめるんだよ?
比例してるわけでしょ?
化繊にはできない世界を作れるんだよ?違う?

と。

染めの世界で生きる人の力強さよ。

おっしゃる通りです。

私も麻袋と向き合う1人のクリエイター。
麻袋の難はもちろん知った上で、その難とうまく付き合っていく術や思考を得た今、何の苦もないし、気にならない。麻袋ってそういうものですからね。
麻袋に機能や万能を求めるのは
全く世界が違っていて
できるかできないか以前の話であること、伝えていかなくちゃなって、popupの回数を何度重ねても思います。

そもそもね
色落ちするものでも
素敵なものはたくさんあるんですよ。

デニムも
藍染も
インディゴも。
海外の生地も素敵だけど
特に民族系の色鮮やかなテキスタイルは色落ち要注意案件。だけど素敵であることはみんな知ってますよね?
そうなの、素敵なのよ。その気持ちを大切に育てていく空気感がほしいなと。

だから今、手を真っ黒にしてでも
素敵だなと感じたこの帆布を使って、バッグを作っています。
嫌だと言う方もいることを知った上で、作っています。

この色合い、手触り、かっこよさは、この素材だからこそ味わえる。

相手を知ることで
うまく付き合う術を得ることができる。

相手に完璧を求めるのではなく
両者の妥協点をさぐる。
それは"仕方なく"
という気持ちが優先するより
これが好き!というピンポイントの強い感情が優先することで
ネガティヴな部分まで愛おしく感じるプロセスであれば尚良し。

そういう事なんだよなぁ。

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