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日本でベーシックインカムが導入される可能性は? ユニバーサル ベーシック インカムを分析するショートエッセイ

6,000文字 目安10分

日本でベーシックインカムが導入される可能性

日本でベーシックインカムが導入される可能性は、現時点では低いと言わざるを得ません。 その理由は主に以下の3つです。

  1. 財源の問題
    ベーシックインカムを全国民に支給するには、膨大な財源が必要です。 例えば、月にひとりあたり10万円を支給するとしたら、年間で約150兆円の財源が必要になります。これは、日本の国家予算の約3分の1に相当します。このような財源をどこから捻出するかは、非常に難しい課題です。 税金を増やすとしたら、どのような税金をどのくらい増やすか、またその影響はどうなるかなど、慎重な検討が必要です。

  2. 社会的合意の欠如
    ベーシックインカムは、社会保障制度の根本的な変革を意味します。それゆえ、国民の間で十分な理解や支持が得られるかどうかは、重要なポイントです。しかし、日本ではまだベーシックインカムに関する議論や情報が十分に普及していません。また、ベーシックインカムに対する反対意見も多くあります。例えば、ベーシックインカムは労働意欲を低下させるという批判や、ベーシックインカムは不公平であるという批判などです。 これらの意見に対してどう反論するか、またどう説得するかなど、社会的合意を形成するための努力が必要です。

  3. 政治的リーダーシップの不在
    ベーシックインカムを実現するためには、政治的リーダーシップが不可欠です。ベーシックインカムは、既存の社会保障制度や税制度と整合性をとる必要があります。 また、ベーシックインカムは、経済や社会に大きな影響を与える可能性があります。そのため、ベーシックインカムを導入する場合は、その目的や効果やリスクを明確に示し、国民や関係者と共有し、説明責任を果たす必要があります。しかし、日本では現在、ベーシックインカムを積極的に推進する政治家や政党はほとんど見られません。 むしろ、ベーシックインカムに否定的な姿勢を示す政治家や政党も多くいます。

以上のように、日本でベーシックインカムが導入される可能性は低いと言わざるを得ません。しかし、それは決して不可能ではありません。 世界では、ベーシックインカムに関する研究や実験が進んでおり、その結果や知見が日本にも還元される可能性があります。 また、日本でも、ベーシックインカムに関心を持つ人や団体が増えており、その活動や提言が社会に影響を与える可能性があります。 さらに、日本でも、コロナ禍などの危機的状況に対応するために、ベーシックインカムに近い制度や給付金の導入が検討されたり実施されたりすることがあります。 これらの動きが、ベーシックインカムの導入に向けたきっかけやステップになる可能性があります。

したがって、日本でベーシックインカムが導入される可能性は低いと言っても、諦める必要はありません。 むしろ、ベーシックインカムに関する情報や議論を積極的に収集し、参加し、発信することで、その可能性を高めることができます。


ユニバーサル ベーシック インカムのメリット

ユニバーサル ベーシック インカム(UBI)とは、全ての個人に対して、最低限の生活を送るのに必要な所得を国が保障する制度です。この制度には、以下のようなメリットがあると考えられます。

貧困対策・少子化対策

UBIによって、生きるために必要な所得が安定して得られるため、金銭的な余裕ができます。これは、貧困や格差に苦しむ人々にとって大きな救いとなります。また、UBIには年齢制限がなく、子どもに対しても同じ額が給付されます。そのため、経済的な理由から子どもを諦める人が減り、少子化対策になるとされています。

労働環境の改善

最低限の所得が保証される社会では、劣悪な労働条件で無理に働く必要はありません。そのため、労働者が仕事を選びやすくなります。 長時間残業が当たり前になっていたり、労働と賃金が見合っていないようなブラック企業は淘汰されていく可能性が高いです。

価値観のシフト

最低限の所得が保証される社会では、生きるために稼ぐ必要がないため、「稼ぐための仕事」から「本当にしたい活動」に時間の使い方が大きく変わっていくでしょう。 例えば、これまで経済的・時間的な要因によってチャレンジしづらかった社会的な課題に取り組む人々も出てくるかもしれません。「楽しい」や「幸福」を多くの人に届けられるような「文化的な創造活動」をする人も増えることが見込まれます。

以上のように、UBIは経済的・社会的・文化的な面で多くのメリットをもたらす可能性があります。しかし、その実現には多くの課題やコストも伴います。UBIは単純な政策ではありません。その目的や効果やリスクを明確に示し、国民や関係者と共有し、説明責任を果たす必要があります。

UBIのデメリット

  1. 増税が予想される
    UBIを導入するためには、全ての個人に対して最低限の所得を保証するだけの巨額の財源が必要になります。そのため、税金が高くなる可能性が大きいです。例えば、累進課税制度によって高所得者の税率を上げたり、消費税や資産税を増やしたりすることで、UBIに必要な財源を確保することが挙げられます。しかし、これらの増税は、経済活動や個人の消費意欲を減退させる懸念があります。

  2. 労働意欲・生産性が低下するおそれ
    UBIによって、生活に必要なお金が得られるのであれば、仕事を辞めたり、働く時間や努力を減らしたりする人も出てくるかもしれません。これは、労働市場の流動性や柔軟性を損なうだけでなく、国全体の生産性や競争力を低下させる恐れがあります。 また、累進課税制度を強化して所得格差を縮小しすぎると、「頑張っても頑張ってもそんなに高い収入を得られない」という不満や不公平感が生じる可能性もあります。

  3. 価値観がどうシフトするかは未知数
    UBIによって、稼ぐための仕事から本当にしたい活動に価値観が変わっていくというメリットがありますが、その一方で、どのような活動に価値観がシフトするかは未知数です。例えば、社会的な課題に取り組んだり、文化的な創造活動をしたりする人が増えるという期待はあるものの、それが実際に起こるかどうかは分かりません。また、それらの活動が社会全体の利益や幸福度に寄与するかどうかも不明です。

以上のように、UBIは個人や社会にとって様々な影響を及ぼす可能性があります。その効果は実際に導入してみないと分からない部分も多く、長期的な視点や国際的な視野も必要です。

UBIを実施している国

UBIを完全に実施している国は、現在のところありません。 しかし、UBIに近い制度や実験を行っている国はいくつかあります。以下にその例を紹介します。

  • アラスカ州
    アメリカのアラスカ州では、1982年から「アラスカ・パーマネント・ファンド」という制度があります。これは、石油資源から得られる収益の一部を、州民全員に毎年分配するというものです。分配額は年によって変動しますが、2019年は日本円で約12万円でした。この制度は、UBIと同じく個人単位で無条件に現金が支給される点で類似していますが、定期的ではなく年1回である点や、収益に応じて変動する点などで異なります。

  • イラン
    イランでは、2010年から「ターゲット補助金計画」という制度があります。これは、エネルギー価格の引き上げに伴うインフレーションや貧困の緩和のために、国民全員に毎月現金を支給するというものです。支給額は日本円で約3000円です。この制度は、UBIと同じく個人単位で無条件に定期的に現金が支給される点で類似していますが、支給額が低く生活保障水準に達しない点や、政府の財政難から削減や改革の検討がされている点などで異なります。

  • フィンランド
    フィンランドでは、2017年から2018年までの2年間、「ベーシックインカム実験」という試みが行われました。これは、失業者2000人を対象に月7万円を給付するというものです。この実験の目的は、ベーシックインカムが雇用や健康にどのような影響を与えるかを調査することでした。実験の結果報告書によると、ベーシックインカムを受けた人たちは働く日数や収入に大きな変化はなかったものの、精神的な健康度や生活満足度が高まったということです。⁵ この実験は、UBIと同じく個人単位で無条件に定期的に現金が支給される点で類似していますが、失業者だけを対象とした点や実験期間が短かった点などで異なります。

  • スペイン
    スペインでは、2020年6月から「最低生活保障制度」という制度が始まりました。 これは、所得制限をつけた上で一人暮らしの場合、月に5万円から6万円を給付するというものです。 この制度の目的は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機や貧困の緩和のためです。 この制度は、UBIと同じく個人単位で定期的に現金が支給される点で類似していますが、所得制限がある点や支給額が低く生活保障水準に達しない点などで異なります。

  • ドイツ
    ドイツでは、2021年春から「ベーシックインカム実験」という試みが始まりました。 これは、無作為に選んだ集団の中から偏りが出ないように120人を選び、一人月15万円を3年間支給するというものです。 この実験の目的は、ベーシックインカムが生活や働き方にどのような影響を与えるかを調査することです。 この実験は、UBIと同じく個人単位で無条件に定期的に現金が支給される点で類似していますが、対象者が少数である点や実験期間が限られている点などで異なります。

以上のように、UBIを実施している国はありませんが、UBIに近い制度や実験を行っている国はいくつかあります。しかし、それぞれに特徴や違いがありますので、注意して比較する必要があります。

ベーシックインカムの財源

ベーシックインカムの財源は、導入する国や地域、給付する金額や対象者、現行の社会保障制度との関係などによって異なります。しかし、一般的には以下のような方法が考えられます。

  • 現在の社会保障制度を一元化し、ベーシックインカムに充てる

  • 税金を増やす(消費税、所得税、資産税、金融取引税など)

  • 赤字国債を発行する(現代貨幣理論などに基づく)

  • 防衛費や公共事業費などの予算を削減し、ベーシックインカムに充てる

  • 環境税やロボット税などの新たな課税を導入する

これらの方法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。例えば、

  • 社会保障制度を一元化すると、行政の効率化や労働意欲の維持が期待できますが、社会保障を必要とする人々に十分な支援ができなくなる恐れがあります。

  • 税金を増やすと、富の再分配や高福祉社会の実現が期待できますが、消費や投資の低迷や労働インセンティブの低下が懸念されます。

  • 赤字国債を発行すると、増税や社会保障制度の変更をせずにベーシックインカムを実現できますが、インフレや信用不安が発生する可能性があります。

  • 予算を削減すると、財政赤字を抑えることができますが、国防やインフラなどの重要な分野に影響が及ぶ可能性があります。

  • 新たな課税を導入すると、環境保護や技術革新などの社会的価値を高めることができますが、課税対象者や業界からの反発や抵抗が強くなる可能性があります。

したがって、ベーシックインカムの財源は単純な問題ではありません。それぞれの方法には利害関係者や政治的判断が絡みます。また、ベーシックインカムは経済や社会に大きな影響を与える可能性があります。そのため、その目的や効果やリスクを明確に示し、国民や関係者と共有し、説明責任を果たす必要があります。

日本ではまだベーシックインカムに関する議論は十分ではありません。しかし、世界ではベーシックインカムに関する研究や実験が進んでおり、その結果や知見は日本にも参考になる可能性があります。また、日本でもコロナ禍などの危機的状況に対応するために、ベーシックインカムに近い制度や給付金の導入が検討されたり実施されたりすることがあります。これらの動きが、ベーシックインカムの財源に関する議論を深める機会になる可能性があります。

したがって、ベーシックインカムの財源は、単に数字や計算だけでなく、社会的な価値観や政治的な意思決定も関わる複雑な問題です。しかし、それは決して不可能ではありません。むしろ、ベーシックインカムに関する情報や議論を積極的に収集し、参加し、発信することで、その可能性を高めることができます。

ユニバーサル ベーシック インカム(UBI)のまとめ

ユニバーサル ベーシック インカム(UBI)とは、全ての個人に対して、最低限の生活を送るのに必要な所得を国が保障する制度です。この制度には、貧困対策・少子化対策、労働環境の改善、価値観のシフトという3つのメリットがあると考えられます。

UBIは、労働と所得を切り離すことで、人々に経済的な安心感と自由な選択肢を提供し、社会全体の幸福度や公正さを高める可能性があります。しかし、その実現には多くの課題やコストも伴います。UBIは単純な政策ではありません。その目的や効果やリスクを明確に示し、国民や関係者と共有し、説明責任を果たす必要があります。

UBIは、現代社会における経済・社会・文化のあり方を根本的に見直すことを求める画期的な提案です。そのため、周知され、議論されるべきテーマであると言えるでしょう。


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ベーシック・インカムについて、さまざまな角度から検討し、いかに実現可能なものであるかを明らかにする。

働いているかどうか、職を探しているかどうかにかかわらず、人々に収入を与えるというのは、ありえないと思うかもしれません。しかし、富める者も貧しい者も、活動する者もしない者も、すべての人に無条件でベーシック・インカムを支給するという考えは、トマス・ペイン、ジョン・スチュアート・ミル、ジョン・ケネス・ガルブレイスといった大思想家によって提唱されてきました。

今日、それは世界で最も広く議論されている社会政策の提案の一つとなっている。著者の二人は、この急進的なアイデアをこれまでで最も包括的に擁護し、21世紀の経済的不安と社会的排除に対処するための最も現実的な希望として提唱している。

不平等が拡大、政治が分裂、永続的な社会問題に対する古い答えがもはや自信を失わせる時代にあって、ベーシック・インカムは、自由な社会と正常な経済を実現する可能性があるという新たな希望の根拠を示している。

ベーシック・インカム

参考文献

社会保障におけるベーシック・インカムの重要性 (PDF File)

This essay was generated by Bing on June 30, 2023.
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