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日々の「食べること」に寄り添って 横山歯科医院 横山雄士さん

収録日:2020年8月25日  聞き手:さとるん

横山さんは国分寺生まれの国分寺育ち。恋ヶ窪駅近く、ストライプのひさしとかわいい歯みがきの看板が目印の横山歯科医院で「食べること」に重点をおいて歯科診療をしています。早速お話を伺ってみました。

このマガジンは、”国分寺のまちで活動する人”  をにしこく編集室が訪ねてめぐるYoutubeチャンネル「ぶんじ3分ショッキング」の内容を文字でお届けします。

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ーどんなことをしているんですか?

横山 はい、歯の治療を行いながら、食べる・飲み込むということも診ています。歯科医院には珍しく、スタッフには管理栄養士がいまして、栄養についても色々ご相談を受け付けています。

普段、診察室で診察しながら訪問診療も行い、寝たきりの方など、下は障害のある0歳のお子さんから上は100歳オーバーの方まで、様々な方のご自宅や施設に行ったりしながら日々診療しています。

ーありがとうございます。では早速写真をお願いします。

誕生日にしゃぶしゃぶを食べたい

横山 患者さんと昨年しゃぶしゃぶを食べにいったんです。ぜひこの写真をいろんな人に見せてくれ、と言って下さり一枚目の写真に選びました。

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ー横山さんのお隣の、真ん中の男性が患者さんですね。

横山 実はこの方、数ヶ月前までご自分では全く動けず、しゃべることも、口から食べることも全くできず、直接チューブで栄養を入れていた方なんです。

要介護度5(※)の重度の方だったんですが、リハビリをして、ひと口ふた口と食べられるようになり、最終的にはもうご自分で食べられるようになって、歩けるようにもなりました。最終的には要介護度もなくなり、今は再就職を目指してご自宅で訓練されています。

※要介護度5:最重度の支援が必要な状態。寝たきりで意思疎通が難しく、食事も全介助となることがほとんどの場合が多い

ー要介護度5から自立するというケースは、かなり珍しいですよね。

横山 ここまで回復されるなんて、最初は誰も思ってなかったんですよ。

誕生日にしゃぶしゃぶを食べに行く、という目標をご本人と一緒に立てて。食べることを少しずつやり始めてからだんだんと回復していきました。でも特に大きな手術をしたわけでも私が何かをしたわけでもないんです。

何かしたことがあるとしたら、食べること。安全に食べられるようにすること、それだけ。

「どうしたら安全に食べられるよ」ということを施設の方にお伝えして。ひと口がふた口、ふた口が三口となり、少しずつ増えていって。今ではご自宅に戻って、ほとんどご自分で生活ができるくらいまでのレベルになりました。

ご本人が安心して、安全に食べられるようになるだけでここまでになられた。日々いろいろな方の食べることを見ていますが、食べることってすごいことなんだな、と、この方を診させていただいてさらに感じています。

ー安全に支えるというのは、すごく大事で、でもとても難しいですよね。

横山 安全に支えたのは、私一人の力ではもちろんなくて。施設の方や、施設のドクター、看護師さん、皆さんの協力があってここまできたんだなと思います。


”安全に食べる”を支える「いただきますの会」

横山 これはちらし寿司なんですが、ご覧になって分かりますかね。若干違うんです。真ん中が普通のちらし寿司で、右隣にあるのが、介護食用のちらし寿司です。

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横山 5年前から、多摩地域を中心に、病院やクリニックで働く医療者や介護の専門家、料理研究家、管理栄養士など料理をする人、地元の生産者の方々と組んで「いただきますの会」という活動をしています。恋ヶ窪のJAの中にある調理室で料理教室を開いて、介護食の指導をしたりしています。

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横山 食事は味だけではなく見た目も重要ですし、旬のものを食べたい、みんなと同じものが食べたいという想いがあると思うんです。

私たちが普段食べるものを一部取り分けて少し加工することで、簡単に介護食ができるんだよと、こうした料理教室を通じて指導しています。

ーJAさんということは、国分寺野菜ですね。色とりどりでおいしそうです。うどもある! 

横山 はい、これも国分寺の野菜を使っています。国分寺にはいい野菜、おいしい野菜がたくさんあるので、JAにみなさんやヘルパーさんたちが買いにきてくれたらいいなと思いますし、野菜に「こうやれば簡単に介護食が作れるよ」なんてレシピを付けて販売できたらいいですね。


介護を一人で抱えてしまわなくてもすむように

横山 この写真は、毎年11月にある国分寺まつりのブースの様子です。今年はコロナでお祭り自体は中止となりましたが、毎年いただきますの会のみんなで調理をして、ミネストローネを作って販売しています。

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横山 多くの方が来てくださるのですが、ブースでいただきますの会のポスターを見て「実はうちのお母さん寝たきりなんですけれど、どうしたらいいですか」なんて、その場で相談をうけることも。

やはり皆さん、一人で抱えてしまっている方もいらっしゃるので、こうした町の中で発信することで、今まで誰にも相談できなかった人が、ここで話をすることで、広がって行くようなことができたらなと。

ーどういう風に相談したらいいのかが、一番のお悩みですよね。

横山 いただきますの会のメンバーには、医師や看護師、言語聴覚士もいますで、何かあるときにはすぐに相談に乗れるような環境を作っています。

ー専門職の方がいると安心できますね。最後に、コロナ禍でなかなか会いづらくなった今、国分寺での今後の活動について一言お願いします。

横山 最初は、よく言うZOOM飲み会とかネット飲み会なんて何が楽しいのかなと思ってたんですけど、実際にやってみると結構楽しかったりもしますよね。こんなときだからこそ今までの常識を打ち破って、こんなときだからこそ新たなチャレンジをするのもひとつなのかな。

遠くに出られない今だからこそ、もっと地域や地元でのコミュニティを作るのがいいのかなと思ってます。

地元の情報ってネットや市報、いろんなところにありますので、普段は読んでいなかったかもしれないけれど、ぜひ一度チェックしてもらいながら、面白いものが見つかったら一歩踏み出す勇気というか、

こんなときだから何かやってみよう。ということができたらな。コロナだから落ち込むんじゃなくて、コロナだから何か新しいことをやってみよう、というのがいいかなと私は思ってます。

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収録の合間に「食べることは、生きること」とおっしゃっていた横山さん。明るい元気なお声で、お話を伺っていると元気がもりもり湧いてきます。横山さん、ありがとうございました。


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