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社会的つながりは命を左右する?

高齢になって身寄りもなく,ひとりで亡くなっていく孤独死がよく話題になります。

この記事にも書いてあるのですが,東京23区内で65歳以上の一人暮らし死亡者のうち,自宅での死亡者数は3,127人で過去最高を記録したそうです。これは平成27年の数字ですので,高齢者の増加を考えると今はさらに多くなっていると考えられます。

またこの記事では,ひとりで賃貸住宅に住む高齢者の問題も取り上げられています。もちろん,ひとりで暮らしていて賃貸住宅の中で亡くなってしまえば,発見が遅れるということも十分考えられます。それは,大家さんにとっては大きなリスクになるということも理解できます。

人間関係の重要さ

これは人生設計をどう考えるかという問題でもあるのですが,高齢になった時に人間関係をどう維持するかという問題でもあります。

中高生だけでなく大学生でも,友人関係で悩んだり,なかなか友人ができなかったりして自分で心配してしまうことがあると思います。では,大人になったら簡単に友だちができるのか?というと,どうでしょうか。

新しい友だちができますか

それがなかなかそうはいかないのが今の社会というものなのかもしれません。ご近所づきあいや仕事の仲間,子どもを介して知り合うことはあります。でもその中で,大人になって「新しく友だちができる」という経験はそうそう頻繁に起きるわけではありません。むしろ若い時よりも少ないのではないかとすら思うことがあります。人間関係が希薄になった若者,ということが話題になってからすでに数十年が経過しています。その若者たちが大人になって,いやきっとその前からずっと人間関係は希薄なのではないかと思うことすらあります。

といったことを背景に考えると,この高齢者の孤立問題は社会全体の問題でもあると言えそうです。

海外ではどうなのかはわかりませんが,日本の社会は全体として,新しい人間関係が作りにくくなっているのかもしれません。

人間関係と寿命

そして,人間関係は人の命の長さにも影響すると言われています。

研究によると,その影響の大きさはどれくらいだと思いますか?次の項目の中で,人間関係よりも影響力が小さいと思うものをいくつでも選んでみてください。

a. 喫煙
b. 飲酒
c. 体重(BMI)
d. 運動習慣

どうでしょう。人間関係はこれらに比べてどれくらい私たちの寿命(生死)に影響するのでしょうか。

寿命への影響力の大きさ

こういった問題に取り組んだ研究が,この論文です(Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review)。先行研究の統計値を統合するメタ分析で,人間関係の寿命に対する影響力を検討しています。

この論文では,社会的な関係性によって寿命(生死)の予測について検討した148本の論文に報告された統計的な結果を取り出して,メタ分析を行っています。このようなことを検討している論文が,この論文以前にもこれだけあるということ自体が驚きですが,世界中でこれだけ研究が蓄積しているということなのでしょう。

結果から言えること

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