「ヨーダみたいな言い方なんだよね」

特に根拠があることではないのですが......
以前,英語で会話をしていて苦労することのひとつは,文章の中で注意を向けるポイントが違う点ではないかと思ったことがあります。

疑問文

どういうことかというと……特にそれを感じたのは,英会話中に相手から何かを尋ねられた時なのです。英語の文章の最初の疑問詞に注意が向きにくいということに気づいたのでした。

よく,会話をしている途中の段階で,相手が自分に何かを尋ねていることに気づくのです。聞きながら「あ,いま何かを聞かれている」と気づくわけです。少し気を抜いて会話をしていると,途中で気づいて焦ります。「聞かれているから答えなきゃ!」と。

でも気づいたときにはもう後の祭りで,相手の文章の最初が「What」から始まったのか「Where」から始まったのか「How」から始まったのかがもうわからなくなってしまうのです。すると「えっと,いま聞こうとしているのはこういうこと?」と確かめなければいけません。なので,相手が自分に何も聞いておらず,自分の意見を言っているだけだということが文章の途中でわかると,ホッとしてしまう,ということが何度もありました。

なぜそうなるのか

日本語の場合,疑問詞が文の途中や最後の方に出てくることがありますよね。「これこれこういうのって,どうしてだと思う?」とか「昨日はどこに行ったの?」とか「そこまでどうやって行ったの?」とか。もちろん,最初に疑問詞が出てくることもあるのですが,最初である必然性がないのです。ですから,文章を聞いている時の注意が,必ずしも文章の最初に向いていないように思うのです。

その一方で,英語だとやっぱり疑問詞が文の最初に出てきます。そして,それがどんな種類の内容を尋ねているかを明確に規定するので,答える上でとても重要なのです。なのに,そうなのに,ついつい聞き逃してしまうのですよね……。

以前テキサス大学に滞在していたときに,いろいろな国から来た滞在研究者たちと雑談をしていました。そして,みな英語に苦労していたということもあって,それぞれの国の言語の話になりました。そのとき,韓国から来ていた研究者と私が語順の話題をしました。やっぱり日本語とほとんど語順が同じですので,「悩みも同じですよね!」と妙な連帯感ができあがったのを覚えています。

たとえてみる

単語の順番がとても大きな意味をもつ言語を使っている人たちに,単語を自由に入れ替えることができる日本語の語順について理解してもらうのは,なかなか大変なことです。

先日も海外の学会で,ランチの時に隣に座っていたオランダの研究者と語順について話をしていました(心理辞書研究の研究者だったので)。そのときも,語順を入れ替えても意味が変わらないということを説明すると,「知らなかった」という反応でした。

そこで最近思いついた「たとえ」が,スターウォーズに出てくるヨーダです。

ヨーダの語順

たぶん,日本語吹き替えでスターウォーズを観ていると,あまりそのことを実感しないと思うのです。高齢だな,ということは分かりますが,ふつうの日本語に聞こえますからね。

でも英語で聞いていると,ヨーダの語順ってふつうの英語の語順とは違って独特なのです。吹き替えだとその変わった雰囲気が失われてしまっているようで,ちょっと残念です。

ということもあり,海外ではヨーダが話す英語を「Yodish」(ヨーダ語)と呼ぶこともあるようです。ネットで探してみると……

◎Destroy the Sith we must.
◎Found someone, you have, I would say, hmmm?

こういった感じで,語順が変わっています。「目的語ー主語ー動詞」になることが多いという話も見つけました。

「ほら,だからヨーダみたいな」

ということで,最近は非日本語圏の人と語順の話題をするときには,「日本語で考えると英語の語順がついついおかしくなってしまってさ。ヨーダみたいになるんだよね」という言い回しで,説明することにしています。

まあ,ちゃんとした説明にはなっていないのですが,イメージとしては「ああ,なるほどね」と納得してもらえるようです。

うーむ,しかしそれで納得されるということは,時々ヨーダの英語のように話してしまっているということか……とも思ってしまいましたが。

まだまだ精進が必要ですね……。

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