みづき跡茶

みづき跡茶

マガジン

  • 夢のあとさき

    オリジナルの小説です。 話の舞台は、2001年となります。 ジャンルは、主に恋愛(BL)を中心にビジネス、サスペンス要素が含まれています。

  • 夢のあと

    「夢のあとさき」の雑談部屋となります

最近の記事

#47 ディズニーランド編(3)

30分後、東京ディズニーランドに到着した。 夕方にも関わらず、チケット売り場は多くの人が並んでいた。 「この時間でも、こんなに人が居るんですね」 「18時から入園できる安いチケットで並んでいるんだと思うよ」 夢幻はズボンの後ろにあるポケットから財布を取り出し、ディズニーランドのチケットを取り出し、知多と剛に1枚ずつ、渡した。 「準備良いですね。最初から俺も来るって、分かってたんですか?」 「まあな。ほら、早く行こう」 夢幻は、入り口を抜けて左側のコインロッカーに向かって歩き、

    • #46 ディズニーランド編(2)

      「この間に帰っちゃうか?」と剛が知多に聞いた。 「それは、さすがにまずいんじゃないの?」 「お店に誘ったのは、夢幻さんなんだから良いだろ。ほら、いくぞ」 剛は知多の腕を掴んで駅へ向かおうとする。その前に夢幻が立ちはだかった。 「それはないんじゃない?」 夢幻は剛が掴んでいる知多の腕と反対の腕を掴んだ。 「知多ちゃん、いこ」 剛は知多の腕を離した。 「夢幻さん、俺も一緒に行っていいですよね?」 「…仕方ねぇなぁ。お前は後ろに乗れよ」 「え?車で来てるんですか?」 「そりゃあ、そ

      • #45 ディズニーランド編(1)

        剛は、図書室の入り口から図書室の様子を観察した。机には本を読んでいる人や勉強している人がチラホラと居て、その中に知多がいるのを見つけた。剛は知多の方に向かって歩を進めた。知多の目の前に手をかざした。 知多が本から目線を外し、剛の方を見た。 「…剛、どうしたの?」 「柴咲からここに居るって聞いて。何を読んでるんだ?」 知多は答える代わりに本の表紙を剛に見せた。本のタイトルは、『生霊は存在するのか』と書かれている。 「なんか方向性が違う気がする…」 「他に思いつかなくて…」 「確

        • #44 ホストの価値

          翌朝、彩世はベッドの中で目覚め、諭の寝顔が見えた。自分が先に寝てしまったのか、諭が先に寝たのか、全く思い出せなかった。彩世は、諭に体を寄せて、抱きしめる。肌から諭の肌の感触を感じて胸が高鳴った。彩世が抱きしめたからか、諭が目を覚ました。 「…おはよう」と諭が言いながら、彩世の体を抱きしめた。 「……おはよ…」 彩世は、自分の発した声が掠れていることに驚いた。 「ははっ…さすがに声を上げ過ぎたか」と諭が笑いながら言った。 「あんた、ホントにひどいな」 「気持ち良かっただろ?」

        #47 ディズニーランド編(3)

        マガジン

        • 夢のあとさき
          43本
        • 夢のあと
          1本

        記事

          #43 Sweet night(後編)

          彩世は、シャワールームのシャワー音を聞きつつ、ぼんやりと新宿の風景を眺めていた。風景を眺めていると、不思議と色々な感情や考えが自然と浮かんでくる。売上を上げるために枕営業をしたこともあったが、セックスをすることが目的だったため、近場のラブホテルで済ましており、こういうところに来たことがなかった。 自分が女性に対して提供していたものが吉野家の牛丼のようにすぐに提供して満足させているものだとしたら、諭が提供してくれるものは、レストランのコース料理のようだと感じた。そして、自分の売

          #43 Sweet night(後編)

          #42 Sweet night(前編)

           彩世は、お店に来ていた最後の指名客を入り口で見送った後、スタッフルームに向かった。スタッフルームの真ん中にあるソファに諭が寝転んでいる。着替えたようで、いつも通り、白のTシャツにジーンズ姿だった 定期的に胸が上下に動き、寝ていることが分かった。彩世は、音を立てないように自分のロッカーを開けて、ネクタイを外し、丸めて置いた。そして、財布を取り出し、パンツの後ろポケットに入れた。その後、ソファに向かい、諭の肩を揺すった。 「あぁ…悪い。寝てしまったんだな。仕事は終わったのか?」

          #42 Sweet night(前編)

          #41 クラブ「哀」編(3)

          「ちょっと、あんたたち、お客様に失礼なことはしていないわよね?」 「大丈夫ですよ」と諭が答えた。 「あ、彩乃、俺が来たんだから、諭は帰してもいいよな?」 「え~、帰っちゃうの?」 「オーナーは、何してたんですか?」 「私?お酒を飲んでたわよ」 「そうなんですね。じゃあ、俺も付き合いますよ」 彩世が諭の肩を掴む。 「ダメだ。その女、酒は底なしだから」 「あら?別にお酒は飲めなくてもいいのよ。ほら、行きましょう」 彩乃が諭の腕を引っ張る。 「彩世。店終わるまで待ってるからアフター

          #41 クラブ「哀」編(3)

          #40 クラブ「哀」編(2)

          彩世は、新宿歌舞伎町までタクシーで向かい、クラブ「哀」に着いた。時刻は、20時半を回っている。 裏口からスタッフルームに入り、シャワー室に駆け込んだ。熱いシャワーで、まだ完全に醒めきっていなかった頭が次第にしっかりとしてきた。タオルで体を拭き、バスタオルを腰に巻いて自分のロッカーのドアを開けた。スーツとシャツを取り出して、隣にあるパウダールームのドアを開けた。 「彩世さん、どうしたんですか?その恰好…」とヒカルが驚きの声を上げた。 「…寝坊してしまって、急いでるんだ。髪の毛、

          #40 クラブ「哀」編(2)

          #39 クラブ「哀」編(1)

           彩世は、目を覚ました。見覚えのある天井が見えて、自分が家に帰りついたことが分かった。頭はズキズキと痛んだ。彩世は極力、頭を振動させないようにして、ゆっくりと起き上がると、自分がソファに居ることに気づいた。自分でソファまで来た記憶は全くなかった。壁にかけてある時計を見ると13時を過ぎていた。 「目が覚めたのか?」 声がした方を見ると諭が居た。 「悪い…今日、水曜だったっけ?」 「別に謝らなくていい。頭が痛いんだろ?これ、飲めよ」 彩世は諭からドリンク剤を受け取り、一気に飲み干

          #39 クラブ「哀」編(1)

          #38 ほつれる、からまる

          剛と知多、内田は椅子に座って、すっかり冷めたコーヒーを飲んでいた。 「…どうやって暮らしているんだ?未成年だと、部屋も借りられないだろ?」 「それは…身分証明書の年齢を変えれば、借りられますよ」 「……それ…犯罪だぞ」 「まぁ、それは冗談で泉さんの好意で」 「え?あのおばさん?」 「桜と一緒に名古屋に行ったけど、一カ月くらい前にこっちに戻ってきて、泉さんに住まわせてもらっている」 「一カ月前にこっちに居たのに、なんで、連絡してこなかったんだ?」 「それは…何度か連絡しようと思

          #38 ほつれる、からまる

          #37 朝からの来訪者

           翌朝、剛は諭の部屋のベッドで目が覚めた。ベッド脇に置いてあった携帯に手を伸ばす。着信、メッセージは入ってなかった。起き上がって、制服に着替えて、リビングに行くと、既に知多がキッチンに立っていた。 「おはよう。早いな」 「おはよう。スクランブルエッグでいい?」と知多が聞いた。 「あ、俺のことは気にしなくていいからな」 「私もご飯食べるから、ついでだよ」 「そっか。ありがとう。なんか、手伝おうか?」 「座ってていいよ」 「なんか、悪いな」 しばらくすると、知多がスクランブルエッ

          #37 朝からの来訪者

          #36 深まる謎、スティンガーの正体

          剛は知多のマンションに着くと、知多がドアを開けて、剛を迎えてくれた。 「どうしたの?早いね」 「ああ。走ってきた」 「何かあったの?」 「…わからない。これから何か起こるかもしれない」 剛は知多を見つめた。知多は不安そうな目で剛を見つめ返す。 「悪い。不安にさせるつもりはなかった」 「とりあえず、上がって」 知多は剛をリビングに招き入れた。剛は壁際にカバンを置くと、椅子に座った。知多は麦茶の入ったグラスを二つ持ってきて、一つを剛の前に置いた。剛は麦茶を一口飲むと話し始めた。

          #36 深まる謎、スティンガーの正体

          #35 スティンガーの影

           剛は放課後、2年A組の教室に向かった。ドアから教室を覗くと、窓際に三崎が居るのが見えた。三崎は剛に気付き、教科書やノート等を急いでカバンに入れてやってきた。 「すみません。お待たせしました」 「いいよ」 「じゃあ、まずは部室にいきましょう」 剛は三崎と一緒に写真部の部室に向かった。部室には2人の女子が居た。 「紹介しますね。手前にいるのが千堂。奥に居るのが小澤さん」 「千堂です。今日はよろしくお願いします」 千堂は軽く頭を下げた。 奥に居た小澤は剛に歩み寄って手を差し出した

          #35 スティンガーの影

          #34 夢幻のお願い

           彩世はクラブ「哀」のスタッフルームでメールを打っていた。 「彩世さん、まだ居たんですね」 夢幻がスタッフルームに入ってきた。彩世は夢幻の方を見た。 「今日はなんか用事ありますか?」 「特にないな。何で?」 「じゃあ、飲みに行きませんか?」 「お前の驕りならな」 「彩世さんの方が稼いでるじゃないですか~」 「誘ったのはお前だろ?」 「確かにそうですけど…わかりました。俺が出しますから行きましょう」 「このメール打ち終わったらな。ただ、俺、金曜まで出勤だから早く帰るぞ」 彩世は

          #34 夢幻のお願い

          #33 自分の存在証明

          剛は彩世のマンションを出た後、後ろを振り返った。知多が剛の方に向かって走ってくるのが見えた。剛はその場に頽れた。 「剛…」 知多が剛の肩に触れようとしたが、剛はそれを払いのけた。 「俺のことはほっといてくれ」 「剛は彩世さんのことが好きだったの?それとも諭さんに彩世さんを盗られたことが悔しいの?」 「お前…人の傷を抉るよな」 「ごめん。でも、気休めな言葉をかけるべきじゃないと思って」 「そうかもしれないけど、言い方がさぁ・・・すごい傷付く」 「…ごめん」 「いいよ。知多らしい

          #33 自分の存在証明

          #32 対峙する兄弟と選択

           剛は授業が終わり、カバンを持って教室を出た。ズボンのポケットから携帯を取り出し、受信ボックスを開くと、彩世からメールが来ていた。 『昨日は電話に出れなくてごめん。何かあったか?』 「何かあったのを隠してるのは、彩世さんでしょ?」と剛は独り言を呟きながら、『昨日は急に電話してごめんなさい。声が聞きたくなったので、電話してしまいました。また連絡します。』とメールを返信した。メールを返信して、すぐに電話がかかってきた。剛は躊躇いながら電話に出た。 「もしもし」 「剛か。昨日はごめ

          #32 対峙する兄弟と選択