「春に散る」

https://gaga.ne.jp/harunichiru/

大好きな作家の新作だからこそ、あえてすぐに読まずにとっておく事あるよね。
沢木耕太郎フリークの僕はこの原作「春に散る」を読まずにとっておいた。
そして読む前にこの作品を見た(見てしまった)。

沢木耕太郎原作で佐藤浩市主演とくれば
見る前からの期待と言ったらなく
(もしよくなかったらどうしよう、、、良いに決まっているよな・・・)
と、不安と期待に膨らんだ状態とはまさにこのことか。
期待は裏切られなかった!
沢木作品、しかもボクシングが題材。
当然のことながら壮絶なリングシーンをどう撮るのか、演じるのか
クランクイン前に制作者出演者は皆、武者震いしたことと想像できる。
、と、
そして見事に完結した。
鬼気迫るとはこのことかと。

映画では
sportsや音楽を題材とする場合
作品の評価に対する目の多くが
そのシーンをどのように演じられるかに向けられると思う。
古くは
ボクシングでは「ロッキー」がそうだし
音楽では(前にも書いたが)「愛情物語」がそうであるように
ハリウッドに一歩も二歩も先んじられていた。
しかし近年邦画では
遜色ないというか、日本の土壌、邦画が醸し出す
素晴らしいシーンを完成させている。
…ちなみにマラソンをする僕としては、
駅伝を描いた
「風が強く吹いている」のランニングシーンが忘れられない。
https://eiga.com/movie/54250/

さて本作に戻る。
佐藤浩市の演技はもう書く必要はないだろう。
共演の横浜流星、助演の窪田正孝
演技もさることながら、くどいようだが、、、リング上での鬼気迫るファイトシーン
歴史に残るのではないかな。
また
助演の中でも片岡鶴太郎に関して書いておきたい。
コメディアンだったのがいつの間にか性格派俳優となり
いつの間にか、人心を知る刑事役を多く演じ
・・・僕としては、なんだかその姿になじめなかった。
しかし、本作では、彼は、
自ら選んで経験したボクシング
その映画だからこそ
肩の力が抜け、その分自然なエネルギーが目に宿り
彼が歩んできた身でこその、卓越した演技だと感じた。

ということで良作である。
そうそう、
ラスト近くで
佐藤浩市が歩く後ろ姿を捉えたシーン
・・・三國連太郎に似てるな、本当に・・・

本年「極楽映画大賞」ノミネート!

一点だけ(許されるのなら)、
佐藤浩市と横浜流星それぞれが
「何故、あそこまでしたボクシングをやめたのか」
「何故。そこまでしてボクシングを学ぶのか」
この点がもう少し丁寧に描かれていたら、、、とも思ったが
これは原作を読んで、と。

最後に
本作に向けた
沢木耕太郎のコメントを一部抜粋で。

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私は映画の制作スタッフに『春に散る』というタイトルと広岡という主人公の名前を貸すことに同意した。
しかし、同時に、それ以外のすべてのことを改変する自由を与えることにも同意した。
というより、むしろ、私がその一項を付け加えることを望んだのだ。
 文章の世界と映像の世界は目指すところの異なる二つの表現形式である。
映画の制作スタッフが、広岡をどのように生き切らせ、死に切らせようとするのか。
あるいは、まったく別のテーマを見つけて提示してくれるのか。
 楽しみにしている。

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また惚れた。

2023年8月25日 公開

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