3Dプリンタで携帯できる段ボールカッター作ってみた
今回は、玄関前に置き配された段ボールをすぐに開梱できるよう、家の鍵と一緒に携帯できる、小さいサイズの段ボールカッターを3Dプリンタで作ってみます。
形状を考える
刃の形を考える
小さいサイズでシンプルな形状の刃物として、切り出し小刀を参考にしました。
最初に作ってみた形状がこれ。
グリップ部のサイズが小さいのと、切っ先の強度不足や指で触ると痛いので、以下のように刃の形状を変更しました。
切っ先の形状のイメージはこれです。
段ボール開梱時に、金尺の角は結構使い勝手が良いんですよね。
刃の方向について
本体を薄くするために片刃の構成になっているので、右利き用と左利き用とで刃の向きを逆に構成する必要があります。
また、押し切りの場合と引き切りの場合とで、使いやすい刃の方向は逆になります。
右手で押し切りする場合の刃の方向。
右手で引き切りする場合の刃の方向。
段ボールを開梱する際は引き切りすることが多く、封筒の開封時は押し切りすることが多いかと思います。
用途や利き手に応じて刃の方向を切り替えると良いと思います。
切断に耐えられる材料を考える
PLA品で段ボールを切断してみる
まずは普通にPLAでプリントして、段ボールを切断してみました。
切断時の摩擦熱で刃が融けてしまいました。
段ボールは切断の抵抗が大きかったようですが、梱包テープ部や封筒などはもっと抵抗が小さいため、摩擦熱は発生しにくいと思われます。
ともあれ、段ボール開梱時に段ボール自体まで切ってしまうことは普通にあり得るので、これに耐えられるようにする必要があります。
フィラメント材料の耐熱温度を比較してみる
各材料の耐熱温度はこちらの記事を参考にしました。
https://home3dp.net/filament-materials/
こちらで紹介されているPLAフィラメントの「最高使用温度」は、52℃となっていました。
そりゃ融けるわけだ。
それなりに硬くて、耐熱性が高くて、入手性の良いフィラメントとして、ABS(最高使用温度:98℃)とPC(最高使用温度:121℃)を比較対象として検証してみます。
※今回の検証に使用したフィラメントはこちら。
ABS品で段ボールを切断してみる
ABSフィラメントでプリントしたものを使って段ボールを切断してみました。
ちょっと黄色味がかったほうがABS品、もう片方がPLA品です。
かなりましにはなりましたが、刃が少し変形しています。
PC品で段ボールを切断してみる
さらに耐熱性のあるPCフィラメントでプリントしたものを使って段ボールを切断してみました。
(段ボールの種類が変わってしまっていますが、たぶんこちらの方が重量物を梱包しているので丈夫で切断時の抵抗が大きく、摩擦熱も大きくなるだろうから良しとしておきましょう。)
刃の変形はかなりましになったようです。
3種類の材料の刃の変形を比較
左から、PLA→ABS→PCでプリントしたもので、段ボールを切断した後の変形量の比較です。
耐熱温度の最も高いPC品が、段ボールの開梱用途には最も向いていそうです。
ただし、他の材料でも、封筒の開封などの摩擦熱が発生しにくい用途によっては十分使用可能です。
PCフィラメントの難点
サポートと接する面の荒れ
耐熱性の面ではPC材に軍配が上がりますが、成形性の面ではPCフィラメント独特のクセがあるようです。
左から、PLA→ABS→PCでプリントしたものの、サポートと接する側の面です。
PLAのサポート側の表面は他と比べて、不規則に荒れているため、持ち手のグリップ感が劣ります。
一般的にPCは密着性や反りに対して弱いようで、このあたりが利いていそうですね。
対策形状を考える
サポートと接する面の荒れに対して、成形条件で対応する方法もありますが、わざわざ成形条件を覚えていられないし、造形物によって設定を変えるのがめんどくさいので、形状を変えて何とかします。
多少表面が荒れても、グリップ性が安定していれば実用上問題ないので、グリップ用の凹凸形状を設けました(右側)。
凹凸形状を付けることで、切断時に引っ掛かりが生じるかと懸念がありましたが、特に問題は無さそうでした。
むしろ、グリップ性確保のための凹凸形状追加によって、曲げに対する剛性も上がって、さらに使いやすくなりました。
3DモデルをBOOTHで取り扱い開始
最終形状の3Dプリンタ用モデルをBOOTHで取り扱い開始しました。
小さくて軽くて鋭くないので、キーホルダーや鞄、IDカードホルダーなどにセットしておけば、必要な時に探す手間なくすぐに使用できます。
プリントの際は、用途や利き手に応じて、適切な刃の方向・フィラメント材料を選択してください。
(2024/01/08追記)
PETGでも作ってみました。
耐久性はPCには敵わないものの、なかなか良い感じです。
PETGはPLAよりも寸法が出やすく、刃の再現性が良いかもしれません。
今回使用したPETGフィラメントのリンクも貼っておきます。
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