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エスキスのコツ〜条件整理・試算①②③・平面検討(2023版)

割引あり

はじめに

今年は久しぶりのゾーニングタイプであることで当初から想定していた通り断面検討に手こずる受講生が多く見受けられます。またここ数年基準階タイプが続いたこともあって既受験生でもつまづいている方が多く見られます。
課題が「図書館」であることで「小部屋をパズル的に操作するというより大きなボリュームを効率よく配置出来るか」という所がポイントであり、断面検討にしろその後の平面検討にしろ思考の手順(考えるべきことのプライオリティ)がはっきりわかっていないため考え得るパタンが多すぎて四苦八苦しているようです。
本試験にどのようなサプライズがあり、どのような複合施設が要求されるかわかりませんが「建物の大きさ」をうまく扱えないと苦戦することになりそうです。

この記事では「そもそも」の話から本質的な所までを整理したいと思っていますが、資格学校(S資格)に通われているならば全て講義でやっているはずですし、何ならテキストに書いてある内容です。それでもエスキスがわからなくなっている人がいる原因は、講義を受けた時やテキストを読んだ時にリテラシーが備わっていなかったからだと思っています(つまり学習の進んだ今であれば、動画やテキストの復習でわかるようになっている部分がある、ということです)。英語を全く知らない人に「アップル」と言っても「赤い果物のりんご」がイメージ出来ないのと同じで、講義やテキストでこれが「解法です」と習ってもそれを「解法」として認識出来ていなかったのだろうな、という印象を持っています。この記事ではその辺りを丁寧に書いていくことにします。

なお、エスキス手法としてはS資格の方法によっているため他の資格学校や教材での方法との相違や齟齬については質問等されてもお答えできないことご承知おきください。

エスキスの構成

エスキスは大きく分けて平面検討(1/1000)=左半分までと、それ以降1/400プランニング=右半分の2つの部分から成ります。純粋にプランニングが下手くそ、やり方がわかっていないという方もおられますがそういう方向けの記事としては『エスキスのコツ〜平面検討・プランニング』や『エスキスのコツ〜管理ゾーンの納め方』というものを既に書いています。エスキスの左側、平面検討までは分かっているし問題ないけど1/400プランが上手くいかない、時間がかかる、という方はこの記事ではなく『エスキスのコツ〜平面検討・プランニング』や『エスキスのコツ〜管理ゾーンの納め方』を読んで頂いた方が実際的な役に立つと思います。

ただ大事なことは平面検討で考えた構成と1/400の構成が全く(50㎡以下の小部屋を除き)同じであるかには注意してください。平面構成と1/400の構成が変わっている人は出来ているつもりでも平面検討が出来ていない人です。
そしてこの平面検討の出来ていない人に共通することとして「スケール感のない平面検討」を行っていることが挙げられます。この原因については下記で触れたいと思います。

この記事では1/400プランニングではなく、主に平面検討(1/1000)までのエスキスについて言及していきます。

この記事の対象読者

改めて、以下のどれかに当てはまるような方をこの記事の対象読者として想定しています。

❶そもそもエスキスの左側で何をやっているのかわからない(目的がわからない)
❷条件整理をどこまで細かくやるべきか判断がつかない
❸建築可能範囲はいくつも出す必要があるのか判断できない
❹最大外形とか仮想床とか理解できない
❺断面検討で何から考えれば良いかわからない
❻平面検討に進んで良い廊下係数の目安がわからない
❼おさまらない廊下係数が出た時の対処がわからない
❽平面検討で何から考えれば良いかわからない
❾検討をしているのに面積がオーバーしてしまった

細かく列挙してみましたが、❷〜❻については❶に起因しています。つまりエスキス左側でやっていることが何なのか、何を目指しているのかわかっていないことが原因です。❼については❷〜❻の検討で出てくる「数字の意味」を理解していないことが原因になります。「数字の意味」を理解していれば対処法も見えてきますし、そもそも「どのような数字が必要」なのかも想定出来るようになります。
❽については上記の『エスキスのコツ〜平面検討・プランニング』で詳細に書いていますがここでは「考える順番=手順」を整理したいと思います。
❾に該当する人は間違いなく廊下係数が厳しいときの再検討を行っていないか、その再検討が間違えているからだと言えます。そのような方が抱えている問題が『エスキスが苦手な受講生の共通点』で書いた、「情報の不採用」です。❼の原因でもある「数字の意味」が理解出来ていないので「情報が採用出来ているかどうか」も理解出来ていません

課題の設定が厳しくない場合、「情報が不採用」であっても何と無くプランニング出来てしまうこともあります(昨年、一昨年の本試験等)。その為自分自身のエスキスの問題が左半分にある、ということに意識が向きにくくなってしまいます。今年の課題の場合は左半分の検討が曖昧だと全く対応できない課題が出ても不思議ではありません。上記❺〜❾のどれかに不安があるなら潰しておくべき弱点だと言えます。
一方、課題の難しさが、空間構成に関わるもの(廊下取れない、室面積確保出来ない)ではなく、アプローチの処理(R3本試験)やゾーニングの遵守(R2本試験)である場合、上手くまとまるかどうかはプランニング力(『エスキスのコツ〜平面検討・プランニング』の内容)にかかってきます。自身のエスキスや作図のどういう所に不備があるのかで今後の学習を強化すべき内容も変わってくることは認識した方が良いでしょう。

以下、上記❶〜❾に沿って出来るだけ丁寧に具体例も交えながら書いていきたいと思います。

❶エスキスの目的とは何か

そもそも、の話からします。一番の目的は当然「一級建築士試験合格」です。その為には合格図面(+要点記述)を描きあげる必要があります。合格図面とは「明らかに不合格ではない図面」のことです。エスキスとはその「明らかに不合格ではない図面」の下書きを完成させることです。上述したようにエスキスは左半分(平面検討まで)と右半分(1/400)に大きく2分されますが、極論すれば右半分、完成した下書きさえあれば最終目的である「一級建築士試験合格」には届くのです。

私は検討が曖昧な、なんとなくやってしまっている受講生に毎年のように言うのですが、左半分の意味をわからずにやっているのならば最初から下書き(1/400)をやればいいのです。その方が幾分か時間も短縮出来るし、そもそも断面検討で決めた階構成や1/1000で決めた室構成を変えるのならば、その検討に使った時間は無駄以外の何物でもありません。ただそう言って「わかりました、次から1/400をいきなりやってみますね」という受講生は当然いません。直感的に、そのようにいきなり書く1/400は「明らかに不合格ではない図面」の下書きにはならないことがわかっているからです。

このことからも理解してもらえると思いますが、この記事で言及するエスキスの左半分つまり平面検討までに行っていること、その目的は、不合格図面にならないように可能性を限定していくことです。いきなり1/400のプランをしようとするとそれこそ無限の可能性があるわけですが、その中から不合格になるプランに進む可能性を排除していくことで、結果「明らかに不合格ではない図面」の下書きが完成するのです(この辺りのことは表現は違えど『エスキスとは何か』という記事にも書いてますので時間ある方は読んでみてください)。
つまり試算①、②、③は(以下❷〜❻の内容は)いくつもの選択肢から合格に近いもの(不合格にならないもの)へと限定していく作業であり、そこでの決定(=1/1000)は必ず1/400に反映しないとエスキス左半分の意味がないことになります。

では、どのようなものが合格に近い(不合格にならない)下書きに繋がるのか、です。
当たり前のことですが、決められた敷地におさまり(試算①)、決められた大きさ(容積・形状)にもおさまり(試算②)、諸室が決められた各階にある(試算③)ものが不自然なく不合格にならないプランが出来るはずです。
エスキスの左半分では、この当たり前のことを確認している「だけ」(プランニングなど行わない)です。
次項目以降では、この当たり前を導くための試算①、②、③について詳しく言及します。

まとめ:エスキス左半分の目的は「可能性の限定作業」

❷条件整理の必須項目

条件整理は人それぞれ、密度も分量も異なっています。機能図を細かに書く人もいれば駐車場、駐輪場を何パタンも書いたり、あるいはそういうものを全く書かない人もいます。

講師によっても考え方は異なるでしょうが私の考えで結論から言えば、何を書くか書かないかは「ほとんど」自由です。機能図などは最終的に左半分で出来上がる1/1000終了時にオレンジマーカーの内容が確認し易いかし難いかの違い程度のものだと考えています。ただ、「ほとんど」自由ということは、「必ず」必要なものもある、ということです。
また上記の「スケール感のない平面検討」を行う方は「必ず」必要なもの加えて「やるべき」条件整理があります

※以下有料パートになります。
他の記事でも書いていますが基本的に通学されている方にとっては講師が教えてくれる(あるいは知っているけどあえて伝えていない=消化不良になるのを防ぐ)内容です。目次でタイトルは確認できると思いますので気になる内容は購入前に講師に聞く方が良いかと思います。あくまで講師に恵まれていない方や独学で学習されている方向けに書いています。

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