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長期に行くべき人、行かなくてもいい人


はじめに

これまで折々に書いてきたように私は長期講座に否定的なのですが、その主な理由としてほとんどの人が短期(ないし中期)で十分合格可能だと思っているからです。
ただXにも書いたように「長期でしか無理だ」と思う人も当然いるわけで、この記事ではその辺りのことを書くので受講する方の参考にしてもらえればと思います。

長期に行くべき人

「長期に行かなければ合格できない」と感じる人の方が少ないのでそれが「どういう人なのか」を明確にすることで「それ以外の人は短期でも大丈夫」ということを書きたいと思います。
なお、これは1回以上短期講座を受講した事がある人を対象としており、短期講座を回避して初回から長期受講→受験する方がどうなのかを判断出来る内容ではありません。
またあくまでSでの講座受講をしていた人を対象としての個人的所感のため、他の資格学校で学習をしていた人に該当する内容かどうかはご自身で判断してもらえればと思います。

この人は「長期でないと」と感じることは色々とありますが誰にとっても最もわかりやすい目安として表現するなら、
「作図に3時間以上かかるかどうか」
というものです。
オプション講座の受講有無に関わらず、最終的に作図3時間を切れないとなると考えられる理由は大きく2つです。

①学習時間(訓練時間)の確保が出来なかった
②作図スピードをクリアするコツがつかめなかった

①について。
作図は今現在どんな受講生にとっても日常的な行為ではなく「そのためだけの」訓練が必要です。実務に関係のないそのような行為が建築士試験において要求される理不尽さは置いておいて、「平等に」要求される「作業」は一定の訓練を積むことで一定の水準を身につけることが可能です(もちろん学科を突破するくらいの能力があれば、です)。3時間という水準をクリア出来ていないとすればまず一つ目として訓練が足りていない、と言えます。
実際、施工で現場監督のお仕事をされている人などは例え10週間という短い期間であっても日常的に学習時間を確保する方が難しく結果的に作図の訓練時間が少なすぎるということは多く見られます。ただ、そうした方の能力ややる気が低いかと言えばもちろんそんなことはありません。仕事の都合上、致し方なく学習時間の確保が出来ていない方ばかりです。
「作図」は時間というわかりやすい指標があるため「3時間」という目安で表現出来ましたが学習時間が確保できなければ「作図」に限らず「エスキス」も「記述」も「チェック」も合格できるレベルに達していないことは十分にあり得ます。
製図試験は人それぞれですがやはり最低限必要な学習時間(「製図試験に合格する受講生の共通点」参照)をかけなければ身につかない力というものがあり、それは何となくや付け焼き刃でクリアできるものではありません。課題発表後の10週間という短い学習期間においては平日もある程度時間を確保することは合格に必要不可欠です。この10週間にある程度の学習時間が確保出来ない、もっと具体的に言えば日曜日しか時間が取れない方は長期講座で学習するしかないと思います。
長期講座でも当然のように宿題はありますし平日学習が要求されますが、それをこなさないといけないということではなく、純粋にトータルの学習時間確保のための長期、ということです。つまり10週間に詰め込まれている密度の学習を25週間程度に薄めることで必要な学習を行う、ということです。
私が長期に否定的な理由の一つに「それほど長期間学習に対する集中力を持続させることは難しい」ということがありますが物理的な学習時間を確保するにはこの方法しかない、という方もおられると思います。

②について。
①で触れた学習時間を確保しているにも関わらず、作図が3時間以上かかる、という方も当然います。こうした方は「製図試験とは何か」という俯瞰的な視点を持てない、あるいは持つことが苦手な方だと思われます。
それは『「製図試験」は「設計」ではなく「資格取得のため」の「作業」である』という視点です。
意識無意識関係なく、こうした観点から製図試験を捉えることで作図だけではなくエスキスや記述においても押さえるべき「ポイント」や「コツ」が身につくと思っています。また多くの講師は(少なくとも私は)こうした「ポイント」や「コツ」を如何に伝えるかということに苦心しており、それこそが講師の仕事だとも言えると思います。
この言わば割り切った考え方・捉え方が出来ない方は中々作図スピードが早くなりませんし、また同様にエスキスや記述力の向上も進みません
こうした方は講師側から見ても非常にわかりやすく一言でいえば「素直に話を聞けない」方です。
ただこれも能力不足ややる気の欠如とは無関係で、むしろ真面目な方が多いです。
要は「完全な理解や達成、納得」への「こだわり」が強く少しでも疑問に感じたり未知の方法で学習を進めることが出来ない人です。
こうした方は長期でじっくりと長時間学習することでしか上記の「視点」あるいはそれに基づいた学習の有効性の理解に至ることは難しいだろうと感じられます。

長期に行かなくてもいい人

「ポイント」や「コツ」を押さえた学習が出来れば作図3時間以内の達成は難しいことではなく、また同様に「エスキス」や「記述」の一定レベルまでの到達は難しいことではありません。「エスキス」や「記述」は作図の時間のような目安がなく達成度がわかりにくいですが、例え合格する人でも完璧に出来る人の方が少数であり「作図」の達成ができていれば、また同様の時間をかけた学習ができていれば不合格であっても合格した人と同等程度の力が身についている人がほとんどです。

つまりほとんどの人は長期に行かなくても十分に合格は可能であると感じられます。自身の出来に満足出来ていなくても、むしろそのような危機感を感じるレベルであれば2年目が短期であっても十分に合格は可能だと思っています。

ただそのような「素直に話が聞ける」の方が長期を選んでいる傾向を感じます。
長期の合格率が高いのはもちろん長きに渡る学習の成果でもありますが、元々合格出来る力を持った人が多く通うからだと思います。
長く学習することが悪いわけではないですしそれにより得られる安心もあるかと思います。しかし長期で合格していく多くの方が「長期に通ったから合格できた」わけではない、というのが毎年多くの受講生を見ていて感じることです。


ここまで読んでいただいて、「作図3時間以内だしエスキスと記述は全然だけど短期でいいか」と思った方は今一度、「作図の完成度について」に目を通してもらえればと思います。例え作図3時間以内であっても「描くべきものが描けていない図面」は3時間以内で描けた、とは言えません。ここに該当する方はやはり「ポイント」や「コツ」を掴みきれていない、話を素直に受け切れていない、と言えます。

またこの記事をここまで読んで「短期でいいか」と感じた方はむしろ長期に通ってじっくり学習した方が良いと思います。
そのように感じた方は「製図試験を舐めている」傾向が自身にあることを認識され方が良いですし、それは何年も製図試験を受ける方に共通して見られる特徴でもあります。製図試験を舐めている方は10週間における集中力が少し欠如していることが多いですしそれは長期間の学習によるフォローでないと合格レベルに到達するのが難しいと思います。
一方、ここまで読んでやはり「長期でないと不安だ」と感じる方こそ、まさしく長期に行かなくても大丈夫な方だと思われます。そのように不安を感じている方は少なくとも短期開始前に準備をして来れる方です。可能な範囲であってもそのように準備をして短期に望めれば不安に思う必要はないと思います。

さいごに

まとめると、長期に行くべき人は
①平日の学習時間が確保出来ない人
②素直に話を聞けない人
③試験を舐めている人
です。
それ以外の方は短期や中期でも十分合格は可能なはずです。もちろん既受験生である立場を踏まえて短期開講前に何らかの準備(「長期に行かない人の製図試験学習」参照)をしておいた方が良いことは言うまでもありません。

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