土曜日は私のアパートでデート。2人でベランダのプランターの前で作業してる。

カケルは大学サークルの同期だ。
在学中から付き合い始めてもう5年。別れたり、もどったり。
今日で最後にしようって決めている。

「これ使って。」
カケルが何やら白いものを差し出す。
「なにこれ、シャベル？」
「うん、組み立て式。コンビニのヨーグルトスプーンみたいに線で折る」

シャベルに、小さな箱がのっている。
カケルが箱を開けてわたしに差し出した…輝く指輪。

「結婚してください」
ずっと待っていた言葉。
思わず涙があふれて、そしてうなずく。

カケルが素早く組み立て式シャベルを平らに戻す。
裏返すと、写真だ。なんて懐かしい。

「ハルカ、婚約おめでとう！」
「カケル、この野郎！イライラさせやがって。俺たちのハルカちゃんを大事にしろよ」
サークルの集合写真だ。しゃべってる。仲間たちがくちぐちに祝福してくれる。先輩が叫んだ。

「A大学園芸サークル『スローライフ』ばんざーい！」

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#毎週ショートショートnote
のお題「しゃべる写真」の応募作品です。
しゃべる、と言うと賑やかに話す感じ。それからシャベル。
私は小さいのも大きいのも、みんなシャベルって呼んでいたのです。
小さいのはスコップって呼ぶみたいですね。地域差があるようです。私にとっては小さいものもシャベルです。今回は、その基準で書いています。

スーパーのレジで、もらったヨーグルトスプーン。紙を折るだけでスプーンになるのでびっくり。
こういうのってきっと日本らしいですよね。そんなこともこのショートショートのもとになっています。