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『「空気」の研究』を読んでみた!

はじめに

私は23卒で営業職からキャリアをスタートし、日々奮闘していますが、将来的に広報の仕事に携わってみたいという目標があります。
そして、目標への第一歩として私が働いている会社の広報担当である関矢さんからオススメされた本を読んでいます。
その中から今回は、山本七平さんの『「空気」の研究』を読んでみました!

この本は「同調圧力」を「空気」と表現し、同調圧力はなぜ起こるのかについて研究している本です。
皆さんは「空気」に流されたことはありませんか?
私は普段空気に流されまくりでしたが、なぜ空気に流されてしまうのか考えたことはありませんでした。
ですが、この本を読むことでそこの「なぜ」が大変深く理解できました!
今回は実用書ではなく思考の仕方の学びの本なので、会社でどう活かしていくのかを書くというよりは、本がどんな本なのか伝える&どの部分が新しい知見となったのかを書きました。
今まであまり本を読んでこなかったこともあり、本の内容がとても難しく自分の中に落とし込むのにすごい時間がかかってしまいましたが、(おそらく自分史上最も難しかった本だと思う)一生懸命書いたのでぜひ読んでいただけると嬉しいです。

このnoteを読むと…

・空気(同調圧力)がなぜ起きるかが分かる!
・空気(同調圧力)から逃れる方法が分かる!

上記2点が知りたい方はぜひ読み進めてみてください🫡

『「空気」の研究』とは?

改めて、『「空気」の研究』とは山本七平氏が描いた本です。(wikipediaより)

人間が意思決定する際に重要視しているのが「空気」によるもので、日本は特に「空気」を読んで何かに合わせるという動きが強いと筆者は言います。
そしてこの本は、そんな今後の日本の未来を危惧した山本氏がなぜ空気によって空間が支配されてしまうのかを研究した本になっています。

実際に意思決定の際に「空気」を最重要視するという動きは昔からあり、
その例として戦艦大和の出撃が挙げられます。

例:戦艦大和の出撃
戦争の場が海から空へ変わっていったことで、戦艦大和の特攻出撃、及び海からの攻撃は無謀である分かっていた。
しかし、大金をかけて作った戦艦大和の稼働率が少ないことを国民に指摘されるのを避けるために、戦艦大和は出撃してしまった。
このように筆者は述べています。

これはデータ的な判断で勝てると思い出撃したのではなく、出撃せざるを得ない「周りの空気」が出撃させてしまったのです。

1.「空気的」判断基準とは?

人間の判断の基準には「論理的判断の基準」と「空気的判断の基準」という2つの基準があると筆者は言います。私たちは日々さまざまなことを判断し決断していて、それを論理的に判断していると思っていますが、実際に多くのことは空気を読んで判断しているというのです。

例①:本当は反対意見を持っているけど、みんなが賛成しているから賛成する。
例②:本当はご飯の予定を断りたいけど、みんなが行くから自分も行く。

このように、物事を決めているのに大事にしているのは「空気」を読むことなのです。一体なぜ、「空気」は発生しまうのでしょうか。

2.なぜ、「空気」は発生するのか?

なぜ、空気は発生するのでしょうか。それには大きく3つの要素が挙げられると筆者は言います。

1.臨在感的把握の絶対化
2.感情移入の絶対化
3.命題の絶対化 

上記の3つが空気が発生する要素です。
まずは、これらの3つの絶対化についてどういうものなのかを説明していきます。

※余談:この本は「絶対化」という言葉が頻繁に出てきます。この言葉を私は、「絶対化」=「決めつけること」だと解釈して読み進めました。

2-1 臨在感的把握の絶対化

まず、1つ目が臨在感的把握による絶対化です。臨在感的把握なんて普段聞かない言葉なので難しいですが、これは「目に見えないものを信じる」という意味です
日本にはアニミズム(物神化)という考え方があることから、臨在感的把握の絶対化が進んでいると書かれています。

※アニミズムとは、山には山の神がいて、偶像にも神が宿っているなど、物質に神が宿っているという考え方のこと。

西洋は最終的に一神教(及び偶像崇拝の禁止)を採用した国が多く、絶対である一者(神)以外は相対化される傾向にあるため、このアニミズムという考え方は、海外ではあまり浸透していません。
しかし、日本には人骨は魂に宿るという考え方が浸透しているため、それは科学的根拠があるわけではないのに、昔の人から代々受け継がれてきた物だからと、「魂」は目に見えない物なのに「絶対化」することで「空気」が発生するのです。

※余談:持てば絶対幸せになれる石や飲めば健康になる水など、胡散臭いビジネスが存在、成立しているのは、日本がアニミズムの考え方だからかもしれません。

2-2 感情移入の絶対化

続いて感情移入の絶対化とは、たとえば自分が楽しいと思うことは他人にとっても楽しいに違いないというように、自分の感情や思いが絶対的なものだと信じることを指します。

例:自分(上司)は、仕事が楽しいからみんなもそのはずだ。

このような考えを持った上司がいるとすると、もし部下から仕事が辛いという相談があったとしても、上司は共感を示しません。
そうなると、部下は上司に仕事の悩みを相談できず、相談しても解決しないという、上司にとって都合の良い空気が発生してしまいます。

さらに、この感情移入の絶対化も、相手の幸せや利益を考えて行動する「思いやり」の文化や、前述した「アニミズム」の考え方により、偶像(神様)にとっても良かれと思って行動する文化があるため、日本では感情移入による絶対化がとても起こりやすいようです。

2-3 命題の絶対化

最後に、命題の絶対化とは「正義は勝つべきである」「育児は女性がすべきである」などの命題を正解と見なすことを指しています。

例①:「正義は勝つべきである」という命題を絶対化すると、
負けた場合は正義ではない→負けた人には正義だと言ってはいけない
(空気の発生)

例②:「育児は女性がすべきである」という命題を絶対化すると、
育児をしないのは女性ではない→育児を男性にもしてほしいとは言えない(空気の発生)

このように、ある命題を絶対化することで空気が発生します。
以上が空気が発生する3つの絶対化であり、こういった空気を打破するためには「水」が必要だと筆者は言います。

3.対抗手段としての「水」

3-1 「水」とは何か

「水」とは「水を差す」からとった「水」であり、水は場の空気を壊し「現実」に目を向けさせることができるものであると筆者は言います。
言い換えると、「空気」にブレーキをかけることができるのが「水」です。

例:
友達①「仲の良い友達同士で将来飲食店を経営しよう!!!」
友達②「いいね!!やろう」
友達③「でも、俺らって料理ができないよね。」←(水を差してその場の空気にブレーキがかかる。)

このように、水を差すことで盛り上がった空気を一瞬にして現実に戻すことができます。そのため、空気が発生したらその度水を差すことで同調圧力がかかるのを防ぐことができそうですが、実はそう簡単にはいきません。

3-2 「水」が対抗手段として完璧ではない理由

「水」が対抗手段として完璧ではない理由はシンプルで、すべての空気に水を差せるわけではないからです。
例えば、冒頭で戦艦大和の例を出しましたが、戦艦大和の乗組員と上層部は誰一人としてこのまま出撃しても確実に負けると「水を差す」人はいませんでした。

なぜ、戦艦大和では水を差せなかったのでしょうか?
それは、戦艦大和の上層部の判断基準が突撃を判断したからであり、すなわち、上層部が誤った判断基準を作ってしまったからです。

ではなぜ、負ける確率が高いが、出撃した方が正しいといった誤った判断基準が作られてしまうのでしょうか?それは、日本特有の村社会的思考が影響していると筆者は言います。

村社会とは、頂点に立つ有力者によってルールが決められ、そのルールに基づいた行動を求められる閉鎖的な組織社会のことです。
日本には古くから法律とは別に村のしきたりがあり、そのしきたりを守らないと、村八分に遭う可能性があったと筆者は言います。
そして、このような村や時代の状況によって異なる倫理のことを筆者は情況倫理と表現しています。

情況倫理とは、あの状況ではああするのが正しいが、この状況ではこうするのが正しい。したがって非難されるべきは、この状況を作り出したものである。という考え方のことです。

戦艦大和の件を改めて分析すると、

STEP1.上層部含め全員が出撃せざるを得ない空気に支配される
STEP2.空気によって情況倫理が生まれる
STEP3.本当は出撃するべきではないのに、出撃することが正しいと認識してしまう

という状況が起きてしまっていました。

また、この情況倫理の考え方が昔から浸透しているのが日本であると筆者は説明しており、昔から情況倫理の考えが浸透していることがわかるものとして、こんな孔子の言葉があります。

葉公が孔子に言いました。「私の郷里には正直者がいます。父親が羊を盗んだので、その子供が正直にそれを証言しました」それに対し孔子はこう答えました。「父は子のために隠し、子は父のために隠す。正直はこのうちにあります」

『論語』第十三の一節

要約すると、「真実は父親が羊を盗んだことを告白するのではなく、父親が羊を盗んだことを隠すことだよ」という教えがあったということです。
このように日本は、真実は状況によって変わるという考え方(情況倫理)が浸透しているため、空気の支配を受けやすいのです。

一方で、欧米では日本とは違い固定倫理という考え方が浸透しています。
固定倫理とは、どんな状況であっても良いことは良いことだし、悪いことは悪いことだとする考え方のことです。
※ここは自分の解釈ですが、欧米では善悪の判断基準がみんな一緒であるため、何か間違った行動をした時に、「これは間違いだ」と言ってくれる人がいるから空気の支配を受けにくいのでしょう。しかし、日本は情況倫理という考え方があるから、空気の支配を受けやすいのではないでしょうか。

また、戦艦大和の例で分かるように水は対象が論理的に明確である場合にしか有効ではありません。つまり、戦艦大和が出撃しないほうがいいというのが明確ではなかったため、空気の支配を招いてしまったのです。

もしも今、戦艦大和が現れ出撃可否を悩んでいたとしたら、過去は出撃して失敗したから、今回は出撃しないでおこう。という選択肢もあったでしょう。しかし、出撃しない方がいい場合の確証がもてなかったため、空気の支配を受けてしまったのです。このように、水は対象が論理的に明確でない場合の方が多く、ほとんどの場合が焼石に水であり、水は役には立たないのです。
では、空気の発生を防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか?

3-3 「水」についての結論

ここまでで、
1.「空気」に対抗するのが「水」である
2.論理的に明確でないと有効ではなく、完璧の対抗手段ではないこと
3.日本は空気に支配されやすいこと

は、伝わりましたでしょうか?

その全体像を持ったまま「水」についての考察を進めていくと、筆者は「水」を差すことでも空気が作られてしまうということが分かります。

3-1で示した例文を出すと、
例:
友達①「仲の良い友達同士で将来飲食店を経営しよう!!!」
友達②「いいね!!やろう」
友達③「でも、俺らって料理ができないよね。」←(水を指してその場の空気が壊れる)

ここまでだと、盛り上がった空気を現実的に戻すことで空気の支配を妨げることができますが、これと同時に「俺らって、どうせ料理ができないから何をやってもダメだ」という空気が作られてしまうのです。

要するに、水を差すことで現実的なことしか言えないという空気が作られてしまうのです。
このことから、空気と水は相互作用を生み出しているの言えます。

つまり、水を差したとしても空気は発生するので、空気を発生させないことを目指すのではなく、空気からの支配を逃れる方法を考える方が良いということです。

では、空気の支配から逃れるためにはどうしたら良いのでしょうか?

4.空気の支配から逃れるには

空気の支配から逃れるには、第2章で紹介した

・臨在感的把握の絶対化
・感情移入の絶対化
・命題の絶対化

この3つの絶対化(決めつけること)を自力で解除することが必要だと筆者は言います。空気から逃れるには、自らの意思で断ち切った思考の自由とそれに伴った模索しかないのです。
言い換えると、自分が何かアクションを起こしたら、他人に悪く思われるんじゃないかと考えるのではなく、周りの影響を考えずに、行動することが重要なのです。
続けて筆者は、根本主義の考えを持つことで周りの影響を考えずに行動することができると言います。
根本主義とは、自分が根本的に何がしたいのか?を自分の心の中に問い続けて行動する考え方のことです。
以上のことをまとめると、自分が考えた通りに思い切って行動することが空気の支配から逃れる道なのです。

そして、この本を通じて筆者が伝えたいことは、

1.村社会の影響は現在薄れているかも知れないが、日本は島国であり、いわば一つの大きな村であるから、いまだに各地域に村のしきたり(空気)は存在している。さらには、マスメディアも空気を作れるようになった。その空気のせいで日本は生きづらい社会になっている。

2.その社会を生き抜くためには、常識やしきたりを正しいと信じ込んで行動するのではなく、自分の考え通りに行動を起こしてみましょう。

ということだったのかなと思います。

5 最後に(学んだこと)

6,000字ほど文字を打ってきましたが、ここまでで上手く本の内容は伝わりましたでしょうか?  
抽象的な言葉が多い本だったので、なかなか自分の中に落とし込むのに時間が掛かってしまいましたが、こうやってnoteに解釈を書くことでとても深くこの本を理解することができました。

学んだこととしては、
1.空気の発生条件
2.日本人の性格の特徴 (臨在感的存在の絶対化おこりやすい)
3.同調圧力に流されないためには、自分の意思を尊重することが大事

という点かなと思います。思い返してみると、空気に流されることってすごい多いし、特に私は誘いを断れない性格なので、空気の発生条件や空気から逃れる方法は、なかなか思考の付け方として勉強になった本でした。
多勢の人が選択していることが正しいとは限らないし、常識や風習だって全て正しいとは限らない。
それらのことに関して、自分の思っていることを発言するのはとても勇気がいるけど、その勇気ある行動ができる人が、空気の支配=同調圧力にも流されない人なんですね。

入社してからつくづく、がめつく行くことの重要さは理解しているので、この本でさらに、がめつく行くことや自分の考えていることを発言してみる大切さが理解できました!!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
これからもアウトプットは続けていきます🙆‍♂️

参考文献:『「空気」の研究』著作:山本七平


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