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ずっと勘違いしていた、ホーチミンのニセモノのカニ料理店

ホーチミン1区の名店


「俺らが通っていた店の方がニセモノやったん?」

5年以上通っていた店がニセモノだと分かって、空いた口がふさがらなかった

ホーチミンへ行く度に、かならず立ち寄る店がある
1区のはずれにあるその店は、いつも地元の人で大賑わい

日本人も、タイ人も、フィリピン人の友達もみんなその店が大好き。わたしの仲間内では、ちょっとした話題の店なのだ

カニの身がたっぷりはいったアツアツの春巻きとカニ春雨を、シャキシャキのレタス、スイートバジル、空芯菜に包んで食べる。キンキンに冷えた薄めのサイゴンビールとこれまたよく合うのだ

きっかけはフィリピン人の友達

8年前、出張でホーチミンに行くことがあった。一緒にバレーボールをしていたフィリピン人の友人がホーチミンから帰ってきたばっかりだときいて、おすすめの店はないかと聞いた

「いろいろあるけど、イチオシは、ここだよ」

そう言って、彼女は、Google mapのリンクを送ってきてくれた

レビューのカニ肉たっぷりの春巻きの断面写真を見るだけで、サクサク感とジューシーさが伝わってくる。一緒に出張にいくタイ人のお客さんも、絶対に気にいると確信した

案の定、タイ人はみんな大喜びで、カニの春巻きから、春雨、カニの爪、あれもこれもたくさん注文して満腹。食に保守的なタイ人がおいしい、おいしいと言って、たべていたのがとても、印象的だった

それからというもの、このカニの店は、私にとってホーチミンのアイコン的存在となった。ホーチミンにいけばかならず食べに行くし、ホーチミンに行くという友人がいれば、かならずこの店を紹介するほどだった

ホーチミン日帰りの旅

ある時、バレーボールの友達とホーチミン日帰り旅行を計画した。出発日の3日前に思い立ちすぐに航空券を予約した。

バンコクからホーチミンは、1時間半で行ける距離だし、エアアジアを使えば往復一万円以内でいけてしまうので気楽なもんだ

旅の目的はもちろんカニの店。一緒に行く友人たちもすでに、その店に何度か通っていたので、話しは早かった

バンコク早朝発の便でホーチミンに到着

手始めにフォーを食べる。運ばれてきたのは、ざるいっぱいの新鮮なハーブや生野菜。湯気がたちこめるアツアツのフォーにだっさりとハーブを入れて、スープに馴染ませながらスルスルと口に入れる。

フォーについてくるハーブやっぱり野菜は、タイのクイッティアに入れるそれと全く同じだった

大嫌いなパクチーを基本として、ホーラパー(スイートバジル)、パクチーファラン(日本語名不明)、バナナの花、もやしに空芯菜

バンコクとホーチミンは食がなんとなく似ている。タイ人がベトナム料理が好きなのも納得できる

お腹がいっぱいになったので、お目当てのカニは、夕方までおあずけ

古いチューブハウスをモダンに改築したカフェでベトナムコーヒーをのんだり、ポン引きだらけの地元のマーケットを物色したり、はやりのクラフトチョコレートをつまみぐいしたりして、変わりゆくホーチミンの今を堪能した  

雲が真っ黒になり、しめっぽい風が頬をかすめる。遠くで雷が鳴り響く。スコールがくるかもしれない。予定をはやめにきりあげて、最終目的地に向かう

席つくなり、メニューも見ずに、春巻き、春雨とカニの爪を注文する

なまぬるいビールを氷がたっぷり入ったグラスに注ぐ。水滴がグラスをつたう。氷がカランカランと音をたててとけてゆく

恰幅のいいおばちゃんがドシドシとやってきて、お前たちの食べ方は、まちがっていると言わんばかりに、友人の箸とレタスをとりあげて

「レタスの上に、春巻きをのせるでしょ。でハーブとビーフンを入れるの。それからしっかり包んで、タレにつけるのよ。ビーフンを入れるとあっさりするの。ほら、わかった?」   

あ、はいすいません。おばちゃんの言うとおりにしてたべたら、今までとはちがう境地に辿りついて昇天した。いくらでも食べれる。

カニとビールでお腹を満たし、スコールの中、空港へ向かうタクシーに飛び乗った

ニセモノだけどホンモノ

後日、一緒にホーチミンに行った友人からとんでもない事実を耳にした

「えびさん、知ってました?あのカニの店、ニセモノのほうらしいです。ホンモノは、向かって左側。ぼくらの店は、右側なのでニセモノなんです」

店を教えてくれたフィリピン人の友達に聞くと、だから、いったじゃんと呆れられた。ニセモノもあるから気をつけなよと。

うそでしょ。5年以上もだまれされいた事実を知って愕然とした。ニセモノに通っていただなんて

先日、3年ぶりにホーチミンに行く機会があった。今度は、ホンモノを食べに行こうとあの場所に向かう

バイクの隙間をぬって道路の反対から、ホンモノとニセモノを再度確認する。左側がホンモノ、右側が通い慣れたニセモノ

左側のホンモノに入ろうとしたものの、なんとなく雰囲気が重くて、入りづらい。右側のニセモノは、相変わらず活気があってすんなり入れた

「やっぱり、俺にはニセモノのほうがいいかも」

カニがたっぷり入った春巻きを、レタスニ巻いて、ムシャムシャたべる。

誰かが決めたニセモノでも、自分が納得すればそれがホンモノになる。そう悟ったホーチミンの午後であった


今回、ご紹介したのは  "49 Thuy Restaurant"

新鮮なワタリガニのベトナム料理が堪能できるお店
おススメは、ワタリガニの春巻きと春雨。たっぷりの生野菜とハーブと一緒に召し上がってください。ニセモノかホンモノかどちらかお好みのお店で

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