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テクノロジーと社会

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2019年2月の記事一覧

インプランタブルデバイス~人間と機械の融合が加速~

 日経電子版の記事【コンピューターを服用、「インプランタブル」が普及 注目IT、2020年先取り予測(下)】は、体に着ける『ウェアラブル』のさらに先を行く、体に入れる(埋める)『インプランタブル』なデバイスの進化に関するリポートです。一読して、そこには重要な意味が秘められているのではないか、と感じました。  そもそも、体に機器を埋め込む事には、人間として自然な抵抗感=『怖さ』があります。ペースメーカーや人工関節など、その必要性によって埋め込む場合を除いて、自ら進んで『インプ

『キャッシュレス』くらいで驚いていられない『顔パス社会』とは

 日経電子版では、毎日のように新しいサービス・商品が記事にされていますが、【病院の受付・精算は顔パスで、カード決済→帰宅可】で取り上げられたようなサービスは卓越したものだと思いました。  記事で紹介されているのは、AI顔認証による受付・精算システムです。このサービスによって病院での体験はどのように変わるのか―― ①患者のUX  ● 診察券なしで、顔パスで受付・受診できる。  ● クレジットカードを登録しておけば、クレジットカードを提示する   ことなく(クレジットカードを

『生命化する機械』と『機械化する人間』

 実は、この投稿の最初のタイトルは、【動くAIアシスタント~広がるaiboの可能性~】というものでした。日経電子版の記事【新型「アイボ」1歳、家庭データの最前線に】を読んで、aiboという卓越したプロダクトの本質的な価値を考えてみようと思ったのです。  aiboとは何なのか、――エンターテインメントロボット、ペットロボット、コミュニケーションロボット、AIアシスタント……次々に言葉が浮かんできますが、今一つしっくりしません。aiboは、そのどれでもあり、どれでもない……言葉

『後出しじゃんけん』のビジネス~進化するサイズ計測のテクノロジーは後発優位か~

 普通の『じゃんけん』で後出しはルール違反ですが、『後出しじゃんけん』では、親の出した手を見て後出しするのが決まりです。それでも子が負けてしまうのは、瞬時の判断を要求されるからで、その辺りの機微が、ビジネスと大変似ていると思います――先に先進的なサービスを出した企業が、その状況を見て後に続いた後発の企業に勝つ場合=先発優位もあれば、負ける場合=後発優位もあり得るのです――。  ビジネスと言う『後出しじゃんけん』の世界で、先発優位と後発優位を分ける分水嶺はどこにあるのでしょう

町工場とスタートアップのマリアージュ~互いの持ち味を高め合う~

 ワインと料理の組み合わせのように、別々のものが出会った相性の良さ、互いの持ち味を高め合うマリアージュが、スタートアップと町工場の間に起きている事は、素晴らしい事だと思います。日経電子版の記事【スタートアップ 町工場が支える ロボ作りなどで助言 試作・量産、国内に回帰】では、そんな実例がリポートされています。  そもそも、モノづくり系スタートアップ、あるいは、IT系であっても、そのサービスの実現のために独自のデバイスを必要とするスタートアップにとって、工場を持たないファブレ

少ないデータ・作ったデータ・散ったデータでビッグデータに挑む

 前から素朴に疑問に思っていたものの一つに―― 「データがやたら一杯あるからイイってもんだろうか?」 ――ということがあります。  そんな疑問を感じつつ読む日経電子版の記事【少ないデータで法則発見のAI ハカルスの藤原健真社長、連続起業の原点は米留学】と【「ポスト京」、人工データ大量生成 GAFAに対抗】は、とても示唆に富んでいると思いました―― (1)スパース性~『少ないデータ』から読み解く~ ある事象について、全部のデータを集めると膨大なビッグデータになるような場合

来るべくして来たマスカスタマイゼーションの時代~UXの最・最大化~

 日経電子版の記事【生産性と個別ニーズを両立 マス×カスタムの時代 マス×カスタムの最適解(中)】や【マス×カスタム、設計・生産に新技術が登場 マス×カスタムの最適解(下)】を読むと、コスト面での制約があったカスタマイゼーション(個別生産)が、テクノロジーの進歩によって、マスプロダクション(大量生産)との親和性を獲得しつつあることが分かります。  UX(ユーザーエクスペリエンス)の最大化が求められる第4次産業革命の時代に、究極のUXがカスタマイゼーションによって達成されるこ

『シェアオフィス』モデルの多極化~実効性のある交流の追求~

 実は、この投稿の最初のタイトルは、【『シェアオフィス』という名の文明の十字路~新しいモノが生まれる場所~】というものでした。日経電子版の記事【首都圏シェアオフィス つながりで新たなビジネス生む】を読んで、シェアオフィスの可能性について、自分の考えをまとめてみようと思ったのです。……ところが、自分で付けたタイトルの『文明の十字路』という言葉を見ているうちに、あることに気付いて、気持ちが変わりました――「文明の十字路というけど、十字路にも色々ある。住宅街のほとんど人通りのない十

『受け入れられし者』と『招かざる者』~社会と課題を共有する企業~

 最近の日経電子版に対照的な2つの記事が出ました。【アップルがCES会場の広告に込めた意味】と【アマゾン、「還元」で社会と溝 NY「第2本社」撤回】です。  個々の企業の問題はさておき、一般論として、社会から受け入れられるか否かは、その企業にとって、企業の使命・目的・方法(経営手法など)の正当性、企業の存在意義と密接に関連する最重要事項であるはずです。企業の存在意義が、社会課題・生活課題へのソリューションの供給にあるとするなら、必然的に、社会と課題を共有することは大前提とな

競い合うオフとオン~ITで買物体験を最大化~

 日経電子版の記事【「外すと痛い」買い物 日本酒や眼鏡、AIがお薦め】と【商品カタログも不要に? アスクル画像検索導入の狙い】は、リアル店舗(オフライン店舗)とネット通販(オンライン店舗)が、買物体験の利便性を巡って競い合う現状の好リポートになっていると思います。顧客の買物の悩みにどれだけ寄り添うことが出来るか、ITを活用した痒いところに手の届く接客が、ストアロイヤリティに直結する時代が来ているのだと思いました。 (1)オフライン店舗~AIが解決する『店員さんが   いない

雑誌マンガvs.アプリマンガ~自由度が生んだ躍進~

 日経電子版の記事【LINEマンガが生んだシンデレラ 漫画サバイバル(2)】を読んで、改めてアプリマンガの躍進と、その背景にある『自由度』の高さというものに気付かされました。  アプリマンガ躍進の背景にあるものは何か、この記事などから浮かび上がってくるのは、『読む(閲覧)』、『書く(執筆)』、『選ぶ(評価)』、『作る(制作)』、『配る(配信)』、5つのレイヤーでの圧倒的な『自由度』の高さです。 (1)『読む(閲覧)』自由度 ① 場所を選ばない手軽さ。(マンガを読んでるとは

ハードとソフトの狭間で~メーカーの再び輝く時代~

 日経電子版の記事【モノ作らぬメーカーに パナソニック社長 津賀一宏氏】は、IT時代に苦悩するメーカーがいかに再生していくか、とても示唆に富んだ内容になっていると思いました。  近年、『ハード』のメーカーと『ソフト』のIT企業という対立軸が幅を利かせていますが、そもそも、一つの商品(モノ・サービス)において、『ハード』と『ソフト』は、共になくてはならないものです。どちらが欠けても、商品としては成立しません。問題は、『ハード』と『ソフト』、どちらに軸足を置けば、エコシステムの

デジタルトランスフォーメーションで最も大切なこと~まだないサービスを求めて~

 日経電子版の記事【そのAIは誰のため? 「顧客主義」の真価問われる】は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める時に一番大切なことは何なのか、もう一度原点に立ち返ることを教えてくれているように思います。  記事で指摘されているのは、DXが文字通り『中身のない器』になってしまう危険です。DXは、『企業が顧客のニーズを吸い上げサービスの質を磨く』ための効率的なシステムの構築が本来の目的のはずです。つまり、『企業が顧客のニーズを吸い上げサービスの質を磨く』ためにデジタル

一家(一人)に一台~AIアシスタントが統合される時~

 日経電子版の記事【AIアシスタントが車内で案内 クーガーが技術開発】を読んで、今後ますます、多方面でAIアシスタントのサービスが登場してくる予感を強くしました。  記事の事例は、自動運転の普及によって『動く部屋』となるクルマでの過ごし方をサポートするものですが、このようなAIアシスタントは、ほんの一例に過ぎないと考えられます。IoTによってあらゆるモノ(機器など)がAIと繋がる時代には、AIとのインタラクションによってあらゆるモノ・コトを操作する、言わば『AIインターフェ