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テクノロジーと社会

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2019年11月の記事一覧

ローテクを切り捨てるリスク

 日経電子版の記事【風力を貨物船の推進力に 金沢工業大が帆の素材を開発】は、貨物船に帆を取り付けて、その風力エネルギーと、従来からのエンジンを合わせて推進力としようという施策をリポートしたものです。  このような施策は、温暖化ガスの削減を狙ったものですが、そもそも、蒸気機関が発明され、蒸気船が登場し、その外輪船が、効率的なスクリューに置き換わっていく過程で、何故、帆船、帆を使って風力エネルギーを推進力にするテクノロジーが廃れていってしまったのでしょうか?  ――合理的に考

カラオケルーム✖ライブ配信=これはイノベーションかも知れない

 日経電子版の記事【カラオケルームで「フェス」満喫 ライブ映像を配信】は、通信カラオケ大手エクシングの、カラオケルームに音楽などのライブ映像を配信するというサービスについてのリポートです。     イノベーションとは何か、最も分かり易いのが、今までになかった異質なもの同士の結合で生まれる新しい体験価値です。  その意味で、『カラオケルーム✖ライブ配信』という試みは、一般論として卓越したもの、ポテンシャルを感じずにはおれません。  例えば―― ① 大画面・高精細・高音

データがデジタル化され共通語となる時に何が起きるか?

 日経電子版の記事【ヤフー・LINEが狙うスーパーアプリ 上海で体験】は、記事から引用するなら「現金による支払いをキャッシュレスに置き換えるモバイル決済アプリ。しかし決済だけが目指すゴールではない。タクシー配車やモバイルオーダー機能を組み込み、サービス利用から支払いまでをシームレスにつなげる」という『スーパーアプリ』に関するリポートです。     そもそも、このような事が可能となるのは、個人情報・決済・配車・予約など様々なデータがデジタル化され、共通の情報基盤として活用可

テクノロジーとスキルの腐れ縁

 日経電子版の記事【トヨタ、海外工場が3Dプリンターに飛びついた理由】は、日本で世界をリードする新しい生産技術を生み⇨国内工場で展開⇨海外工場に「横展」するのが基本のトヨタにあって、一見意外な事に、海外の方が3Dプリンターの実用化に積極的、というリポートです。     記事では、そのような現象の理由として、わざわざ3Dプリンターを使わなくても試作車を作り上げてしまう、試作部門の技術力の高さが挙げられています。  確かに、一般論として、既存のテクノロジーを使いこなす高度な

『ジェスチャーインターフェース』のポテンシャルと課題

 日経電子版の記事【家電「手かざし」操作、日本へ ルネサスなど開発急ぐ】は、レーダーで手振りなどを検知してスマホなどを操作する、という『ジェスチャーインターフェース』に関するリポートです。  レーダーや画像認識の人感センサーなどで、手振り・身振りなどを検知し、機器を操作するジェスチャーインターフェースと言えば、かの名作映画「マイノリティリポート」のようなSFの世界を思い浮かべますが、いよいよゲームの世界を飛び出し現実の世界での活用が広がっていくようです。  そもそも、この

理性としてのAI

 日経電子版の記事【ニシキゴイの価値、AIで算定 新潟・長岡で試み】は、AIによってニシキゴイの価値を客観的に算定するシステムを開発しようという動きをリポートしたものです。  そもそも、記事によれば、ニシキゴイの価値は、品種・体長・体形・色彩(濃淡・模様のバランスなど)・泳ぐ姿(優雅さなど)・親ゴイの系統などから客観的に評価されるべきものだと言います。  しかし、ニシキゴイに限らずモノの評価にあっては、人間による評価という現実がつきまといます。  ――時代の流れに伴う流

ナスカ地上絵を発見するAI~タイムマシンとしての人工知能~

 日経電子版の記事【ナスカ地上絵 新たに143点 山形大、AIも活用】は、AIに地上絵を学習させ、そのAIが提示した500の地上絵候補の中から、現地調査で人がたの地上絵1点を確認できた、というものです。     ナスカの地上絵……純粋にそのデザインに秘められたもの、素朴さ、幾何学的な美しさ、インパクト……また、その描かれた時代、描画の方法、何のために描かれたのか……謎めいたロマンに満ち満ちています。  そして、その発見にAIが使われたという事は、現代科学におけるもう一つ

イノベーションのキーワード満載の「ネイルプリンター」開発

 日経電子版の記事【自動マニキュアや爪替え放題も 時短サービス続々】は、カシオ計算機とコーセー化粧品が協働で、機械が自動で爪にマニキュアを塗る「ネイルプリンター」を開発したというリポートです。     この記事、「なるほどね」とは思いつつも、危うくさらっとスルーしてしまう所でした。しかし、熟読してみると、この卓越した商品の開発にはイノベーションのポイントとなるキーワードが満載なのです―― ▶「ネイルプリンター」開発に見るイノベーションの  ポイント(1)『異業種の参入』

コト消費の時代のOEM(相手先ブランド名製造)

 日経電子版の記事【「私だけの化粧品」日本色材が演出 スモールマスの黒子】は、コト消費の時代におけるOEMの位置付けを改めて考えさせてくれます。  そもそも、消費者一人ひとりが各々の体験価値を追求するコト消費の時代は、それに応じて細分化されるスモールマスな市場に対応する必要があります。  そのような消費者のインサイトに肉薄したイノベーティブなプロダクトを作ろうとすれば―― (1)『カスタマイゼーション』・・・3Dプリンティングなどのテクノロジー   の進化によって出来る

芸を教えられる「aibo」~自分でプログラムできるプロダクトとは~

 日経電子版の記事【aiboに芸を教えよう ソニーがプログラム用ソフト】は、ITの専門知識がなくてもよい簡易なプログラミング環境で、「aibo」の動きを自由に設定できる、というものです。     最初この記事を読んだ時、「へえ~」と思いつつもスルーしてしまったのですが、よくよく考えてみると、『自分でプログラミングできるプロダクト(モノ・サービス)』というデザインには、相当大きなポテンシャルがありそうです。  そもそも、消費者が体験を重視する『コト消費』の流れは、3Dプリ

プロシューマーの時代の商品開発

 日経電子版の記事【西武鉄道 「常識」の枠超え、乗りたくなる電車】は、20代中心の社員6人を集め、次世代型通勤列車の開発で、デザインの中心的な役割を担わせた、というリポートです。  ベビーカー・車椅子の利用客がそのまま乗り降りできる座席のない空間「パートナーゾーン」、子供も車窓を楽しめるよう床までの距離が60センチの窓、子供を抱っこしている人・立ち上がるのが負担な高齢者・障害者のための簡易座席――トップダウン型ではない、若手のアイデアを活用したボトムアップ型の開発によって、

『物語』の力~『夢』の共有とテクノロジーの進化~

 日経電子版の記事【タケコプター実現できるか 「自由に飛ぶ」には法整備 ドラえもん3大道具を検証(上)】・【タイムマシン実現できるか 「少し先の未来」行ける ドラえもん3大道具を検証(下)】は、いわゆる「ドラえもん3大道具」の実現可能性について真面目に考察した大変興味深い記事です。    記事では、「反重力」・「ワームホール」などの言うなれば超テクノロジーに支えられていると考えられる「タケコプター」・「タイムマシン」・「どこでもドア」に一歩でも近付くべく、「一人乗りヘリコ

プロダクトの『汎用性』と『専用性』

 日経電子版の記事【カレー専用米、味の秘密はデータ分析】は、「カレーライス」・「チャーハン」・「炊き込みご飯」・「おにぎり」といった個々の料理に合った専用米を開発する企業のリポートです。     ご飯と言えば主食、主食と言えば、どんな料理にでも合う『汎用性』が持ち味です。お弁当などに冷めてもおいしいお米、お寿司に合うお米くらいしか知らなかったので、料理に合わせて最適化されたお米、と言うのは目から鱗でした。  考えてみれば、消費者一人ひとりが各々の体験価値を追求するコト消