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テクノロジーと社会

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#ライフスタイル

キャッシュレスネイティブ?~利便性の時代の『不便益』~

 日経電子版の記事【「不便が楽しい」 博報堂、逆転の発想で販促コンサル】は、利便性の追求される時代に、『不便』である事がかえってユーザーのベネフィットになるような、『不便益』について改めて考えさせてくれます。  昨今は、プロダクトに関する説明に『利便性』が登場しないものはない、と言っていいくらい、『利便性』の観念が私達の生活を支配しています。――速い・簡単・おいしい、ワンタッチ、オールインワン、万能選手、自動化、時短……。文字通り枚挙に暇のない『利便性』ですが、はたして、本

ユニット化するモビリティー~近未来の車は皆トラックになる!?~

 日経電子版の記事【MaaS時代の自動運転車、居室を車体から切り離す 自動運転が作る未来(36)】は、自動運転の未来を展望したリポートですが、そこに登場する『分離型車両』には興味深いものがあります。  『分離型車両』は、『ユニット化したモビリティー』、あるいは宇宙ステーションのように『モジュール化したモビリティー』とでも呼べるものです。記事に登場するユニットをピックアップしてみると―― ▶『ユニット化したモビリティー』① 『駆動(走行)ユニット』・・・スケートボード ②

復権するプロダクト~レコードは何故蘇ったか?~

 日経電子版の記事【レコード復権、若者つかむ 10年で生産枚数11倍に】は、文字通りV字回復するかの勢いのレコードに関する興味深いリポートです。  絶滅の危機かと思われていたレコードの復権の裏には何があるのか、何がユーザーの心に刺さっているのか、結局は顧客体験価値の問題に帰結すると思われます。そこで、改めて、レコード・CD・ストリーミングの体験価値を整理してみると―― ▶体験価値の対比(1)レコードの体験価値   ① アナログ音源特有の音質   ② 音楽を聴くための一連の

ストリーミングに見る書斎型から図書館型に変わるサービス

 日経電子版の記事【ストリーミング、聴き放題広がる 楽曲選びより気分で消費へ 先読みウェブワールド】は、改めて、サービスのあり方が、ダウンロード型からストリーミング型へと、所有より体験重視のコト消費の度合いを深めている事を思い起こさせてくれます。  (音楽)消費のダウンロードからストリーミングへの変遷は、書籍に例えるなら、特定の書籍を買って自宅の書斎に蔵書を増やしていく『書斎型』サービスから、その都度自由に書籍を閲覧できる『図書館型』サービスへの移行と言えそうです。  そ

持続可能性高める『BOPIS(ボピス)』の躍進

 日経電子版の記事【月額制弁当テークアウト 客にも店にもメリットで拡大】に登場する「月額制弁当テークアウト」は、「月額制」という特殊性はあるものの、「ネットで購入して店舗で受け取る」サービス=『BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)』の一形態に違いありません。  まず、記事などから、この「月額制弁当テークアウト」のメリットを整理してみると―― ▶「月額制弁当テークアウト」のメリット(1)ユーザーのメリット   ① 受取日時を指定できる。   

ポケモンGO、やっぱりそうだったか!

 日経電子版の記事【ポケモンGO 始まりはエープリルフール ポケモンGOのつくり方(1)】は、多くのユーザーの心に刺さり大ヒットしたポケモンGOの開発にまつわる、とても興味深い内容です。  私は、この記事の肝、とでも言うべきくだりは、次の一節だと思います―― そこに流れていたのは「ポケモンチャレンジ」と題された動画で、スマホを手に岩山や砂漠を探検するひとたちの姿だった。岩陰にスマホをかざすとポケットモンスターのキャラクターが画面にあらわれる。ボールを投げてポケモンを捕まえ

3Dプリンティングが変えるメーカーとユーザーの距離

 日経電子版の記事【3Dの技術活用 アジアは注力を ビベク・パタク氏 国際金融公社東アジア太平洋地域担当ディレクター】は、改めて、第4次産業革命のアクセラレータ『3Dプリンティング』のポテンシャルを考えさせてくれます。  文字通り、物質を積層的に(3次元に)プリントしてモノを作る『3Dプリンティング』は、テクノロジーの進歩と共に、その基本的な概念でできるコトが増えていけば、驚くべき技術革新『ディスラプション』となることは間違いありません。  その最大の特徴は、例えれば何も

食の3Dプリンター

 日経電子版の記事【柿の種を自分好みに調合、亀田製菓が専用装置】は、とてもさりげない記事ですが、『食の未来』を予感させるような内容を含んでいます――それは、『食のカスタマイゼーション』です――。     普段、私達は、外食でレストランに行ったり、加工食品を買って帰った時に、その味にちょっと残念な思いをする事が少なからずあります。理由は色々あるでしょうが、その一つ、最も大きなものに「自分好みでない」という現実がないでしょうか?――もっと辛ければいいのに、もっと大盛ならいいの

コモディティ化の呪縛~誰も何も考えなくなった時にチャンスが~

 日経電子版の記事【感動体験を売る バルミューダ社長、家電ヒットの極意】は、コト消費の時代のモノづくりのあり方を見事に言い当てていると思います。     そもそも、第4次産業革命の時代は、テクノロジーの進歩によって、モノの高度化+均一化+低価格化というコモディティ化が進行すると同時に、消費者の体験重視のコト消費が進行する時代です。  そこでは、消費者は、自らの生活の大部分はコモディティ化したモノの利用で満足しつつ、ある部分では徹底的に体験価値にこだわる、と言う現象が起き

リユースのラストワンマイル

 日経電子版の記事【中古品、近所で売れる マンション玄関や喫茶店】では、2018年10月に施行された改正古物営業法によって、買い取り場所の規制が緩和され、車両型移動式店舗・大規模マンションのエントランスなどでの買い取りができるようになった状況がリポートされています。  この状況は、記事にもあるように、リユースを巡る環境を著しく改善するのではないでしょうか。  リユースを巡っては、積極的に不要になった中古品を売り出す人がいる一方で、消極的な人が多数存在するのは間違いない、と

インターネットの紡ぐ文化~魅力の再発見と多様性~

 日経電子版の記事【「観る将」増やした将棋中継 携帯配信で伝える迫力】は、昨今の将棋ブーム、「観る将」に果たしたインターネットの力を物語るリポートです。  このところ、SNSをはじめとしたインターネットの負の部分――ディープフェイク・フェイクニュース・ヘイトスピーチ・ステルスマーケティング・フィルターバブル、等々――がクローズアップされがちですが、本来、誰もが比較的容易に情報発信できるネットの世界、①低コストと②双方向性、そして③モバイルでの利用を顕著な特徴とするデジタル

『ユメ消費』~コト消費の先にあるもの~

 日経電子版の記事【仮想アイテムが高額化 100万円のデジタルドレスも】に登場する9500ドルのデジタルドレスには驚かされます。実際に手に取ることの叶わない(もちろん着ることの出来ない)バーチャルなドレスが9500ドルとは……これは、もはや『コト消費』の先を行く『ユメ消費』と言えそうです……。夢を売ると言えば、SF映画の「トータルリコール」を思い出しますが、そんな世界に一歩近付いたかのようです。  ここで、仮に『ユメ消費』なるものを他の消費形態と対比してみると―― ▶消費

『観光』からの脱皮~ sightseeingの価値が観覧から体験にシフトし、伝統が保存される~

 日経電子版の記事【白米千枚田 棚田と海が織りなす景観(石川県輪島市) 映える!】は、改めて、観光(sightseeing)のあり方が単なる『観覧』からより深い『体験』へとシフトしている様を教えてくれます。  記事に登場する白米千枚田の事例では、オーナー制度という仕組みが導入されることで、会員が田植えや草刈りなどを『体験』出来ると同時に、『保存活動』が支えられている状況がリポートされています。  観光客が観光に求める価値が、単なる観光地巡りから、より深くその地に根差した生

イーロン・マスク氏の傾聴すべき一言

 日経電子版の記事【ゲームの祭典「E3」閉幕、イーロン・マスク氏も登場】は、ゲームの祭典「E3」に関するリポートですが、登壇したマスク氏のゲームとは直接関係のない 「余談」にキラリとしたものを感じます。  そのくだりを引用すると――  開発中のピックアップトラック型EV(電気自動車)についても「万人受けはしなくても自分自身がほれぼれするものをつくりたい」と言及し、会場を沸かせた。  この発言に秘められたスキーム、プロダクト(モノ・サービス)についての基本的な考え方を私な