見出し画像

『クサガメのお腹の下に群れる小魚』~寄らば大樹の陰~

 本稿の主人公は、実はクサガメではない。

「誰だ主人公は!?」

 私が自然の撮影によく訪れる白金台の国立科学博物館附属自然教育園で8月20日に撮影した冒頭の写真、池で泳ぐクサガメのお腹の下をよくご覧いただきたい。クサガメと同じ方向を向いて追尾する小魚がたくさんいる。次に掲げるのは、アップで撮影した写真だ。

クサガメのお腹の下に群れる小魚
クサガメのお腹の下に群れる小魚
クサガメのお腹の下に群れる小魚

 
 テレビの自然番組などで大きなウミガメのお腹の下に群れる魚の映像は見たことがあるが、同じようなことが身近にある池の中でも起きていた。どちらも身の安全を守るための行動だと考えられるが、この池でのケースでは、より切実な理由がありそうだ。
 小さな魚たちにとって、大きな生物に身を寄せて周囲の敵から身を守るのは一つの術だが、この池の小魚たちにとっては、周囲というより、そのものずばり上方向からの攻撃がある。この池にはカワセミが来る。

9月17日 自然教育園にて

 
 突然上空からダイブしてくるハンターを避けるのに、クサガメのお腹の下ほど安全な場所はないに違いない。小魚たちがどうやってこの安全策を学習したのか、習性、本能的な行動なのか、実に不思議だ。……実際に襲われて怖い思いをして学んだのか、他の魚を真似しただけなのか、本能的な行動なのか……

 さて、そんなことを思いながらも、いつものようにこの出来事を人間界に置き換えてみたくなった。これは文字通り『寄らば大樹の陰』的行動である。そして忘れてはならないのは、寄ったはずの『大樹』に襲われたら、食われてしまったら元も子もない、という事。昨今のきな臭い世界情勢を見るにつけ、何に身を寄せるか、頼るか、というのは生死のかかった決断と言える



【以上、『随想自然』第16話】
(インスタグラムhttps://www.instagram.com/angelwingsessay2015/で、主に東京都心で見れる自然の写真を紹介しています。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?