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2020年の水島新司 / Shinji Mizushima in2020

昨年の春。実家のリフォームを進めているうち、水島新司先生のコミックが至るところから発見された。ドカベンが少年チャンピオンでの連載を終えたことをニュースサイトで知ったのが2018年。何の感慨もないことが今では信じられないが、実際そうだった。

1975年の秋。低学年男子のほぼ全員が石森章太郎先生(当時)や永井豪先生の作品などを好み、マンガ・アニメかスポーツに移行する。僕はテレビマガジン・テレビランドを卒業し、少年誌(好きだった順にジャンプ・チャンピオン・マガジン・サンデー・キング)を購読するようになっていた。各誌に野球漫画が複数連載されていたが、ルールも知らないしプレイしたこともなく一応目を通していた。元ノンプロで野球マニアの父が購読していた『あぶさん』が気になり読んでみた。当然のことながら野球の出来事で理解できない。勧善懲悪でもなく魔球もない。漢字が多くて読み辛い。それでもマンガそのものが好きなので購読し続けた。

1976年の春。新潟県の五泉市から巻町(当時)へ転校し野球を始めた。昔から身体能力が高くはないため体育は嫌いだった。しかし仲間と野球をするのは楽しく、自然とルールを覚えた。プロ野球をテレビで観たり書籍を購読したりもした。マンガは読まないし特撮ヒーローやアニメをテレビで観ることもなくなり、娯楽ではなくなった。このままゆけば標準的な低学年男子だが、『あぶさん』の購読は継続していた。更には『野球狂の詩』『ドカベン』『一球さん』と水島先生の作品を愛読した。現在では再評価されているらしい『ドカベン』も映画館で鑑賞した。野球のルールを覚え、漢字も何とか読める。実在の登場人物も知っているため既読のコミックを改めて読み返すとこれが面白い。対象の読者層が異なっているので各々の作品のムードが違っていて飽きない。

1978年の秋。札幌市へ引っ越し、野球をすることもなくなった。センスがなく練習も嫌いなのでプレイヤーとしての道は断たれた。しかし中学生となった1979年まではプロ野球は好だったようで、新聞の切り抜きまでしていた。更には、1977年の春には祖父とよくテレビで観ていたプロレスが興味の対象となった。1980年に音楽に出逢うことでったことでジ・エンド。現在はほぼ途絶えた地上波テレビでの野球中継を観ていたりはしたが。水島新司作品に話を戻す。『野球狂の詩』『一球さん』は何とか読破。『あぶさん』『ドカベン』は共に第30巻くらいまで。前述の背景があるにしても別れが唐突すぎる。結果、1979年から2020年までの41年間は水島新司先生の作品に触れることはなかった。

思い立って水島新司先生の野球漫画を揃えることにした。せっかくなのでキャラクターグッズも収集することにした。水島新司先生をリスペクトされている方のウェブサイトで作品リストをつくり、約600冊あることが判明(今後データベース化して公開したい)。僕は、全ジャンルにおいてアーティストの作品は正規販売ルートで定価で購入する。リスペクトしている気持ちを伝えるため。

紀伊國屋書店本店のコミックコーナーへ出向く。『あぶさん』が数巻のみ陳列されていただけだったので、書店の方へ出版社への問合せを依頼。数日後に『あぶさん』『ドカベン(シリーズ)』が何とか揃うとの回答。現在のサブカルのメインであるアニメのジャンルや、手塚治虫先生から続くレジェンドの作品ではありえない。電子書籍にもなっておらず、この状況は深刻と気付く。気を取り直し、ウェブサイト(主にAmazon・ヤフオク・メルカリ)をフル活用し、可能な限り良品で初版であることを条件に一気に揃えた。初期作品にはプレミア価格のものもあったが、ほとんどが定価以下。当時の発行部数からすればこれは想定内。貸本時代の作品も人情モノが多いようなのでこれは次の目標にした。

キャラクターグッズも、ウェブサイト(主にAmazon・ヤフオク・メルカリ)で並行して収集した。グッズを見返すと1970年代後半と2000年代前半がピークであったことがわかった。映像と連動する音楽関連グッズは、当然1970年代後半のみ(復刻CDは対象外)。先生が編集長である、野球専門月刊誌『一球入魂』のコンプリートは困難。発行部数のせいか、マニアの方が手放さないのか。

この間の6ヶ月、何に魅かれてここまでしているのかわからなかった。偏愛するサブカルチャー群(音楽・女子プロレス・時代劇・マカロニウェスタン・オーディオ・刑事ドラマなど)は、長期スパンで興味の対象となっていてグッズも自然と集まったからだ。11月末、実家の共用スペース(玄関から廊下)を利用してこれらコレクションを陳列した。

2020年12月1日、水島新司先生が引退を発表された。『男どアホウ甲子園』連載開始から50年(ちなみにだが、『エースの条件』連載開始から51年)。これらがきかっけとなって、全作品を発売順に味わいつつ作品の魅力を解き明かすこととした。野球プレイヤーのセンスのなかった僕をいつも嘆いていた父は昨年8月に亡くなった。先生の功績を後世に伝えることができれば少しは見直してくれるかもしれない。


水島新司先生の作品への愛にあふれるWebサイト:

水島新司の世界 Byトラトラ甲子園

オグマナオト 

野球文化研究会 

水島新司選手名鑑

たらうの芸術とコーヒータイム

なにも思いつかないの記

まぶたはともだち

ひろし虫の戯言

・水島新司 漫画図書館 

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