見出し画像

読み書きが苦手でも楽しめる!「ディスレクシア」の私がオーディオブックで見つけた本の世界【audiobook.jpユーザーvoice】

みなさんは、オーディオブックをどんな風に聴いているのでしょうか?オーディオブックを活用し、生活に役立てているユーザーの皆様の声を集め、紹介していきます。
10月は「ディスレクシア啓発月間」です。そこで、今回は文字の読み書きに困難を持つ「ディスレクシア」という学習障害を抱えるTさん(18歳)に、学校生活で感じた苦悩や聴く読書との出会い、現在のオーディオブックの楽しみ方についてなどお話を伺いました。

ーーTさんは文字を読んだり書いたりすることが苦手ということですが、ご自身がディスレクシアだと認識したのはいつ頃ですか?
小学校入学前からなんとなく文字の読み書きには苦手意識がありました。それが、小学校に上がって授業が始まると「書けない」「読めない」という意識が強くなり、学習面での困難を感じるようになりました。母によると一年生の秋には学習障害の診断を受けていたそうです。自分自身がディスレクシアだと知ったのは三年生になる直前。通級指導教室に通い始めるタイミングで母から告げられました。
私自身は学校での勉強は好きだったのですが、読書の時間はとにかく苦痛でした。小学生の頃は絵本や物理化学といった文字の少ない本を眺めて過ごし、中学では当時使っていた電子辞書に青空文庫が入っていたので、電子辞書の機械読み上げで聴いていました。

文字に影、目に突き刺さる。文字が動き出して見えることも

ーー文字に対してどんな感覚を持っていらっしゃいますか?
私の場合、文字の下にぼんやりと影みたいなものが見えたり、明朝体など文字の形態によっては目に突き刺さるような感覚を持ったりします。疲れていると文字が動き出して文字と文字が混ざってわからなくなるということもありますね。以前、音楽の授業のときに教科書の音符と歌詞の文字がぐちゃぐちゃに混ざって見えて気持ち悪くなったこともありました。私の場合は音韻認識(音と記号である文字をつなげ操作する能力)の弱さと視覚認識と弱さがあるのですが、それ以外に光に過剰に反応して文字が認識できないアーレンシンドロームという症状を抱える子もディスレクシアと診断される人の中には多いようです。ディスレクシアは「識字障害」と表現されることが多いですが、症状が現れ方は人によってさまざまです。

※文字が動くといった視覚認識の弱さはディスレクシアの主症状ではありません。

「聴く読書」に出会って、思考の幅が広がった

ーーTさんがオーディオブックを聞くようになったきっかけを教えてください。
父が車での移動中にラジオを聴いたりオーディブックを聴いたりしていて、自分も自然と音声メディアを聴くようになりました。中学までは父からすすめてもらったものを聴くことが多かったのですが、高校生になって自分のスマートフォンを持ってからは、自分の聴きたい本を選ぶようになりました。最近はもっぱら推理小説を読んでいます。「ST 警視庁科学特捜班」(今野敏著、講談社刊)のシリーズやライトノベルの「夢探偵フロイト」(著者:内藤了著、小学館刊)などはおもしろいですね。

あとは、「罪と罰」(著者:ドストエフスキー著、江川卓訳、岩波書店刊)も古典ですが楽しめました。これは「PSYCHO-PASS サイコパス」というアニメに出てきたのがきっかけで聴きました。父からすすめられておもしろかったのは「海賊とよばれた男」(百田 尚樹著、講談社刊)、「戦場のコックたち」(深緑 野分著、東京創元社刊)などですね。「戦場のコックたち」は推理小説ながらストーリーがおもしろくて、三回は聴きました。

オーディオブックでたくさんの本を聴くようになって、例えば小説の中で出てくる問いに対して自分なりに考えて答えを見出してみることも多く、物事の捉え方や考え方の幅が広がりました。実生活だけでは感じられない社会的な考え方や倫理といったものを意識するようになれたのは、本と出会えたからこそだと思います。

ながら聴きで勉強の効率UP!オーディオブックの効能

ーーオーディオブックを普段どんなシーンで聞いていますか。
勉強中や作業中に「ながら聴き」することが多いですね。高校生の頃には数学で微分積分を解きながら、オーディオブックで物語を聴いたり、化学の本をスマホの読み上げ機能で聴いたりしていました。
こういう話をすると、勉強と読書のどちらかがおざなりになるでしょう?といわれることがありますが、私の場合は耳から情報を得ながらの方が、一つのことだけに取り組むよりも勉強に集中できるんです。
ながら聴きには、記憶の引き出しが多くなるという効果もあって、物語の内容を思い出すことで数学の解き方を思い出せたり、逆に数学の解き方を頭に浮かべることで耳から得た化学の情報を思い出せたり。ディスレクシアの人の中には、並行して二つのことをする方が集中できるという感覚を持つ人が一定数いるようです。

通学中に電車の中でオーディオブックを聴くことも多いですね。私の場合、周囲の音に過敏で、無意識にいろいろな音を聴きとってしまう特性があります。そのため、ゲームセンターのように音が無造作に重なる場所は情報が多すぎて気持ち悪くなってしまうんです。電車の中も人の会話が勝手に耳に入ってきてしまうので、そういった音をシャットアウトするためにオーディオブックを聴いています。
私は耳からの情報を三つに分解して聞くことができます。だから、自宅でオーディオブックを聴くときは、片耳ずつ別のヘッドホンをつけて、片方ではオーディオブックを聴いて、片方ではネットラジオを聴いているような日もあります。朝起きてから寝るまで常に耳から何かしらの情報を得ているという日も多くて、お風呂や食事のときもイヤホンをつけていて母から呆れられることもよくあります。

「本を聴く」が当たり前の社会に

--オーディオブックのどんなところに魅力を感じますか。
オーディオブックの魅力は、頭の中で想像を膨らませる余白があることだと感じています。耳に入ってきた情報で物語のシーンを想像していくのが楽しいんです。
オーディオブックは古典や名作のコンテンツは充実していますが、話題の新刊はまだコンテンツになっていないこともありますよね。古い作品ももちろんおもしろいのですが、「話題作なのに知らないの?」と友人から驚かれることがあるので、新作も早いタイミングでコンテンツ化して欲しいなと思います。あとは私が元々アニメ好きというのもあって、アニメの小説版などももっと充実して欲しいですね。特に小説版しかないスピンオフ作品というのがアニメには結構あって、ファンとしてはそういったものがオーディオブック化して聴けるようになるとうれしいです。
ときどき、友達と本の話をすることがありますが、本を「読んだ」というべきか「聴いた」というべきか迷うことがあります。「読んだ」というと、「読んだんじゃなくて聴いたでしょう」ってツッコまれそうな気がして……些細なことではありますが、こんなことに気を揉まなくてよくなるように、聴く読書がもっと一般化して誰でも楽しめるものになることを望みます。


オーディオブックで読書を楽しむようになって、思考の幅が広がったり、勉強の効率も高まったというTさん。
一方でTさんのお話しを通じて、「聴く読書」の浸透や拡大がまだまだ十分でないことも痛感しました。
audiobook.jpは、「当たり前に耳で読書を楽しめる社会」を目指し、コンテンツの拡充やオーディオブックの認知拡大に取り組んでまいります!

▼オーディオブックを始めたいという方へ
オーディオブックの聴き放題プランへの登録は、こちらから可能です。

▼オーディオブックについてもっと知りたい方へ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?