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量子暗号通信の現状と将来

こんにちは。
量子って? 文部科学省HPには、

 粒子と波の性質をあわせ持った、物質やエネルギーの単位。物質を形作っている原子そのものや、原子を形作っているさらに電子・中性子・陽子といったものが代表

とあります。
 現在の通信は、光ケーブルによる大容量高速通信を基盤とする通信網となりました。その光信号を暗号通信に使用し、よりセキュアな通信とするため、日本を始め各国で研究が行われています。
 そんな「量子暗号」に係る通信技術について記事にしました。

量子暗号通信とは、量子暗号の利点・欠点

 現在の光通信は、光の点滅「オン、オフ」をデジタル信号を送受信する仕組みです。
 光には2つの性質があり、波の性質粒子の性質がある。粒子の性質をもつことから直進及び反射し、波の性質をもつことから障害物の後ろに回り込む性質を併せ持つ。
 
 暗号通信は、ある情報を「鍵」で暗号化または解読する。このため、その鍵の強度は暗号の強度となる。量子暗号通信では、量子力学の原理により暗号化をするわけだが、その方法は微弱な光の粒「光子」にその鍵情報を載せる。仮に、悪意を持つ第三者が、その光子を盗み見た場合、その光子が乱れる。この乱れを検出することで暗号強度が維持されてるかを確認できる。
 この通信方式における光子の検出は高い技術を必要とする。従って、不正な解読は不可能であり、仮に盗み見られた場合は、光粒子が乱れることから盗みされたことがすぐに発見でき、これらが量子暗号の利点となる。

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 では欠点は何か?前述で「検出は高い技術」を要すると述べた。盗み見の有無の監視やなど通信のための光子の検出には、一つ一つの光子を受信側で正確に検出し、かつ高い感度が求められる。そのため、冷却装置と高精度の検出器が必要となる。このコストが1台あたり100万円以上要する。また、そのため実用化が遅々として進まなかった。更に、光子に暗号通信の「鍵」情報を載せる技術は高度である、このことも実用化が進まない一因である。
 コスト高度技術が実用化における欠点と言える。

将来に向けた実用化のための技術

 上述したように光には粒子のほか波の性質も併せもつ。上述の粒子の性質を利用した実用化研究の他、その「波」の性質を利用する実用化の研究も進められ、むしろこの波の性質を利用する技術が実用化に近いと言える。
 この波の性質による方式は、光子の有無ではなく「光の振動」つまり光波の振動するタイミングにより、暗号鍵を生成する。長距離の通信を経て減衰する波は、測定時など途中で増幅できる。現在の光通信の技術をそのまま利用できることから、検出器のコストが数万円程度で済み、より実用化に近づく。更に光源には、通常のレーザー光が使えることもメリットである。
 以上、「光子」の欠点として指摘した問題を光の波の性質を利用することで、既存の技術を利用し実用化に向けたコスト低減ができる。更に量子暗号の技術が進めば、普及が加速する可能性がある。
 実は、この波の性質を用いた量子暗号通信の安全性は証明出来なかった。しかし最近、NEC、東芝などが参画する研究グループが、盗み見の痕跡の検出が可能となる手法を発見。これにより実用化への研究が進んだ。
 原理は、まず光波の振動からある数値を検出。その数値を特殊関数により処理し、盗み見された場合にのみエラーが出るという方式の発見に成功した。従って、盗み見をされていない情報だけを暗号鍵により解読し、取り出すことで通信の安全性を確保できる。

各国の研究状況

 今まで、日本における現状を述べたが、中国企業は既にサービス開始している。北京と上海の約2000キロメートルの通信網を構築し先行している。
 最後に、量子暗号通信は、推計で2025年頃の世界市場規模はおよそ約2兆1000億円になる。実用化したなら暗号強度が高いことから、現在の高コストな分野での利用が進むと推測される。例えば、金融、医療、防衛など機密情報を扱う分野なでが想定される。今後、このような技術が更に研究され、利用分野が拡がり、安価な通信機器での利用が進むことを期待したい。

ここまで読んで頂きありがとうございます。