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夜空に泳ぐチョコレートグラミー


#今年のベスト本

この本を手に取ったのは、「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞に選ばれた「町田そのこ」さんの本だったから。

本好きの書店員さんが選んだ「本屋大賞」の本なら、間違いなく面白いだろうと思って読んだ「52ヘルツのクジラたち」。
読み終わってすぐに、もっとこの人の本が読みたいと思って
手にしたのが、この「夜空に泳ぐチョコレート グラミー」です。

この本は5編の連作短編集です。
そのどれもが、しんと心に沁みました。

世の中に平等なんてものがあるわけないって、誰でもわかってる。
でも時には不平等というより、もはや理不尽といった状況もある。
そんな中でも懸命に生きている人達の物語です。

普通に生きて、普通に幸せになりたいだけなのに、それがどうしてこうも難しいのか。

何かがずれてしまっている。
それが環境なのか、自分自身なのか、自分の隣にいる人なのか……
それは自分で変えられるのか、その空虚は自分で埋められるのか、
わからないけど、もがくしかない。
その様子は読んでいて心がヒリヒリ痛くなります。

それでも。
もがいていく先に小さな光があったり、気付かずにいた温かい思いに
ふと触れたり、小さな優しさに生きる勇気をもらったり……
そんな小さなピースのひとつひとつが、誰かの救いになったり
生きる支えになったりして、読んでいるこちらもちょっとホッとします。

この5編はどれも面白いのですが、その中で一も番面白かったのは
やはり「カメルーンの青い魚」です。
これは、R-18文学賞大賞受賞のデビュー作です。
R-18とは?と一瞬考えましたが、読み終えて思ったことは
「ものすごく純愛だ」ということ。
お互い大好きで、相手をとても大切に思っていて、でもとても生きるのが不器用……
そんな二人の物語です。
きれいごとでは終わらない。でもその苦味ごと受け止めていく。
そんな主人公の姿が切なくも心に響きました。

そして、最終話の「海になる」
この話もとても好きでした。
理不尽に放り込まれた絶望の世界から、思いがけない出会いが救いだしてくれることもある。
その世界から立ち上がり、希望のある世界に踏み出していく主人公の様子に
胸がじんとしました。

短編集なので、一話ずつでもすぐ読めます。
そして、たまにもう一度読み返したくなる本です。




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