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Rider's Story あのオートバイ再び

割引あり

バイク短編小説 Rider's Story
あのオートバイ再び 武田宗徳

オートバイブックス
https://autobikebooks.wixsite.com/story


 最近思うのだ。またオートバイに乗ってみようかと。今年で三十五歳になる私は、一つ年下の妻と二人の男の子と四人で暮らしている。二人の息子は小学校に入り、妻も仕事を始め、経済的にも時間的にもわずかだがゆとりができつつあった。
 オートバイは二十歳の時から五年間乗っていた。ヤマハのSR400だった。キック始動に手こずったものの、気に入っていたし愛着もあった。しかし結婚した時に、経済的な理由で泣く泣く手放した。もう一度、SRに乗ってみたい

 ある土曜日の午後、子供たちを絵画教室へ送り終え、私は、あてもなく車を流していた。走っているオートバイに、つい目がいってしまう。大型のネイキッドとすれ違った。ビッグスクーターが車の脇をすり抜けていく。後ろにはSRがついてきている。しばらくして、そのSRが私の車の右側を追い越していった。そのとき、私ははっきりと見た。

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