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Scar Symmetry『Holographic Universe』(2008)

本国スウェーデンではもはや大御所となったSCAR SYMMETRYが2008年にリリースした通算3枚目のアルバム『Holographic Universe』

スカシンの黄金期を支えたChristian Älvestam在籍時の最後のアルバムにして、かなりの意欲作でもある。

HOLOGRAPHIC UNIVERSE

前作まで色濃く残っていた生々しい哀愁メロディと激しいビートにグロウルががっつり乗る、所謂イェーテボリスタイルはだいぶ影を潜め、サウンドはサイバーメタルという言葉が浮かんでくるほど、より機械的に洗練され、かつてないほどクリーンボイスの割合が大きい。
しかし、かといって要所要所のアグレッシブさは失われておらず、もちろんメロは良い。

初期の荒ぶる雰囲気が好きだった自分にとってはなんとも評価しにくいアルバムだが…メロディックスピードメタルアルバムとして聴けばかなりの完成度だと思う。

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Christian Älvestam − vocals
Jonas Kjellgren − guitar
Per Nilsson − guitar
Kenneth Seil − bass guitar
Henrik Ohlsson − drums
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■Morphogenesis
デスメタルバンドにありがちな「開幕曲はツーバスドコドコでギターブリブリの速ければ速いほどいいんだよ!」みたいな黙示的な固定概念を覆し、
ミドル〜ややスロウなテンポでいきなり”聴かせる”系のオープニング曲。
Sonata ArcticaStratovariusのような爽やかさを醸しつつ、コーラスはドラマティックでメロウに仕上げている。
良い曲なんだけど、やっぱり個人的にはアルバム中盤くらいにあっても良い曲。

■Timewave Zero
スローでまたもや泣きメロを聴かせてくるチューン。
セカンドヴァースに入った瞬間に思い出したようにやや疾走し、グロウルがはいるものの、基本的にはゆったりと流れていくメロディを愉しむための曲。
これもソナタっぽい。


■Quantumleaper
縦ノリザク切りギターにグロウル乗せやっと来たー!これは問答無用でヘドバン不可避の展開。
コーラスはシンガロングできそうな伸びやかなメロディ。

■Artificial Sun Projection
クリーンボイスとグロウルが交互に顔を出すミドルテンポの展開からLost HorizonやCamelotで聞けそうな哀愁美メロコーラスに繋がるメロディックヘヴィメタル。
ただただChristianの歌が上手い。

■The Missing Coordinates
ピロピロkeyのイントロから疾走するサイバープログレメタル。
複雑なコード進行やさまざまな響きのサウンドを絡ませながら規律の取れた心地よいカオス空間に誘う展開は、彼らの今作の試みの一つなのだろうか。

■Ghost Prototype I (Measurement Of Thought)
イントロのギターサウンドから薄々感づいていたが、、この曲はギターがめちゃくちゃ主張してくるやつだ…!と思った瞬間流れ込んでくる弾きまくり大会のギターソロ。
メカニカルなフレーズ、オリエンタルな雰囲気、ネオクラ的なフレーズ…指板を自由自在に踊り狂う指が想像できる、ギタリストのみなさんは一度聴いてニヤニヤしてほしい一曲。


■Fear Catalyst
重なり合うガテラルから天空に響き渡るクリーンボイスの温度差が楽しい、まさに天国と地獄を味わえるミドルテンポのヘヴィな曲。
イントロやバッキング、中間部のギターワークにArchEnemyっぽいサウンドが聞こえてきて北欧好きの自分、思わずニッコリだわ。

■Trapezoid
バスドラ、バッキングギターがヘヴィに支えるメロディアスなヘヴィメタル。
Christian、完全にデスボイス忘れちゃいました。


■Prism And Gate
高音シャウト、柔らかクリーンボイス、
吐きそうなグロウル、吐き捨て系グロウル…と実に様々な歌い方で攻めてくる。
テンポチェンジやリズムチェンジを繰り返す曲の展開もプログレだが、歌唱のバリエーションも愉しめる、色んな意味でプログレッシブな曲。
Jonasのテクいギターも存在感出してていいです。

■Holographic Universe
8分以上の大作。
このアルバムの世界観をギュッと濃縮した万華鏡の如くサウンド展開、メロディが賑やかに舞い散る。
4:38あたりから急激に流れ込んでくる狂気に似た大アルペジオをベースにしたテクいギターソロは圧巻。


■The Three-Dimensional Shadow
アグレッシブに叫び倒すパートや、クリーンに歌いあげるパート、ギターが主張するパート、、プログレです。
中々エモいハーモニーを聴かせてくれる瞬間もあり、一曲でハードもソフトも色々楽しみたい方にはオススメ。


■Ghost Prototype II (Deus Ex Machina)
泣きのギター&聴かせるクリーンボーカルからアグレッシブに疾走する曲。
コーラスに至るまでの展開とリズムはさすがの良メロメイカーの面目躍如。


総合満足度 82点(ユニバースに行く前にもう少し地に足をつけて欲しかったレベル)

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