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Born of Osiris『Angel Or Alien』(2021)

アメリカ イリノイ州出身のプログレッシブメタルコアバンドBorn of Osiris

元々メンバーのそれぞれが別々のバンドで活動していたが、2003年にふとしたきっかけで出会い、新たにプログレ志向のバンドを結成、デビューEP『Your Heart Engraved These Messages』をリリース。

当時はHopeYouDiePaddy Wackといった形で頻繁にバンド名を変えていたが、2007年にBorn of Osirisに落ち着き、『Narnia』という(のちに『The Takeover』に改名)曲でSumerian Recordsと契約、無事に『A Higher Place』でシーンにデビューする。

このアルバムはビルボードチャートで最高73位まで上昇し、All Shall PerishAfter the Burial、Caliban、Hatebreed、Cannibal Corpse、Unearth 、 Hate Eternalといった人気バンドとツアーを回る事になるが、オリジナルメンバーであったギターのMike Shanahanからバトンを引き継いだMatt Pantelisがわずか一年で脱退。
いまや超人気テクニカルギタリストになったJason Richardsonを後任として加える。(2011年脱退、All that Remainsに加入。後にギャラ未払い問題で脱退した後もバンドやレーベルと揉める事になる)

その後4枚のアルバムをリリースし、幾多に及ぶメンバーチェンジを繰り返し、辿りついた6枚目のアルバム『Angel Or Alien』。
過去作に比べ、聞きやすいキャッチーなメロディラインやモダンなエレクトロ路線の要素が増えている感じがする本作は、彼らが「メロいテクコアジャンル」に来てしまった事に賛否はあるものの、、個人的には全然アリだと思う!

Angel Or Alien

バカテク&美メロディを量産しまくるモンスターバンドがひしめくジャンルではあるが、彼らにはその中でも頭抜けたセンスを持っていると思うし、やはりこういうサウンドの変化はプログレッシブメタルコアをやっている限り避けては通れない、ある意味正統進化の過程なのだから。

そんな彼らの最新にして最深なるサウンドがこの一枚に封じ込められている。

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* Ronnie Canizaro – lead vocals
* Lee McKinney – lead guitar
* Nick Rossi – bass, rhythm guitar
* Joe Buras – keyboards, synthesizers, backing vocals
* Cameron Losch – drums
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■Poster Child
輪郭のクッキリした音像で過去一最高のプロダクションを予感させる開幕曲。
キーボードのピロピロした効果音と、粒だったバスドラ、ベース音がとても良いバランスで絡み合っている。
Ronnieのデスシャウトとクリーンの使い分けもスキルフル。
最後におしゃれなジャジーなトランペットもいれちゃったりなんかして。


■White Nile

DJENT的なテクいギターをふんだんに振りまきつつ、
今作のコンセプトである光と陰(Angel Or Alien)を各局面で表現している。
ブツブツに切り離して、間をうまく聞かせるバッキングに、流れるようなギターの流線的なメロディがふわりと乗るチルさも聞きどころ。


■Angel Or Alien
マスコアサウンドとかモダンサウンドとか、DJENTとかプログレッシブだとか、もはやそんな言葉を紡ぐのすらこの感動についていけずに置いていかれそうな感じがしてためらってしまう。
ただシンプルにカッコ良くて気持ちいいサウンド。
彼らの哲学の結晶と世界観が詰まった最新鋭のメロコア。


■Waves
Ronnie Canizaroの特徴の一つであるデスボイスとクリーンシャウトの間のような、ハーシュなクリーントーンが遺憾無く炸裂するシンガロング必須な曲。


■Oathbreaker
複雑で近未来的なギターワークに、緻密ながら野生的な荒々しさを纏うビートが心臓に直撃するが勢いで迫ってくる。
Linkin ParkのChester Benningtonの息吹も感じるRonnieのシャウトは激情全開。


■Threat Of Your Presence
ディソナンスを伴った不穏なヴァースからの完全にハーモナイズドされた感動的なコーラスに、耳の解像度をマックスまで上げないと情報が処理しきれない濃密なチューン。
しかし一方でスタジアムロック風の開放感溢れる分かりやすいシンガロングもあり、ギターソロもあからさまに美しい。
聴く角度によって煌めきが異なる深遠なメタルコア。

■Love Story
構成や雰囲気は前曲と同じ、不協和音とハーモナイズドフレーズのミルフィーユだが、こちらの方がやや落ち着いた印象。


■Crossface
常軌を逸した変拍子& 鋭角エッジのギターリフでゴリっと輪郭を削り創るマスコア。
シタールなのかベルか分からないが、オリエンタルな響きを漂わせるサウンドに、折り重なるように被さる獰猛なグロウル。
ブレイクダウンもガツっと挟み、重さも出してくる。

■Echobreather
縦横無尽に駆け回るテクニカルリフ、叩きつけるようなツービート、RonnieとJoeがキャッチーな掛け合いシャウトするVoと、ぴこぴこした電子音、全てが最高のバランスで配合されたスクリーモ。

■Lost Souls
ピコりがちな電子音とエモいギターが鮮やかに音のキャンバスを染め上げるメロコア。


■In For The Kill
フックの効いたリフ、音質の違うグロウルとデスシャウトが混ざり、突如として空気感の異なるリバーブサウンドが現れ、全体を万華鏡のように彩るポストハードコア。
Protest the heroあたりのテクいバンドがよくやるフレーズを一小節ごとにツギハギのようにくり出す展開。


■You Are The Narrative
狂気的なコンプレキシティとプログレッシブな展開を息つく暇もなく浴びせてくる。
今まではあくまで曲の中で綺麗に見せてきたテクを、アルバム終盤になって、やっと彼らの「どこに行くか予想のつかない変幻自在の変態バカテク」をちゃんと魅せてくれる狂宴のような一曲。


■Truth and Denial
手数の多いリフながらグルーヴ感を意識したサウンドに仕立て上げている勢いあるチューン。
突然滴るように鳴り響くピアノにハッとしながらも、単音で攻め煽る弦音は鳴り止まない


■Shadowmourne
暑苦しいスクリームで直熱式の激情を伝えたかと思うと、涼やかクリーンボイスとトランペットで浮遊感とチルさを演出してしまう新世代のヘヴィモダンバラード。
好きです。


総合満足度 90点(メタルコア界の冥界の神に屈服してしまうレベル)

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