見出し画像

ANGRA『Temple Of Shadows』(2004)

ブラジルのヘヴィメタル界の象徴ともなっているANGRAが2004年に発表したエポック的なアルバム『Temple Of Shadows』をご紹介。

ANGRAは、VoのAndre Matos(R.I.P.)が1990年に前バンドViperを脱退した後、アメリカの音楽学校で出会ったGt.のRafael Bittencourtと組んだのが始まりで、その2人の才能に引き寄せられるように、若き天才Kiko Loureiroをはじめ、Luis MariuttiRicard Confessoriが集まり『Angels Cry』で鮮烈なデビューを果たす。
これは当時軍事政権下にあったブラジルで、メタル不毛の地から出てきたバンドとあって、世界に衝撃を与え、特に日本ではかなりの期待をもって迎えられた。

その後2nd、3rdと順調にアルバムをリリースし、ワールドツアーを積み重ねていくものの、VoのAndreがBaのLuisとDrのRicardを引き連れ1999年に脱退するという衝撃の展開が起きる。

残されたRafaelとKikoは新ヴォーカリストにEdu Falaschiを、BaにFelipe Andreoli、DrにAquiles Priesterという実力派テクニシャンを加え、新生ANGRAとして『Rebirth』で再デビューを果たす。

本作『Temple of shadows』は、発売から20年が経つものの、曲構成、サウンドクリエイション、ダイナミズム、散りばめられた超高等テクニックが未だメロディックスピードメタルの最高峰に位置する驚異的なアルバム。

Temple of Shadows


———
Edu Falaschi – lead vocals
Kiko Loureiro – guitars, keyboards
Rafael Bittencourt – guitars, backing vocals
Felipe Andreoli – bass, backing vocals
Aquiles Priester – drums, percussion
———

■Deus Le Volt!
激烈な美旋律の嵐を予感させるような荘厳なイントロ曲。

■Spread Your Fire
当時、イントロのメロディックなギターリフが衝撃的すぎて全世界のギターキッズ達が次々とうれションや滝のような感涙や何か得体の知れない液体を全身の穴という穴から吹き出してしまったANGRA史上最高にかっこいい曲。
Kiko&Rafaの勇壮なツインギターリフや、地の底を這いずりまわるような展開から一気に昇天する感動的なギターソロ、Eduのヴォーカルは相変わらず伸びやかではあるものの、前作より中音程のアグレッシブネスが強調され、
Glorious 〜!
のコーラスは栄光への扉をこじ開けるかのような力強さを感じる。
誰がなんと言おうと間違いなくメロスピの金字塔。

PV無かったのでアキレスのウルトラテクニックが楽しめる動画置いておきますね。


■Angles and Demons
Dream Theater風味のあるフックたっぷりのプログレッシブなイントロの裏でゴリゴリと存在感を放つFelipeのベースがこの頃から輝きを放っている。
変拍子ながらリズム隊のタイトさは微塵も揺るがず、その上でKiko &Rafa の滑るような流麗なギターソロが踊る踊る。



■Waiting Silence
開幕から弦飛びのテクいイントロと変拍子ながらもグルーヴ感抜群のギターワークが冴え渡り、Aquiles の小気味よいスネアとバスドラがタイトに緊張感を持ってボトムを支配しているため、Voが高音は伸びやかに、中低音程は唸るように自由自在に高低差を行き来する事が出来る。
各楽器のパートが代わる代わる曲の表面に飛び出して来て非常に情報量が多い曲。


■Wishing Well
アコースティックで始まる爽やかな哀愁を振り撒きながら軽やかに舞うような曲。
単なるバラードと言って仕舞えばそれまでだが、ここまでの多彩なメロディを練り込む事が出来るのもEduの作曲スキルとメンバー全員のテクニックの高さがなせる業だと思う。
控えめに評価してもメロディック極上バラード。

■The Temple of Hate
激ムズテクニカルイントロから疾走するメロディックスピードメタル。
Kai HansenがゲストボーカルでEduと歌っており、最初はヒステリックな高音がミスマッチだなーと思っていたが、リピートするうちに頭から離れがたい曲の一部になっていた。
中間部のギターソロは高速ながらしっかりと音の粒が立っており、改めてKikoのテクニックの高さを再確認できる。容赦ないマシンガンのような音の嵐に悶絶必至。
最後まで文句のつけようのない感動的なエピックが次々と濁流のように押し寄せて、アルバムの中心的な絵巻は勢いよく閉幕する。


■Shadow Hunter
フラメンコ風のギターとリズム大国ブラジルならではの様々な打楽器が散りばめられ、
『Holyland』にあったANGRAらしいラテンの空気を吹かせる。
途中でさらりと転調し、メジャーキーに移行したかと思いきや、味わい深いメランコリックな雰囲気に流れ込む。
ギターソロは自由自在に爽やかなメロディを奏で、実に心地よい。
ちょっと『Fireworks』時代のテイストも感じる。
ファイナルコーラスはEdu、ちょっとキツいか…?


■No Pain for The Dead
哀愁、悲哀、悲壮感に溢れたウィスパーボーカルが冒頭から流れ出し、一気に激情を訴えるパートに遷移。
EdenbidgeのSabineの天女のような歌声が傷ついた戦士を癒すように優しく伸びやかに響き渡り、もう昇天するしかない。


■Winds of Destination
本アルバムには後世に伝えるべきテクニカルスピードキラーチューンが3曲も入っている。
『Spread your Fire』『The Temple of Hate』そして最後にして、プレイするにも情報を理解するにも最高難易度レベルの曲がこの『Winds of Destination』だ。
6拍子と5拍子が交互に入れ替わる変則的なイントロからHansi Kursch (vo/BLIND GUARDIAN)がリードVoを取り、Eduとのデュエットパートに雪崩れ込む。
その後は静かなピアノパート、変拍子パート、チキンピッキングや大アルペジオ等超級者向けの教科書のようなギターソロ疾走パートなどが次々と繰り出され、プログレメタルの極地が展開される。


■Sprouts of Time
ボサノヴァの横ノリと、夕陽の沈む広い草原で1日に感謝しながら歌うような姿が想像できる平和な曲。
美しいメロディに心が洗われる。

これもMVがなかったのでアキレスのドラムプレイ動画置いておきます。


■Morning Star
静かにパーカッションの足音が近づいて、緩やかで叙情的なメロディが奏でられる。
そこからタイトル通り夜明けの星を思わせる、開放感に向かう劇的展開がギターによって語られる。
アウトロではどこかFreddie Marculy を想起させるような大仰でオペラティックなEduの歌い回しがさらなる感動を呼び、自然とリピートボタンを押してしまう。

■Late Redemption
ゲストVoにブラジルの巨匠Milton Nascimentoを迎え、壮大な絵巻の最終章が告げられる。
ギターが最後まで弾きまくり大会でニッコリです。


■Gate ⅩⅢ
冒頭の曲やThe Temple of Hate、Morning Starなどアルバム中のメロディが様々にリンクした、アルバム最後を締めくくるオーケストラティックで荘厳な曲。

総合満足度 97点(初めて聞いた時に確実に人生が変わったレベル)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?