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Protest The Hero『Palimpsest』(2020)


カナダ オンタリオ州を拠点に活動しているテクニカルプログレッシブ・メタルコアバンド、Protest The Hero

1999年に当時13〜14歳だったRody WalkerをはじめとするメンバーがHappy Go Luckyというバンドを発足、2001年にProtest The Heroに改名したあと2005年に、当時は珍しかったパンクにメロコアを融合させたアルバム『Kezia』でデビューすると、各方面から絶賛の嵐が寄せられる。

2006年にはBad ReligionAnti-FlagDragonForce等のカナダ•アメリカツアーをサポートし、Avenged Sevenfold3 Inches of Blood と全米ツアーを回るなど、そのクリエイティビティとテクニックが全世界に認知されるに至る。

しかし2013年に初期メンバーの1人であったMoe Carlsonが学業専念のため脱退、 Lamb of God のChris Adler がヘルプで一時加入し、(後にMike Ieradiが正式加入)『Volition』をリリースするも、
今度は2014年にベースのArif Mirabdolbaghiが脱退して新たにCam McLellanがセッションミュージシャンとして加入するなどメンバーが流動的になり、その不安定さにつられるようにアルバムのセールスも徐々に下がっていた。

そんな中、2020年にSpinefarm Recordsよりリリースされた『Palimpsest』は、基本的な作風は前作を踏襲するタイトで複雑さを持ちながらも、ストリングスを大々的に投入したり、マスコアの要素を練り込んだりと、モダンで野心的な作品になっており、地元カナダの音楽チャートでも3位に入るなど、復活を期したアルバムとなっている。

Palimpsest



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Rody Walker – lead vocals
Tim MacMillar – rhythm guitar, piano, backing vocals
Cam McLellan – bass, production
Luke Hoskin – lead guitar, piano, backing vocals
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■The Migrant Mother
雄大なストリングスをバックに疾走するメロディックスピードチューン。
複雑な展開もなく、彼らにしてはシンプルな曲。
とはいえ、忙しなく動き回るギターワークはDjent風味のテクニカルなバッキングだし、RodyのVo もコーラスで開放感を放ちながら激唱するしで、決して情報量が少ないわけではない。
Dragonforceの影響を感じる。
いや完全にドラフォだわ。
■The Canary
一瞬ごとに色合いを変えるギターのサウンドが心地よい緊張感を与える美旋律満載のチューン。
Rudyの絶好調のハイトーンも炸裂し、往年のRushのGeddy Leeをも追想させる。


■From The Sky

Dream Theater風の複雑で無機質なメカニカルリフがガツガツと煽るマスコア的な前半から、コーラスに入ると叙情溢れるハイトーンビューティフルメロディが主張してくる。
1stコーラスはひたすらハイトーンだが、2ndはややシャウト寄りの魂のシンガロングを響かせる。
ラストのグランドフィナーレコーラスはもう全身の鳥肌が総立ち。

■All Hands
重厚な縦ノリハードロック然としたリフに続いてメカニカルなリフと叙情哀愁メロディが解け難くもつれあい、彼らのプログレマインドが最高極致に達する。
スラップベース、Djent、マスコア、およそテクニカルとされる表現を全て詰め込んで魂のサウンドで煮込んだ極上のチューン。
ピアノやシンフォニックなアレンジも素晴らしい。

■The Fireside
モダンで図太いギターサウンドが軽快に走り、Rudyの激烈高速ラップが炸裂する。
アンタ喉痛めたんじゃなかっけ?
そんな事を一瞬で過去の事にしてしまう破壊力と臨場感抜群のメロディックスピードモダンメロコアです。
■Soliloquy
Rudyの早口ラップ、先の読めないオルタナティブなギターサウンド、キレッキレのドラミングが織りなす上質なプログレメタルサウンドは高速でさまざまな思いを去来させる高機能情報過多型万華鏡と言うべきか。
途中の「Fucking!」の投げやりシャウトが地味に好き。

■Reverie
色んな所から持ってきた音や思いついたフレーズを惜しみなく詰め込み、彼らの歴史的名盤『Fortress』のマインドを2020年に持ち込んで再解釈したような、まさに彼らの空想や遊び心が爆発したような楽しいチューン
■Little Snakes
グネグネ動くベースラインとギター、小気味よく刻むストリングスに魂の叙情メロディが爆発するテクニカルメロディックコア。
溌剌とした歌声に漲るエネルギーが楽曲全体の複雑な末梢神経の隅々にまで行き渡っている。
硬質だが、熱い曲。
■Gardenias
音数の多い緻密なテクいリフに、本アルバムでは珍しいRudyのヒステリックなスクリームシャウトがぶつかってカオスなケミストリーを生み出している。
一聴するとまとまりのない印象に聞こえるが、一個一個のフレーズに迷いは無く、極めて丁寧に創りあげられておりプログレメロコアの最前線の音がここにある。

■Rivet
ピアノの清らかな音に続いて、グルーヴィーでカラッとした爽やかなリフが雪崩れ込む。
Dragonforceの影響が色濃く出ているキャッチーでシンガロングできるコーラスが印象的。


総合満足度 85点(情報量が多すぎて100回は聞き直さないと理解が難しいレベル)

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