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SPIRITBOX 『ETERNAL BLUE』(2021)

カナダの新世代アトモスフェリック•メタルコアバンド、SPIRITBOX

前衛的な試みを数多く手がけていたIWRESTLEDABEARONCEの元メンバーのCourtney LaPlante(Vo)とMike Stringer(Gt)夫妻により結成された。
Courtney はIWRESTLEDABEARONCEに所属していた頃から、自身の音楽的なキャリアに悩み、レストランでアルバイトをしながら小さなライブハウスを回る生活だったという。

2017年にバンドに見切りをつけた夫妻は、新たに自分のやりたい音楽を追求するため、死者と交信できるという「SPIRITBOX」を新たなバンド名に定め、そのイメージの通り、アトモスフェリックで、心の奥にズシンと来る新たなヘヴィネスの定義を体現した音楽を世に放つ事になる。

2020年に発表した『Holy Roller』を初め、全ての配信プラットフォームで1億回弱の再生数を記録しているまさに新世代のメタルコアバンドのデビューアルバム『ETERNAL BLUE』を紹介したい。
かのJens Bogrenがマスタリングを手掛けている事から並の新人バンドの制作体制ではないことがわかる。
レーベルもパンク界の名門であるRise Recordsと提携している彼ら自身のレーベルPale Chord Recordsからのリリース。

Eternal Blue

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-Courtney LaPlante – lead vocals
-Michael Stringer – guitar, bass, drums, background vocals
-Zev Rosenberg – drums
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■Sun Killer
ゆらゆらと境界線を曖昧にしながらも、ヘヴィなギターとダイナミックなグルーヴ、スクリームが確固たる軸は常に揺るがさない、アバンギャルドなチューン。


■Hurt You
激しい感情をスクリームとボトムヘヴィなギターが先導するミドルテンポチューン。
はかとなくEvanescence を感じるサウンドだが、エレクトロサウンドの配合率とDjent度合いではこちらの方がかなり上。


■Yellowjacket (feat. Sam Carter)
インダストリアルメタル的なストイックなリズムと不穏な雰囲気の電子音が飛び散るマスコアなチューン。
サウンドはあくまで重く、シューゲイザーのような無骨さを漂わせながら、コーラスでは一転、ポップなメロディが耳に残る。
この一見相反する要素を上手く混ぜ合わせる事ができるのも彼らの高いスキルの賜物。

■The Summit
透明感あふれるキャッチーな面を押し出しながらも、モダンヘヴィの要素を内包し、芯の強さを感じる仕上がりになっている。
複雑な展開はそこまでないものの、さまざまな解釈が出来そうな曲。


■Secret Garden
ベースがうねうね動くジェント系フュージョンとも言うべき曲。
コーラスの天空に響き渡るようなCourtneyの澄み切ったクリアボイスに癒される。



■Silk In The Strings
Courtneyの激情スクリームから始まるメタルコア。
ストイックなグロウルでダイナミックなバンドサウンドを盛り立てる。
このアルバムの中ではサウンド、曲構成ともに割とオーソドックスなメタルコアの部類だが、やってる技術レベルが高くまとまっているのはさすが。


■Holy Roller
硬派なエクストリームメタル。
忙しくギターが主張して、リズムが変化し、グルーヴがうねる厚みのあるミドルテンポの重いチューン。
Crystal LakeのRyo Kinoshitaをフィーチャリングしたバージョンもクール。

■Eternal Blue
アルバムタイトル曲。
一つ前の曲を聴いた後だと同じバンド、同じ人が歌っているとは思えない落差。
2:40あたりからのいわゆるジェント系メタルコア然とした刻み方には思わず頭が振れてしまう。
そのあとは重く落とすのではなく、浮遊感を伴う凝縮された厚いトーンで畳みかけてくる。
これがSPIRITBOXが提起する新たなヘヴィネス…!

■We Live In A Strange World
打ち込み系エレクトロニカサウンドを軸にCourtneyの綺麗なボイスが乗るオルタナ系のメタル。
後半はゴリゴリギターが顔を出すバンドサウンドに切り替わる。

■Halcyon
エバネ、もしくはAmaranth meetsBMTHな感じの浮遊系エレクトロメタルコア。
前半はメロディに大量の叙情性を乗せ揺蕩いながら、後半にかけて激情スクリームへと落ちていく劇的な展開。

■Circle With Me
複雑なギターリフとボトムを這うようにうねるベースラインに足を掛けながら高らかに美麗なメロディを紡ぎ出すCourtney嬢。
グロウル&Djentの極悪パートを挟み、サウンドの厚みが増えていき、グランドフィナーレを迎える。

■Constance
音響効果を意識した奥行きのあるサウンドクリエイションに美しく絡まるボーカルラインが何ともチルくて、トリップ不可避。
テクいギターが出てくることもなく、静かに海の底に沈んでいくかのような終わり方。


総合満足度 84点(新世代メタルコアのスピリットを確かに感じるレベル)

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