0307:モンキーバナナ

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昨日のライブでモッコリがベランパレードを脱退した。

ベランパレードは2012年に僕とモッコリの2人で「バンドやろうか」と言って始まったバンドだ。ナイトウォーリーはSRの7階にあったスタジオのAスタで2人でスタジオに入った時に無茶苦茶なセッション(僕ほとんどギター弾けなかったので)から出来た曲だ。はじめたばかりの頃、僕らは2人でスタジオに入っていた。

出会った、というか一方的に僕がモッコリを知ったのは僕が17歳の頃だ。高校のクラスメイトの女の子に「バンドが好きならライブハウスに行けばいいよ。お兄ちゃんバンドマンだから紹介するよ」と言われ、恐る恐るライブハウスに通うようになったばかりの頃だ。まだライブハウスに友達はおろか知り合いもほとんどいない。どんな服装で行くのが正しいのかも分からず学校帰りでもないのに学ランを着て行っていた。ある日、ゴリゴリのハードコアバンドのライブの最前列でほとんどの観客が頭を縦に振る中、へらへらとした顔でゆらゆらと横ノリで乗っているロック・リーみたいな髪型の男の子がいた。それがモッコリだった。

好きにしていいんだ。とモッコリを見た瞬間に思った。別にみんなが縦に頭を振ってるから縦に頭を振らなきゃいけないわけじゃない。いつでも自分の好きな感じでいれるということがかっこいいってことなんだとモッコリを見た瞬間に思った。

それから僕もしばらくしてバンドを初め、モッコリやゆりえちゃん、コウタ君が組んでいたバンド「リリイジョン」と対バンをするようになった。いつも僕は彼らの背中を追いかけていた。僕が初めて組んだバンド、ピーチニップルスが解散することになりへこたれ腐れてモッコリに「バンドを辞めたいと思っている」と相談したことがある。僕が二十歳の時だ。今は無くなったビレバンの店の前の段差で2人で並んですわって話した。相談した友達や先輩はほとんどが「辞めるなよ」と引き留めてくれた中、モッコリだけは僕に「そんな腐ってるやつのライブは観たくない。辞めちまえ」と言った。あの時のモッコリの顔とか返す言葉もなく俯いた先に見えてたコンクリートの地面とか今でも鮮明に思い出す。僕がバンドを辞めたいと口に出して言ったのはあの時だけだ。あれから心がくじけそうになるといつもあの時のモッコリが頭に浮かぶようになった気がする。僕が腐りにくい良い男になったのも少しはモッコリのおかげかもしれない。

もうこれがラストかと思うとやっぱり寂しいし、そもそもベランパレードでステージに立つの1年ぶりだし流石に泣くかもな、なんて思ってたけどステージに立ったら寂しさなんて1ミリも感じなかった。そうだった。そんなの全部ぶっ飛ばせる30分間だから僕らはバンドを続けてきたんだった。

なによりモッコリが楽しそうにドラムを叩いていて全部どうでもよくなった。ありがとうモッコリ。これからはベランパレード名誉顧問としてよろしくお願いしますね。


そして昨日、ナガミネヤスヨシがベランパレードに正式加入した。

10年前、僕は当時ボロボロのコンテナみたいな家に住んでいて無職だった。家に洗濯機がなく溜まりに溜まった洗濯物をゴミ袋に入れてコインランドリーに行くついでに楽器屋に行った。その時に高校生のやすよしに出会った。楽器屋の中から高校生の男女が楽しそうにきゃっきゃと話す声が聞こえてきて当時僕は高校生すらひがんだという。なんかいづれえなと思い(ゴミ袋なんて持って入るからだが)外に出ると外のベンチに背の高い角刈りの男子高生が姿勢よく1人で座ってボーっと空をみていた。

「仲間じゃん!!」

と僕は瞬間的に感じた。それが僕とやすよしの出会いだ。

最初に話したとき「俺、浮遊フェイザーみたいなかっこいいバンドがやりたいんです」と緊張しながら恥ずかしそうに言った。僕は自分もまだまともにバンドできてなかったのに偉そうに「そっか。できるよ。まずは髪を伸ばさないとね」と言った。そして「今日から僕の弟子な」と言って勝手に弟子にした。

高校を卒業して角刈りではなくなったやすよしが僕に「髪伸びてきたよあびちゃん」って嬉しそうに言ってきたの可愛かったな。

いつの間にか弟子って感じでもなくなり僕らは友達になった。退屈な時間ほど大切にしたいし誰と一緒に過ごすかが大事だと僕は思う。やすよしと僕はこの10年で多分とてつもない退屈を一緒に潰してきた。バンドを一緒にやることになるなんて最近まで考えたこともなかったけど、やすよしとバンドやりてえなと思ってからは一瞬で「今日から僕の弟子な」と言った時みたいに一緒にバンドやることが決まってるみたいな話し方でやすよしを誘っていた。「やろう」とすぐにやすよしは言った。

ゆりえちゃんとやすよしと僕、この3人でこれからどんなバンドを作っていけるか楽しみでしょうがない。大好きなものを守りたいときに必要な力、みたいなものが存在するとしたら僕らは少しずつその力をつけて前進してきたと思う。後退も停滞もそれ以上にしてきたし、守れなかったものもたくさんあるけど。

メンバー脱退の発表をした夜、ベランパレードの音楽が続くならなんでもするとSNSに書いてくれてる人がいた。そんなこと思わせてしまったことが悔しい。なにもしなくても生きていさえいてくれればちゃんと届くようにしていくから安心して欲しい。

今日からまたバナナ齧って頑張る。


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