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「さよなら、僕のマンハッタン」

原題:The Only Living Boy in New York
監督:マーク・ウェブ
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:2017年 88min
キャスト:カラム・ターナー、ジェフ・ブリッジス、ピアース・ブロスナン、ケイト・ベッキンセイル、シンシア・ニクソン

 マーク・ウェブ監督作品という情報だけで択んだ為、直前映画館H.P.の説明程度の予備知識で入館する。G.W.で当然都内の映画館はどこも満席に近い。敢えて満席で「チャーチル」を観たくなくてこの映画にしたところ正しい選択だった。

 「The Only Living Boy in New York」サイモン&ガーファンクルの楽曲のタイトルでもあり劇中でも流れる、この映画の中に芯のように存在し深く関わってくる。邦題に「マンハッタン」の言葉など全く不要、且つ、一個人の解釈で邦題を付けられても困る。ここは敢えていうならば「ニューヨーク」の筈だ。
 まるでアメリカの短編小説を読んでいるようなニューヨークの空気が終始展開する。

 父親の不倫現場を目撃云々と予告にあるが、ありきたりの不倫物ではない。大人の事情を知らずに育った青年が、ある日をきっかけに「少年から青年」へ更に「青年から男性」への過渡期を力まずに感情過多にならずに描いている。そのある日が偶々父親の不倫現場になったに過ぎず、場合によっては他の扉もあったのだろう。

 台詞は過剰ではなく伏線を丁寧に拾っていくと物語が立ち上がる。

 登場人物の誰もが切ない。憎むべき人物も居ず、封印が解け、やっと自然な呼吸をする登場人物全て。

 父親と息子のシーンもよく考えられており、ラストシーンに近いこの場面で初めて息子トーマスが父と並ぶ体格であったことが明るい陽射しの下見せられる。越えられなかった父の存在を希釈しながら物語の続きを見せる。
 とてもこなれた脚本だった。前回の「ギフテッド」が私にはあざとい感じがし好きになれなかった分、今回はうれしい作品に会う。
 最後の最後になるがジェラルドあっての作品、おかしな隣人とレッテル貼らずにご覧ください。音楽と共に久ぶりの明るいニューヨークを観て欲しい。
★★★★


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