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「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

原題:NEXT GOAL WINS
監督:タイカ・ワイティティ
製作国:イギリス・アメリカ
製作年・上映時間:2023年 104min
キャスト:マイケル・ファスベンダー、オスカー・ナイトリー、カイマナ、エリザベス・モス

「2001年、ワールドカップ予選史上最悪の0-31の大敗を喫して以来、1ゴールも決められていない米領サモアチームに、次の予選が迫っていた。破天荒な性格でアメリカを追われた鬼コーチ、トーマス・ロンゲンが就任し、立て直しを図るが、果たして奇跡の1勝は挙げられるのか!? 実話をベースに『ジョジョ・ラビット』『ソー:ラブ&サンダー』のタイカ・ワイティティが、全ての“負けを知る”人々にエールを贈る、感動と興奮のスポーツ・コメディドラマ。」*公式H.P.より

マイケル・ファスベンダー

 サッカーには一切興味が無い私が単に大好きな俳優マイケル・ファスベンダー氏がコーチ役で出演している、ただそれだけで観に行く。
 映画作品への熱い要望も監督への思い込みも無かった。けれども、結果としてそれは幸いした。

アメリカ領サモア

 サモアの国は知っていても、且つてそこがドイツとアメリカの支配下に置かれドイツ側の島が今はサモア独立国になっていることも今頃知る。
 今回作品の舞台はアメリカ領サモアだ。

監督として招かれる

 アメリカ領サモアの総面積は197.1㎢、長崎市405.9㎢の半分ほどととてもコンパクトな舞台で話は展開する。実は、こうしたアメリカ領サモアの背景が分からずに作品に入ると招聘された新監督のようにサモアに対して誤解が生じ易い。
 オランダ系アメリカ人新監督トーマス・ロンゲンが、FIFAランキング最下位地球上最弱のチームとみなされていたアメリカ領サモアを指導するというほぼ実話が映画化される。

トーマス・ロンゲン氏

 トーマス・ロンゲン氏のインタビューでは「アメリカ領サモアのチームには、インスピレーションを与える人物が何人かいます。その中にはFIFAワールドカップ予選でトランス女性として初めてプレーしたジャイヤ・サエルア、オーストラリア戦で31失点を喫したが引退から復帰してチームを助けたニッキー・サラプも含まれている。」と語り、ロンゲン氏はチームの多くの選手たちと今でも良い関係を築いているそうだ。

 アメリカ領サモアを指導するかと問われたロンゲン氏は、アメリカ領サモアがどこにあるのか知らなかった。しかし、オーストラリアに0-31で敗れ、FIFAランキング最下位であることを知っても、彼は怯むどころか「彼らの試合をいくつか見たが、このチームに幾つかの調整があれば私が変化をもたらすことができると分かった。」とこの任につく。

練習風景

 サモア到着からチーム着任早々まではコミカルに描かれているが、おそらくこの部分は笑いというシュガーコーティングでポリネシア出身の監督が伝えたかったことが見えるように隠されているのではなかったのかと映る。異文化をどう捉え、受け止めるのか、と。

監督とジャイヤ

 往々にあるマジョリティが持つ意見の通り易さが正論と勘違いされる。
 もっとはっきり言うと欧米の当たり前が大手を振って歩く世界各地。

タビタ氏の説得

 タビタ氏がロンゲン監督に何度も尋ねる「しあわせを感じていますか?」
 タビタ氏は「1ゴール!」「1ゴールでいいんだ」と彼を説得する。
 試合に勝つことではなく、サモアチームが欲しいことは未だ手にしていない1ゴール

 タビタ氏夫妻が時にはカウンセラーよろしく彼のこころを解こうとする。
 監督との距離感を掴みきれなかったジャイヤは自ら監督に近づき、結果としてはチーム改善にも良い影響を与える。

サモアのシヴァタウ

 ラグビーでニュージーランド選手がハカを披露するようにサモアチームがシヴァタウを見せる。この時の性別を超えたジャイヤの姿が印象的だ。

 ロンゲン氏はサモアチームを振り返り、「インスピレーションに満ちたチームで、現代の試合で見られるものとは全く逆のチームだ。彼らの情熱、彼らは国に誇りを持ってプレーしたいと願うアマチュアだ」と評した。

 実話ベースであってもお伽話のように映るかもしれないが、作品を観ている間はハワイの島々を思いだしながらこころがとてもゆったりとした。
 深呼吸さえ忘れ秒で日々を戦っている人に南の島へ行く代わりに観て欲しい。少しだけ笑顔を取り戻せるかもしれません。

★★★★


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