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[「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと]

初版発行:2023年月18日
著者:村田慎二郎
出版社:サンマーク出版
ジャンル:一般

 今回、この本を甥っ子にクリスマスプレゼントとして択んだ。
 文章は平易で、避けて通られない政治が絡む厳しい医療現場ながらそれらが丁寧に表現され生徒が読んでも国際情勢をそこそこ読み取れる。
 また、彼が国境なき医師団に入団を決める過程も将来を悩む人には参考になるだろう。

 動画でクラシックコンサートを見る際に、「今、其処のアングルではなくて第一バイオリンを映して欲しかったのに…」ということがよくある。
 カメラマンが択んだアングルを強制的に見なくてはならない。
 実際のコンサート会場では指揮者が振り下ろすタクトの先から音楽が生まれ、そして、音が重なり合いながら流れる様がよく分かる。勿論、私が注視したい方向も自由に耳も目も傾け見ることが出来る。

 これに似たことが実家に帰った際に見るTVでのニュースで起こる。
 その現場で取材したこともない人が勝手に的外れなコメントを展開する。
 或いは、専門家は少なく解説者人材が偏っていることも多い。二番煎じ、三番煎じのニュースが流される。知りたいことが必ずしも放送されない。

 10代であっても自身でアンテナを張り情報を収集して欲しい、という考えでこの本を選書した。
 
 医療をまともに受けられない紛争地である患者さんに言われる、
「You are our hope」(*あなたたちは、私たちの希望なんだ)この言葉が著者村田氏を過酷な状況の中でも活動を支えていく。
 経験した人が伝えてくれる言葉には血が流れているようで、心に残る。

 引用:
 「日が沈んだあと、屋上から南側を見るとシリアのアレッポでは真っ暗な世界が広がる。電気の供給がなく、夜は空爆の標的にならないように、どの家もろうそくの明かりさえもらさないようにしているためだ。それは、空と地上の境目がまったくわからない、漆黒の世界だった。
 振り返って北の方角を見ると、トルコの街にはたくさんの明かりがついていて、まさしく平和そのものだった。
 国境を隔てて数キロメートルしか離れていないのに、この天と地ほどの差。まるで違う2つの世界の境目に、僕たちはいた。」*文中強調文字は著者

 国境なき医師団は知っていても、それは説明せよ言われると途端に困るほど人に伝えられるほど多くの情報を持ってはいない。
 こうして現地で活動されている方の肉声は、Wikipediaとも当然違う。知ったつもりの世界ではない。
 まだ若い甥っ子には断片的なニュースを追いかける一方で、時にはボリュームがあるその地で展開される記事やリポートにもアンテナを向けて欲しい。
 

 


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