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「BPM ビート・パー・ミニット」

原題:120 battements par minut
監督:ロバン・カンピヨ
製作国:フランス
製作年・上映時間:2017年 143min
キャスト:ナウエル・ペレスビスカヤート、アデル・エネル、アルノー・ヴァロア

 「BPM」は1分間の心拍数を表す、或いは音楽用語であったりする。
 昨日、これまでに観た映画の中にどの程度LBGTQ+Q作品があったのかチェックしていた際に幾つかレヴューしていない作品があったことに気付く。おそらく、この「BPM」は良い作品であった為、また、私自身も身内にも該当する内容ではないことから自身でももう少し内容を調べ直してアップする予定だったのだろう。

 公開の春、割りと早くに映画を観ていた。そして、同じ年4月末ロンドンへ行った時映画館にあったポスターを躊躇なく撮影する。やはり、2019年にもなって日本の意識は日本用ポスターに明確に表れている。

 「元気に満ち、仲間と戦うぞ」的なポスター。ゲイは全く匂わせもしない。

 擁護団体ACT UP Parisは、1990年代初頭エイズの流行と闘うために政府と製薬会社による行動を要求していた。まだ、確たる治療薬もなく、多少効果が期待できる薬も十分な数が提供できない厳しい時代の若者らの啓蒙活動を描いている。

 戦うためのその組織編制は馴れ合いでも、一時の気分で集った人々でもなく自身の命に関わった真剣な若者らだ。もはや誰かに委ねる時間さえない
人も居る。
 製薬会社関係者を招いての白熱した誤魔化しを許さない討論会の様子は、おそらく日本の大学生がすぐさま行動できるレヴェルとは考えられない。
 考える、納得がいくまで考える。そのための情報を「人聞き」でも「ネット」の誰が書いたかもわからないあやふやな情報も元にはしない姿勢。考える根本に「自己」がある。
 否定できない死の足音を耳にしながらも、躰だけではなく世間とも戦わなくてはならない1990年代の厳しさ。

 このパレードのように実際の心情はピンクでは表せない死と背中合わせのダークな色に包まれていながらも、人々がエイズに対して無知が故に持つ偏見への啓蒙を彼ららしいパワーで行う。

 それが作品タイトル心拍数BPM120の高揚でもあるのだろう。
 作品中打つビートはハウスミュージックの早いビート、白熱する討論会の心拍、愛する人とのセックスのビート、そして、喪失の哀しいビート。

 HIV・ゲイを間違った形で認識されたくない自己のために戦う、そのことと同等の力をこの悲しみ(HIV罹患)を一人でも減らす為に彼らはまだ見ぬ他者のために「行動」する。

 HIVに関してはニュース報道されない分、多少は正しい認識が伝わり始めたとしても性的指向に関しての道は宗教も絡みまだまだ穏やかな世界は遠いようにみえる。
★★★★
*今後観る機会がある時は「HIV」物ではなく「若者たちの」話としてご覧ください。

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