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アビスパ福岡VS鹿児島ユナイテッドFC~鹿児島遠征記~

第14節。甲府戦。シーズンの1/3が終了となる節目の試合。

レベスタの代わりに使われてきた博多の森陸上競技場とひとまずお別れとなる試合。

ここまでホームでわずか1勝。ゴールすらもこの1試合でしか挙げられていない。

何としても今日こそは。

そんなサポーターの期待を背負って行われたゲームは覇気もなく0−3の完敗だった。

ブーイングすらも起らないシラけた雰囲気のホームスタジアム。

「まだ戦術の浸透には時間がかかる。仕方がない」

悔しさを呑み込んでスタジアムを後にした。今季何度目だろうか。


翌日。たまたま知り合いが試合を見に来ていたらしく厳しい声を貰った。

「全然面白くなかった。負けているのにダラダラして勝つ気ないのか」

チームをずっと追っかけて様々な事情を知っている人なんてごく一部。

勝つこと。観客を楽しませること。

それが出来なければ人もスポンサーも増えない。離れていくだけ。


悔しい想いのまま1週間が過ぎた。


そして第15節。アウェイ鹿児島ユナイテッドFC戦当日の朝が来た。

正直DAZN観戦とも迷った。

だが鹿児島なら行けないことは無い。何よりこんな時こそ俺が行かなくてどうする。そんなサポーター特有の謎の義務感に後押しされて鹿児島へ車を走らせた。

3時間後。戦いの地白波スタジアムに到着。

早速チケット売り場に足を向けた。

「ビジター席1枚!」そう言おうとした矢先張り紙が目に入る。

「ビジター席は完売しました」

800枚ほど発見されたビジター席は既に全てアビスパサポーターの手に渡っていたのだった。

ふと周りを見渡すとビジター自由席が買えなかった為かメインスタンドの入場列には鹿児島ユナイテッドサポーターに混じって多くのアビスパサポーターが並んでいるではないか。

こんな状況でも1000人くらいのアビスパサポーターが何らかの手段で鹿児島まで来ている。胸が熱くなった。

自分もご好意でビジター自由席のチケットを余らせていた方から譲っていただきようやくスタジアム入りすることが出来た。

早速コアサポの近くに陣取り選手入場を待つ。

しかし暑い…。まだ5月だというのに異常気象だ。

いよいよウォーミングアップの為に選手が入場してくる。

「今日こそは頼むぞ!」

鹿児島まで来た気合の入ったサポーターによる熱いチャントで選手を迎え入れる。

良い雰囲気だ。

特に怪我で戦線から離脱していた石津大介と今季初スタメンの吉本一謙には熱い声援が送られる。

それに答えエンブレムを掴みサポーターを煽ってくる吉本。

今日はやってくれそうだ。

鹿児島ユナイテッドFCにはかつてアビスパに在籍していた選手が3人いる。

堤俊輔。牛之濱拓。中原秀人。

しかも3人ともただ在籍していた訳ではなくそれぞれ7年。5年。4年とそれぞれ長い期間在籍しておりサポーターからの思い入れが強い選手ばかりだ。

当然3選手の選手紹介の際には惜しみない拍手が送られた。


そんな試合前から見所が多い試合もいよいよキックオフ。

アビスパは篠原を右SBで起用というサプライズを仕掛けてきた。これは篠原がアビスパ加入後初の起用法。前節少しは上手くボールが回るようになった田邉草民と鈴木惇のダブルボランチを選択。

4−2−3−1という布陣。

対する鹿児島も0トップに本職は中盤やSBの酒本を置く奇抜な4−2−3−1で迎え撃ってきた。

前半は21分石津のボレー。35分ドンヒョンのヘッド。41分松田力のヘッドと3度決定機は作ったものの決めきれず。

復帰した石津大介の躍動が目立った。

石津怪我後は間で受けられる選手が草民くらいしか居なかった。しかしその役割をできる選手が帰ってきたことで草民をボランチに回せるし、草民よりゴールに直結する仕事ができる。彼の復帰は大きい。

吉本も気合が入りすぎて17分でカードを貰っていたが、跳ね返す力だったり統率力で持ち味を発揮していたように感じた。


そして後半19分。ついにその瞬間は訪れた。

城後のパスカットから前川が縦パス。ドンヒョンがキープするもタッチラインを割る。

しかし相手陣形が整ってないと見るや石原がボールボーイにボールを早く渡す要求。素早くスローインを入れる。

それを受けたドンヒョンがファーにクロスボールを蹴る。

ファーでフリーで待っていた松田力が飛び込んでくるのが見える。

一瞬時が止まる。

松田力のヘディングがゴールネットを揺らす。

一目散にエンブレムを掴みながらサポーターの元へ駆け寄ってくる。

思わず身体が動き柵前に俺も飛び込む。

選手達が駆け寄ってくる。サポーターの圧倒的歓声。

何と素晴らしい瞬間だろうか。

たったひとつのゴールだけでこんなにも喜べる。

気持ちを共有できる。

勝てない時期。得点すらも入らなかった時期を経験したからこそ味わえる歓喜っ…!愉悦っ…!

この得点を絶対に勝利に繋げなければいけない。

流れを変えるためには勝利するしかないのだ。

応援にもより一層熱が入る。

途中投入された北島祐二が得意のドリブルで積極果敢に仕掛ける。頼もしいルーキーだ。

最後には實藤を投入し逃げ切りの体制を整える。

そして遂に待ち望んでいた歓喜の瞬間。

アウェイ愛媛戦以来の5試合振りの勝利。

大いに湧くビジター自由席。この瞬間の為に鹿児島に来ていた。

周りの人達とハイタッチをする。知らない人同士であろうとお構い無しだ。

ここに居るのは皆アビスパ福岡を愛する仲間だ。


サポーターの元に駆け寄ってくる選手達の憑き物が取れたかのような明るい表情。

これを見るだけで幸福感に包まれる。

挨拶を終え帰って行く選手達の背中もどこか誇らしげだ。

そしてインタビューを終えたヒーロー松田力がひとりサポーターのもとへ。

これまでの全15試合でフル出場。最もピッチで走ってきた男。

試合に負けた後には最も悔しさを表に出してきた男の第一声。

「勝ったぜーーー!!!」

歓喜の雄叫び。気持ちを前面に出してくれる選手は博多のサポーター好みだ。

今一番決めて欲しかった男の決勝点。そしてゴール裏での挨拶は格別。

更には牛之濱、中原、堤もゴール裏に挨拶に来てくれた。

ドリブルのキレが増し90分タフに戦える選手になっていた牛之濱。

前目のポジションで使われるようになり、主将も務めるようになった秀人。

全試合フル出場していたものの失点に絡み悔しそうだったが挨拶に来てくれた堤。

それぞれの選手がアビスパ退団後も頑張っている。

それにエールを送るサポーター。素晴らしい関係性。

名残惜しくもスタジアムを後にした。

帰りには鹿児島ラーメンをいただいた。くろいわラーメン。

あっさりで美味しかった。語れるほどグルメではないので詳細なレポートは省略。

しかしアウェイならではのグルメを満喫して帰るのもアウェイならではの楽しみではないか。

しかも勝利後の食事はより一層美味しく感じられる。


次節のレベスタ開幕となる大宮戦に向けて非常にいい勝利となった。

レベスタ開幕ではアビスパ福岡のバンディエラ城後寿の400試合達成セレモニーも行われる。

ここから上昇気流に乗って行こう。Go for it Avispa!

#アビスパ福岡 #鹿児島ユナイテッドFC #Jリーグ #J2

アウェイでバモるサポーターがひとり増えます