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ポカスタの情景 〜 四国ダービー 2024

鳴門大塚スポーツパーク内にあるポカリスエットスタジアム(通称ポカスタ)は、とても綺麗な空模様が見られる球場です。2025年5月3日に行われた愛媛FCとの四国ダービー当日(J2リーグ第13節 13:13キックオフ)、いつも以上に心象的な空の景色を魅ることができた。撮影した写真の一部を是非お見せしたい。併せて、私が普段、風景撮影で使っているテクニックもご紹介したい。

05:45頃の朝焼け

(絞り優先モード, F5, 1/800秒, ISO 200)

4年ぶりの四国ダービー。居ても立っても居られずスタジアムに着いたのは朝5:30前後。これはさすがに早すぎたと思ったら、バックスタンドや北スタンドの待機列にはすでに5-6組の常連さんが並んでいた。この日は13:10キックオフ予定。通常、KOの6時間前に待機列の形成なので、7:10に来ればいいのに、みんな「いらち」やわ。僕を含めて(笑)

日の出は5:10だった。太陽は昇り切っておらず、空にはまだ夜の蒼さが残っていた。朝焼けの明部。夜空の暗部。両者の境界線が美しいグラデーションになっていた。ちなみにオリンパス(現OM SYSTEM)のOM-Dシステムで撮影してます。このカメラは「オリンパスブルー」と言われる程、青の表現力がとてもエモい。ポカスタの風景を撮るために、キヤノン→富士フイルム→ニコンと様々な機材で試行錯誤した結果、ここ2-3年はOM-Dに落ち着いています。マイクロフォーサーズならではの被写界深度の深さ、OM-Dの彩度の出方が風景撮影にマッチしています。また、軽量コンパクトで防塵防滴性能に優れたところもJリーグ観戦に適していると思います。

10:30頃の空模様

(絞り優先モード, F8, 1/1000秒, ISO 200)

待機列の整理が10:40だったので、シート貼りした場所に戻った時のカット。なんとも言えない空の表情だった。まるで藍色のように深く濃い「徳島ブルー」の青空。そこにたなびく白雲が幾重にも織り重なって流れていく。ハッとする情景でした。徳島の空は本当に美しく誇らしい。いつも心からそう思う。ポカスタの美しさをもっともっと上手く表現できるようになりたい。ヴォルティスの応援を始めてから10数年。この想いが年々強くなります。

1枚目の写真は、朝のふわっとした雰囲気を出すため、F5まで絞りを開けて撮影。このカットは逆にF8まで絞り込んで撮影しています。一番遠くにある青空を被写界深度の中に収めるためです。マイクロフォーサーズでここまで絞るとパンフォーカスになるので、手前にあるバックスタンド構造物から空や雲のディテールまでくっきり解像できています。こういうカットではボケ表現は要らないので、迷わずF値を上げます(回折現象が起きない程度にF8~F11)。またC-PLフィルターをレンズに装着することで、光りの反射を抑え、彩度とコントラスト、ディテール等を出やすくしています。

(絞り優先モード, F8, 1/2500秒, ISO 200)

これもバックスタンドの待機列付近で撮ったカット。蒼天に映える白雲。まるで絹の糸が織り重なるようにたなびいていた。これまたエモい光景だった。撮り損ねたけど、上空を通過する旅客機が飛来し、これまた素敵な絵柄だった。航空写真家だったら絶対に押さえておきたいカットだろう。ため息が出るほどの美しさだった。

これもパンフォーカスにするためF8まで絞ってます。マイクロフォーサーズは所謂フルサイズと呼ばれるセンサーと比べると、ちょうど半分の画角になる。F8だと35mm版換算でF16相当の被写界深度になるので、画面全体にピントが合う。もうひとつのポイントは露出。空の中央部に明るさを合わせ、シャドー部となる木立の領域は敢えて黒潰れさせた。画角の中で主題となるのは空と雲。副題である木立は暗く潰して、視線を明るい上空に誘導させる。西洋絵画でよく使われる手法ですね。「視線誘導」と言います。デジタル写真も究極は「絵」だと思っています。私はかなり絵画の技法を取り入れています。

12:15頃の空模様

(絞り優先モード  F6.3  1/1250秒  ISO 200)

これはキックオフのちょうど1時間前。ピッチ内アップが始まる直前、ピッチへ散水される。これもシャターチャンスのひとつ。この日は、メインスタンドの上空が特徴的だった。白雲が、滔々と流れる河のように、幾筋も重なり合って、とにかく美しかった。空の蒼さ。ピッチの緑。まさに青と緑の贈り物。これはポカスタで写真を撮る時の重要なテーマです。クラブカラー。クラブアイデンティティーなんで。とにかく私はこの画角に魅せられています。

ポイントはF6.3に絞りを戻していること。パンフォーカスにしながらも、ピッチの明るさと流れる雲をフワッと表現したかった。もうひとつの理由はプライバシー保護。スタンドの観客が個人特定できないように敢えて解像感を下げています。また陰になっているスタンドのシャドー部が潰れるように露出合わせしています。解像感を下げ、敢えて暗くすることで、観客のプライバシー保護を狙っています。スタンドにいる観客個々人に肖像権があるので、そこを注意しない訳にはいきませんよね。個人特定できないよう解像度を落としています。また、雲の流れる方向を追っていくと、メインスタンドの奥の方に視線と焦点が自然と合いますよね。絵画ではこれを「消失点構図」と呼びます。視線があるひとつの結節点(消失点)に誘導される。そのために白雲がいい役割を果たしてくれています。

12:53頃の空模様

(絞り優先モード  F4  1/3200秒  ISO 200)

このカットは前半が終わる頃。太陽の位置はまだ高く、真上から光りが降りてくるような環境だった。陰の部分が黒潰れし過ぎているので、F4まで絞りを戻して明るくする。するとシャッター速度が1/3200秒と超高速になる。これだとピッチ上の選手が歪んだり、像が流れたりしない。一瞬を切り取るために敢えて絞り開放にした。これはスポーツ写真にも使える手法ですね。

初めて一眼レフを購入して撮影を始めたのが2014年。以来、10年の歳月が経った。ようやく最近、思うような写真が撮れるようになり。何が自分を駆り立てるのか。それはサッカーも風景も一度として同じ情景はないということ。一期一会という言葉がぴったり。その場にいて、ヴォルティスの選手とポカスタの景色を撮る。それが自分のルーチンになってしまって。これが僕のプライドとアイデンティティと愛情を表現する方法なんだと。変わってるよね。でも徳島の美しさを撮り伝える。この気持ちは不変。やり続けたい。

以上、使用した機材は、

  • OM-D E-M1X

  • M.ZUIKO ED 8-25mm F4 PRO

注意

掲載した写真は、特に断りのない限り、すべて私が撮影したものです。目的の如何を問わず、無断使用、二次利用を禁じます。よろしくお願い致します。

The pictures shown here are taken by myself unless otherwise noted. Copyright is revered. No secondary use of the pictures are allowed. Thank you for your understanding.