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ぶらぶら自転車

気がついたら3日間、一歩も外に出ていない。あまりにも不健康だし、座りっぱなしで腰も痛いので、自転車に乗ってあてもなく走ることにする。今日は気温も高くないし、日も照っていないので走っていて気持ちがいい。

20分も走れば見慣れない町に出る。下校中の小学生をたくさん見る。空のびんを持ち上げて熱心に見つめながら歩く子がいる。本来であれば夏休みの筈なのに、コロナの影響でまだ学校がやっているのだと後で気づいた。

緑の多い神社の前にさしかかる。セミが大合唱している。道端で腰を伸ばす運動をしているおじいさんがいる。休憩中の工事の人たちが、何もしゃべらずボーッとどこかを見ながらタバコを吸っている。ドアと窓を開け放った喫茶店で、おばあさん2人がお茶を飲んでいる。自転車を停めてお店に入りたい気分になるが、自転車のスピードだと迷える時間が少ないので、すぐに通り過ぎてしまう。パン屋の前を通る。おばあさんがパンを選んでいる。知らない町のパン屋でパンを買ってみるのも良いなと思いつくが、これも通り過ぎる。

知らない町を走っているが、一瞬懐かしい匂いが漂ってくる。子供の頃の友達の家の匂いだったか。よく思い出せないが、嗅いだことのある匂い。すれ違った知らない人に会釈される。こちらも会釈する。知っている人だっけと思い出そうとするが、知らない人だった。

帰り道にさっきのパン屋の前をまた通る。やっぱりパンを買いたくなったので、お店に入る。行きで見かけたおばあさんがまだいてびっくりした。誰かとスマホで話しながら、袋に入ったパンを端から持ち上げ持ち上げして、吟味している。お店の人が見当たらない。なんとなくしょんぼりしてしまって、何も買わずに店を出る。

また少し走って、見慣れた場所に出る。すれ違った女性が電話で「若い血が…」と話している。結局たまに行くパン屋でパンを買って、家に戻った。


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