地方企業に求められる責任

 地方の働き方を見て感じることがある。それは、社員の成長に対する意識の低さだ。東京で働いていた頃、前職の代表は「社員全員の総合値が会社の力」だと言っていた。そのため社員教育には熱心で、大変な事もあったが成長を感じられる環境があった。しかし、淡路島で度々感じるのは、「社員=バイトの延長」、「成長よりも今ある仕事(それも単純なものが多い)を進めていく人」という印象だ。

 理由として第一次産業や観光業など現場仕事が多いことが考えられる。黙々と体を動かして作業を進めていく働き方をしている人の多で、移住して驚いたことの一つだ。また、外に出て話をするのは社長だけで仕事熱心な名物社長が引っ張るという会社が非常に多い。社員数が都会の中小企業より少ない事に起因していることもあるだろう。しかし、何歳になっても最前線でアクティブに戦う経営者をよく目にする。

 そんな中、Amazonのジェフ・ベゾス氏(58歳)がCEOの座から退いたニュースを見た。後任のアンディ・ジャシー氏はベゾス氏とは異なった角度で会社経営を行なっている。淡路島で58歳はまだまだ現役バリバリの部類に入る。もちろんCEOを退いたからと言って何もしないわけではないだろうが、このタイミングでのCEOの交代はインパクトがあった。

 私自身小規模ではあるが経営をしていく中で感じることは「仲間の実力の総合値が我々の実力」という考え方である。淡路島に来てホームレスから始まり2年半かかって今の状況まで辿り着いた。再びホームレスになっても戻ってこれる自信が付いた。一緒に動いている仲間たちがまずは今いるところまでいつでも戻って来れるようになることが何よりの安定であり発展であると信じている。自分がいなくても大丈夫と思える組織構造を作っていきたいとAmazonのニュースから感じた。もちろん駆け出しでスーパー小規模事業者であり、目標のために今後も挑戦を続けていく。その中で私を含めた仲間の成長が一番のキーと捉えて進んでいこうと改めて感じた。

 大学卒業や都会での就職をきっかけに島外へ移住した人の中で、淡路島に戻って暮らしたいと考えている人は多いという調査を目にした。しかし戻って来れない理由は仕事がないということ。厳密にいうと仕事はある。常に人手不足だ。就職したい場所がないのだ。都会で身につけた技術を活かせるような職場探しは困難な現実がある。

 地方創生の鍵は「企業」にあると思う。人が育たなくても儲かる仕組みにあぐらをかいている限り魅力的な地方は作れない。私ができる事として、「地元の子どもたちや都会の若者が加わりたいと思える地方企業を作る」があると信じている。都会で修行して淡路島に帰ってくるといった今までとは違った発想のキャリアを生むことが現在の国家課題の解決に繋がっているのだと思う。


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