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 小さな星が呼吸して、夜空の瞬きが音になる。君が虚空に十字を切って、僕は、図書室でめくったページの、色あせた薄さに思いをはせる。この世界に物語が必要なら、数多のそれらから君と僕だけ切り離されて、この校庭がひとつきりの、プラネタリウムになってしまえばいいと思う。そうなっても切符は僕に与えられるだろうか、与えられなくても君となら、何もない旅路を歩めるだろうか、今夜だけのドームの中で、現実的な静けさの中で、僕はぼんやり考えていた、見たことのないほど細い君の背中の前で、考えていた。

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