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「リボ」が家族の間で大流行した話

10年ちょっと前のことだろうか。「リボ払い」が我が家で一大ムーブメントを引き起こした。今日は、リボ払いの話。
※怖い話ではありません。


CMに浸食される

テレビをのんびり見ていると、かわいらしい声が耳に飛び込んできた。
「リボッ」
「リボッ」
そこにいたのは小さいイノシシ。ウリボウだった。女性と一緒にストローでジュースを飲んでいるなんか小さくてかわいい生き物。

「やっほー!」「リッボー!」
ある日は女の人とウリボーが山の頂上で叫んだり。

「オハヨー」「リボー」
あるときはインコに言葉を教えたり。

リボが気づかない間に我が家の日常にしみ込んできた。
「リボッ」
つい無意識に口に出してしまう。
「リボッ」
するとたいてい誰かが返事してくれる。

高校生でカードはまだ持ってなかったから、リボの知識はゼロ。こうして、リボってよく知らないけどかわいい! ってイメージが自分の中で定着した。


豹変した先生

僕のクラスの担任は家庭科の先生だった。めちゃくちゃしっかりしているけど、変なことをしなければやさしい。そんなたよりになるおばちゃん先生だ。

家庭科の授業では姪っ子のかわいさを満面の笑顔で語る、そんな慈しみのイメージだった先生。しかし、この日の授業は違った。

授業が始まるなり、いつもの笑顔が引っこんだ。
険しい顔で口火を切る。

「リボ払いをしてはいけません!」

リボッ!?
思わず声が出そうになった。頭の中ではウリボーが驚いてぴょんぴょんジャンプ。

「クレジットカードも後払いなので心配はあります」
「信じるべきはデビットカードです!」

いつにもなく熱を入れてまくしたてる先生。どうしたどうした。

でも、話を聞いて理解した。リボ払いというものは、放っておくと利子がかさんでいく恐ろしい仕組みだったのだ。
ということは、あのウリボーは。あのかわいいウリボーは修羅に誘う使者だったのか。

衝撃だった。あのかわいいCMにそんな裏があったなんて。今振り返ると、社会の恐ろしさを最初に感じたのはこの瞬間だった。


やっぱり信じられない

家に帰る。頭に流れるのは修羅の顔をした先生とウリボーの姿。

「リボ……」

思わず声が出る。だんだん疑問が出てきた。あんなヤバいものがCMで流れているっておかしくないか。もしかして先生がまちがっているのでは……?

テレビをつける。

「リボッ!」

ウリボーだ!思わずテレビにしがみつく。

女の人が出費を迷っている。
「リボッ!」
そこに現れたのはウリボー。
「リボ払いなら、月々一定になるからお金を使って大丈夫!」
ナレーションとともに画面が変わる。
そこにいたのは、バカンスを楽しむ女性とウリボーの姿。
めでたしめでたし。

今ならわかる。お金、後回しにしただけだよね。
理解した。やっぱり先生が正しかったんだ。


ありがとう先生

こうしてリボ払いの恐ろしさが身にしみついた。数年後、大学生になりカードを作った。まっさきに確認したのはリボ払いになっていないかの確認。

今思うと先生には感謝しかない。おかげでリボ地獄にハマらずにすんだよ。


あれから10年以上の月日が流れた。そういえば、ウリボーは今どうしているんだろう。検索してみると、なんとウリボーは今も元気だった。

うれしいけど素直に喜べないような、なんとも言えない気持ち。


最後に、これだけ覚えてほしい。
リボは怖い。でもウリボーはかわいい。

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