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Jリーグ第5節 鹿島 vs 磐田 マッチレビュー

中断期間が明け、待ちに待ったリーグ再開。
鹿島はリーグ3連勝がかかったアウェイ戦、
対してホームに迎えた磐田は今季初勝利を目指す。

鹿島  1  -  1  磐田
84' レオ・シルバ    46' 松本

磐田に乏しい連動性とプレーの意図

立ち上がりから磐田はボールを保持できる時間があるものの、
効果的なビルドアップと崩しを繰り出せなかった。

鹿島は前線から激しいチェイシングをする事は無く、
ハーフウェーライン付近までボールを運ばれてもお構いなし。
中央を閉めつつサイドに誘導し、WBやシャドーにボールが入ると
背後や側面からアプローチして奪う、札幌戦に似た守備を行った。
磐田のシステム自体は札幌と同じであり、
(選手の特徴、位置取りは大きく異なったが)
守備のコンセプトに関しては達成できていた時間が多かったように思える。

磐田が序盤鹿島の守備を崩せなかった大きな理由は2つ。
①チーム全体でボールの運び方、崩し方に意図が見えなかった
②選手間のポジショニングに連動性が欠けた

このあたりが大きかったように思える。

①に関してだが、確かに磐田はボールを回す事"だけ”は正確であったし
鹿島のプレスを掻い潜って前進できる場面もあった。
しかしボールが動くだけであって、パスを送る意図や目的を感じなかった。
なぜそこへパスを出すのか、運ぶのか____
あくまでボールを素早く回すのは、
ゴールを奪う手段であって目的ではないはず。
しばしばパスを回す事が目的となり、攻撃が行き詰ってミスを犯すシーンがあった。

②における問題の原因は単純ではないかもしれない。
主力に負傷者が出ていつもとは違うメンバーでの試合であったし、
2センターハーフの一角には新加入、リーグ初先発の森谷を起用している。
森谷は随所に気を利かせてポジショニングを調整したいたものの、
田口の孤立をかえって招いた側面もある。
更には当初1トップに大久保を据えたものの、
①の問題を解決するためか大久保は中盤まで下がって組み立てに参加したり、
システムや選手配置を状況に合わせ修正、変更もした。
本来のチームのプレー原則とは違った試合だったのかもしれない。

①、②どちらもハーフタイムを挟んで改善の兆しが見えた。
特に②に関してはかなり整備され、攻守に迫力が増した印象。
先制点に繋がった場面も、サイドとエリア内で局地的な数的有利を作った結果得られたものだったはず。
大久保の折り返しが狙ったものかはわからないが、
決して偶然という言葉で終わらせるにはいかない鹿島の失点だったと思う。

磐田を悩ませるレアンドロ、土居のカットイン

鹿島の攻撃において主力を担ったのが両SHのカットイン。
サイドに張ってボールを受けようとしつつも、
機を見て磐田のWBの背後のスペースや、CBとの間を抜け出して
多くのチャンスに関わっていった。
特にレアンドロの突破に以前の凄みが戻ってきたのが幸い。
決定機を外す癖は相変わらずだが、頼もしい存在が帰ってきている。

磐田の3CBはゴール前での強度、シュートへの反応などは素晴らしく、
いかなる場面でも体を投げ出して守る姿勢は流石。
とはいえ高い位置での守備対応やカバーリングでサイドへ釣り出されると、
途端に脆さが見え隠れする印象も。
それだけに鹿島の両翼がカットインして生み出すカオスは効果的だった。
そのカオスで決めきれたら良かったのだが。

結果的に前半を無失点で抑えられた磐田に、自信と流れを与えた可能性は否定できない。

待望の先制点がもたらした磐田への影響

後半46分、待望の先制点を磐田・松本が奪って見せた。
鹿島からすれば良いゲームを見せていただけに意外な失点だったが、
この1点が試合を大きく左右したように思える。
この先制点を守るため、早々に磐田は重心を下げて守備に入ったからだ。
勿論カウンターの狙いをもち、攻撃の手を全く持たなかったわけではない。
が、チーム全体が「失点をしないこと」をテーマにシフトした。

磐田は5-4-1と完全に重心を後ろに置き、
最前線にアダイウトンのみを残して試合を締めくくろうとした。
何が何でも勝利が欲しい、そんな意思がチームから感じとれた。

この状況に対して鹿島が素晴らしかったのが、
焦らずにボールをじっくりと左右に振って磐田に消耗を強いた事。
決して短絡的なプレーに終始せず、
じっくりと磐田の陣形を見極めつつ隙を窺っていった。
結果、86分にレオ・シルバが中央をワンツーで抜け出し
技ありのゴールを奪い取って見せたのだが、
失点のシーン、磐田の選手らは序盤見せていたゴール前での鋭い寄せが消えていた。
早い時間帯から高い集中力を以て守備に徹した事が、
選手らに多大な損耗を与えていたのだろうか。

とはいえこのゴールはレオ・シルバの個人がもたらした側面が大きく、
鹿島が敗北していてもおかしくはなかった。
最終的にゴールを奪ったのだから、”鹿島は試合巧者だった”と言う事も確かに出来るのだが....手放しに喜べる内容だったとは言いにくい。
良い流れを作り出せている時に決めきる必要性を感じる試合だった。

安部に成長を求めたい"プレーの幅"

先発から外れ、71分にレアンドロに代わりピッチに出た安部。
背番号10にかかる期待度は大きいのだが、
その期待に見合った活躍を感じるかと言うと難しい。

各チーム彼の対応はしっかりと研究しており、
彼が得意な縦への突破やカットインなどを消してきている。
オンザボールで違いを作り出すことが彼の活きる道だったのだが、
今季はうまくいっていない時間帯も多い。
彼自身、今のプレーには全く満足していないはずだ。

とはいえ彼のスピードと技術が相手SBへの抑止力となったり、
左サイドでコンビを組む安西の攻撃性能を発揮する要因だったりもする。
一概に安部の出来を結果だけで判断することはできないのだが...
やはり彼にはエースとして攻撃を牽引する存在になってもらいたい。
今はとにかくプレーの幅、選択肢を増やし、
様々な局面で自身の能力を最大限発揮できるよう努力をする時期だと思う。
たとえば逆サイドからのクロスをゴール前でコントロールし、シュートをする一連の流れ。
開幕から徐々に定着しつつあるシーンで、再現性も高い。
シュート精度に課題は残るが、一皮むければ非常に魅力的な武器だ。

周囲のサポートを利用しつつ、安部自身のスキルを発揮できるように
なれれば理想的かもしれない。
流石にアザールほどのプレーを求めるのは酷なのだが、
彼のプレーモデルに近しい特徴は持っているはず。
周囲を活かし、自分を活かすようになれれば、彼は最早Jで止められる事はないのでは?

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