業界未経験者の宇宙ビジネス 第三回

こんにちは、アクセルスペースCPOの中西です。
今回は第三回ということで、実際に我々がビジネスにおいてどのように営業しているのかについてお話ししたいと思います。

営業の手法はいろいろとありますが、大きく分けるとインバウンドとアウトバウンドに分けられるかと思います。アクセルスペースではインバウンド、つまりクライアントよりお問合せを頂くことが多いことが特徴です。これは宇宙ベンチャーの中では2008年設立と歴史が長く、代表の中村を中心に長年行政も絡むさまざまな団体や分科会で活動しカンファレンスなどで登壇を行ってきた賜物ではあるのですが、「衛星画像を使って自社で抱える課題を解決できないか」「よく分かっていないが、新規事業として衛星データの活用ができないか」など様々なお問合せを頂いています。案件の確度やお客様の知識も様々ですので、それぞれのお問合せに併せて我々もご説明やご提案を考える必要があります。
衛星画像についての知識があり、使用目的も明確なお客様からのお問合せに対しては、営業だけではなくプリセールスメンバーやシステムエンジニアも同席してより技術的な詳細を詰めていきます。過去に衛星画像を使用したことがあるお客様でも、我々の衛星画像の仕様(分解能、バンド、撮影頻度等)を理解いただいた上で最適なご利用方法を検討頂く必要があります。
衛星画像のご知見がなく、メディア等でアクセルスペースや衛星画像について知って頂きお問合せを頂くケースもあります。比較的大企業のお客様からのお問合せが多いのですが、この場合は「衛星画像とは何か」からご説明を開始します。また国内外での具体的な衛星画像の活用事例をご説明し、お客様の事業展開やアセットを共有頂きながら協業として何ができるか知恵を絞っていきます。こういったケースは議論に時間がかかりますし、また決して具体的な案件組成の確立も高い訳ではありません。ただこのような議論をしたお客様とは長い期間での関係性を構築できますし、仮にそのタイミングでは形にならずとも、お客様の頭の片隅に我々や衛星画像のことが残っているので、後々ふとしたタイミングでお問合せを頂き思わぬビジネスになったりすることもしばしば。なによりそのような議論が、個人的に私は好きでして。これまで思いつきもしなかったビジネスアイデアに突き当たったり、全く知見のない業界の実情を教えていただいたりと、つくづく代わり映えのしない蛸壺であーだこーだやっていても仕方ないなと気づかされます。またほとんどのケースでお客様が我々の事業に可能性を感じ、何とかビジネスにできないかと考えて頂けるのが本当に嬉しいのです。まだまだこれからの事業ですし改善しなければいけない点も多いのですが、宇宙ビジネスに興味を持つ仲間が増えていくようで日々の苦労が少しだけ報われるようなそんな気持ちにさせてくれます。業界としても裾野を広げ、ユースケースを増やしていく必要がありますので中長期的にも重要な活動だと考えています。

少し話がそれましたが、当然アウトバウンドの営業も行っています。現在全世界で50以上の販売パートナー(販売代理店)と販売パートナーシップ契約を締結しており、彼らと連携してそれぞれの地域の案件獲得を進めています。また現在自社の国内外営業メンバーもダイレクトの営業活動も行っております。それぞれの棲み分けですが、前者は販売パートナーの知見や経験をベースに衛星画像の既存ユーザーがメインの対象であるのに対し、後者は潜在ニーズの仮説をもとに新規ユーザーを開拓していくことがメインである違いがあります。
販売パートナーとの営業では、お客様も販売パートナーも衛星画像についてご知見があるので比較的技術的な内容が焦点になることが多く、そこがクリアされれば短期間で契約締結して画像提供を開始するケースも多いです。技術的な内容で詳細な議論や改善が必要になってくると、プリセールスメンバーやシステムエンジニアも参加して議論を進めていきます。
営業がダイレクトに営業するケースでは、例えば「農業」での衛星画像利用を例に挙げると…

  • どのような用途でメリットを訴求できるか

    • 農作物育成解析による収量拡大・安定化?

    • 営農効率化による省人化?

    • 圃場の作付け判別に農地パトロール代替?

    • 農地の違法転用検知による行政コストの削減?

  • だれに売り込むか

    • 農家?

    • 農業法人?

    • 飼料、種子、農薬メーカー?

    • 農業工作機メーカー?

    • 地方自治体?

    • 関連官公庁?

  • どのようにファーストコンタクトするか

    • コールドコール?メール?会社問い合わせフォーマットに連絡?

    • LikedIn等のSNSからコンタクト?

    • ステークホルダーの関係者を探す?

    • 関係するイベントやカンファレンスに参加してネットワーキング?

  • どのように売り込むか

    • 衛星画像とは何かまず理解してもらう?

    • 具体的な先行導入事例とそのメリットを強調する?

    • 「スモールスタートが可能」であることを訴求?「行政を絡めた地元農業での衛星画像活用スキーム」として大きな構図として見せる?

    • 「宇宙」を訴求するか?「DX」を訴求するか?

    • 「日本発宇宙ベンチャー」を訴求する?「グローバル展開」を訴求?「有名企業」との取引実績を訴求?「先進性」を訴求? 等など

図:農作地におけるNDVI解析
画像を単純に目視で農作物の状況を解析するのではなく、センサーの特徴を活かし波長光の反射率を解析することで植物の光合成の活性度を図り、農作物の育成度を定量分析することが可能


のようなことを考えながら提案と議論を進めていきます。これはお客様や業界ごとにもっと細かく考えていくのですが、上記でイメージを掴んでもらえれば幸いです。

営業活動は日々試行錯誤しながら最適な手法が何かを考えています。インバウンドにしても、農業や防災や林業など他の分野のカンファレンスやイベントに積極的に参加して認知を上げていく必要がありますし、デジタルマーケティングも強化しなければなりませんし、やれることは色々とあります。アウトバウンドも根性論ではなく(行動量はもちろん重要ですが…)、より効率的に我々のプロダクトを必要とするお客様にリーチできる方法を考えていいます。気を抜くと同じ事を繰り返すだけになっていたりするので、定期的に活動を見返すことも有用ですね。
個人的には、最近業界の大御所やキーパーソンに話を伺うのが改めて重要だと感じています。敷居が高そうに感じるかもしれませんが、大抵業界の若手(私は若くありませんが)が礼節をもって「勉強させてください!」とお願いしに行けば親身になってご教示頂けます。デスクトップサーチや文献での勉強ももちろん重要ですが、対面でヒアリングするメリットは疑問に対するダイレクトな回答を貰えることで、そこでダイレクトな回答がもらえない場合は、ダイレクトな回答ができないその背景についても示唆を得ることができます。またそれぞれの方が重要だと思っているポイントをサマリーとしてお話し頂けることも、業界知見のインプットにおいてかなりのショートカットになると感じています。

話が発散してしまいましたが、アクセルスペースでは上記のような営業で日々事業を拡大しています。少しでも興味を持って頂いた方は是非下記よりご連絡をお待ちしております!
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