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また歩ける日まで~PTのリハ徒然草~ 受傷から180日経って

あの受傷してからの出来事が、時が経つほどに、逆に色あせることなく鮮明に、頭の中に浮かぶのは、不思議な気持ちがする。
そして、今更ながらに、あの滝を登っていた時は、明らかに正常な判断力に欠けていたと、いつの頃からだろうか、思えるようになった。

コロナ禍でも仕事は右肩上がりに順調、やりたいこともどんどん出来ていて、だから忙しくて忙しくて…の中で、3,4年振りに沢登りの師匠と共に1か月前に沢に行き、やっぱり沢はいいな!と活動再開した矢先のこと。
何事も不可能はない、というイケイケな思考になってしまっていたからだろう。

昔、バリバリに毎週沢登りやアルパインクライミングに師匠と出かけていた頃、台風一過で増水していたら面白いかな、とちょっと不謹慎な気持ちで登った、東京の南秋川水系・熊倉沢。
ロープを一度も出すことなく、核心部の滝も、一手だけ、水量があってファイト一発だったけど面白かったね、と難なく登攀。
その後は、沢の源頭に向かって、さほどきつい詰めあがりもなく、林の中の緩い傾斜を登ると尾根に出られて、ここは初心者向きでいいな、と思った。

そんな昔の記憶もあったから、いざ核心部の滝で、遡行図に残置テープがあると書いてあったのがなくても、うまくクライミングできたはず、と無理してしまった。

滝の左壁、数段登ったところにある、右の腰高の位置にあるわずかな1センチくらいのスタンス。そこにうまくのれれば、もう胸は滝の上に乗り上げられそうだった。ただ、手のカチホールドが全くなく、一旦クライムダウンして、もう一度ルート観察。下で待っている友達に、「もう一回チャレンジしてみて、ダメだったら、脇を巻こう」といって、チャレンジしてしまう。

しかも、右の腰高スタンスにはのれたが、もともと靭帯損傷してグラグラの右足だから、そこから足を完全に伸ばせない。右手で滝口をさぐると、ちょうど大岩の間に小さな5センチくらいのチョックストーンがはまっていて、上から押さえれば、カチッとはまって全体重を右手で引き上げられそうだったので、右手右足パターンだけど、いけそうだな、と乗り上げようと力を込めた。胸のあたりが半分くらい滝上に乗り上げかけていたその瞬間、滑落してしまった。

足が滑ったのか、それとも右手の石が外れたのか、それは分からない。
落ちる瞬間、ひっくり返ってしまわないように、岩壁に手足も身体も押し付けてザーッと落ちる。両足でバーンッと滝下の岩棚に着地する。尻モチもつかず、転びもせずなので、一瞬あっけにとられ、怪我してないか自分の身体を見た。
目線が足にいったとき、右足が靴が脱げたようになっていて、あれ?と一歩踏み出して右足をついた瞬間、激痛が走り、これは靴がずれたのではなく、骨折したんだ、と頭の中が、本当に、真っ白になった。この記事を書くのにキーボードを打っている手が、今でも震える。心臓もドキドキする。

すぐに、下で待っている友達の方を振り返り、「足が折れた」というと、二人は黙ってうなずいた。
そこから、手助けしてもらいながら、お尻と両手でいざって何とか下段の滝を下り、濡れたまま救助を待ち、最終的にはヘリで病院へ搬送してもらい、緊急で手術をしてもらったのだ。

11時半に滑落、14時過ぎに救助隊が来てくれて、病院に着いたのは18時頃だったか。手術が終わって病室に運んでもらったのは22時頃。
開放骨折のゴールデンタイムを超え、1週間くらい熱も下がらず、感染症でダメになるか心配だったが、何とか内固定術を11日後にしてもらい、その1週間後に皮膚移植をしてもらい、約1か月で退院。
受傷から52日目で、やっと荷重許可が下りたものの、皮膚移植や筋バランスで足がねじれてしまっていて、通院リハと自己リハで何とか歩けるようになるまで、やはり時間がかかった。杖ナシで歩けるようになったのは先月あたりからだから、やはり主治医の見立て通り、半年くらいかかったことになる。

そして、いざある程度歩けるようになると、仕事やら趣味のDIYや畑活動に時間を費やし、ついつい自己リハを怠るようになってしまった。

しかも、あれだけ痛い目にあったのに、また春うららになると、沢登りに行きたくなってしまうのだから、懲りない人。
せめてハイキングは行けるかな、と先週、整備された低山ハイキングコースを愛犬と歩いてみると、右足は小石を踏んでもグラグラ。まだまだ足首周囲の筋トレをしないと、と思い知らされた。

今週、2月にも右親指の爪周囲炎になったのが再発し、しかも今度はかなり腫れて膿も出ているし、足底腱膜もまた固くなってきてしまっている。
元通りにはならない、て頭では理解しているのに、長靴を1日中履いて作業したり、別宅に泊りがけでDIY作業をしに行ったりと、元通りな行動パターンになり、また感染症になってしまった。何とか作業できるようになると、またイケイケな思考に戻ってしまうんだな。

初心忘れず、一生リハビリな右足と共に、丁寧に生きよう!
備忘録として、noteに記します。

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