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ポルトガル語学習時は、是非カタカナを使ってください①

以前、Facebookで公開したお話です。noteで改めてまとめてみました。

カタカナを使った教え方

私のレッスンでは、カタカナを使ってポルトガル語の解説をしています。
ネイティブの先生方からは、反論を招くと思います。
しかし私としては、
「日本人なんだから、日本語で解説してくれないと理解できない」
という強い思いがあります。
それは私の幼少期の苦痛とトラウマからきています。

アルファベットを目で見て頭に入れていくことの苦痛

私がポルトガル語を習い始めたのは、 小学校1〜2年生の頃です。
母から「カタカナで読み仮名を書かないで」と厳しく言われ続けてきました。
その制限が、とっても苦しかったのです。

「日本人なんだから、日本語話者なんだから、
いきなりポルトガル語を読めって言われても、無理だよ!」

そう、無茶な話なんです。

そもそも私たちは、大前提として、アルファベット文字の文化じゃありません。
目に入れて読もうとすると、例えそれがどんなに簡単な単語でも、ストレスがかかります。

どんなに簡単なメニューでも、読むのは大変

これは大人になってからのエピソードです。
ブラジルでレストランに行った時、写真がないメニュー表を渡されました。
そこに書いてある単語はどれも簡単ですし、料理名も知っています。
ところが、1つずつその単語を読むことが、本当に大変でした。

日本語だと、文字の形を絵のように捉えて一瞬で理解できると思います。
母国語って、そういうものだと思うのです。
読書や勉強中ならまだいいかもしれませんが、
他の人が待ってる中で急いで注文を決めないといけない場面では、焦りも生まれます。
結局、伯父に口頭で説明を受けて料理を決めました。

これは大人になってからの体験ですが、私は確信しました。
いくら読める言語であっても、いくら簡単な単語であっても、
やっぱり母国語でない文字を目で追って、頭に入れて、理解することは大変なのです。

外国語を学ぶときの葛藤

そんな「慣れない文字」の中で、
私たちはアクセント記号に注目したり単語の意味を考えたり、様々なタスクを抱えています。

それで頑張っているのに、母音の開閉音やnasalなどの発音を正されると、
間違えるのが怖い、恥ずかしいと思ってしまう日本人のクセが出てしまい、
練習が捗らなくなってしまいます。
(私がそうでした。そして練習に挫折し、ポルトガル語を話すことができないまま育ちました。)

なので私はレッスン中、遠慮なくカタカナを使っています。
その方が説明が早く、生徒さんの理解も確実なのです。

ネイティブの先生がカタカナを嫌う理由

母を含め、多くの(おそらく全ての)ネイティブの先生は
「カタカナで読み仮名を書かないで!」
とおっしゃると思います。
少なくとも「カタカナ書いていいよ!」とおっしゃるブラジル人の先生を、見たことがありません。

その理由はよく分かります。
以下は私の個人的な解釈です。

1、ポルトガル語は「日本語じゃない」

当然の主張です。
しかしその本当のところの意味を、私たちは理解していません。
「日本語で書かれた外国語」は、詰まるところ「日本語」でしかないのです。
なので先生方も、口を酸っぱくして「カタカナ禁止」を守ってほしいと願っているのだと思います。

何事も、どうしても「自分の価値観」を基準にして物事を判断します。
私たちの「価値観」は、「日本語」ではかります。
だからカタカナで読み仮名を書いてしまったら、
ポルトガル語を「日本語で」読んでしまいます。
きちんとポルトガル語と向き合うために、日本語は封印するべきなのでしょう。

2、ポルトガル語に慣れるため

次に思いつくのは「ポルトガル語に慣れる」ためだと思われます。
カタカナで読み仮名を書いたら、いつまで経ってもカタカナばかりが目について、
それを読んでしまいます。
そしていつまで経っても「ポルトガル語を読む」ことができません。

そして、カタカナを追うことによって、困ることが起こります。

例えば、ポルトガル語には「子音連結」といって、
母音を挟まず子音が連続して並んでいる文字列があります。
カタカナを追っていたら、その文字列の出現に気付かず、正しい発音の判断ができません。

trem [トレーン]「電車」

trは母音を挟んでいません
でもカタカナで読むと、tを「to(ト)」と言ってしまい、
「o」の音が出てしまいます
これでは間違った発音をしてしまいます。

またemはnasal(鼻母音)で発音しなくてはいけない文字列ですが、
カタカナを追っているとnasalの文字列が見えないので
nasalをすっかり忘れてしまうでしょう。

もし読み仮名を「トレン」と書いてしまったら...
アクセントに気をつける意識がないため、
非常に「日本語っぽく」なってしまいます。

また、発音が間違っていると、最悪の場合、
意味が通じない/別の意味になってしまいます。

avô 「おじいちゃん」
avó「おばあちゃん」


カタカナで書くと、どちらも「アヴォー」です。

[o]の音を、閉口音か開口音かで使い分けなければいけませんが、
カタカナの「オ」は1つしかありません。
カタカナを追って、アクセント記号が見えていないと、
「おじいちゃん」と「おばあちゃん」
どちらを伝えたいのか分かりません。

こういうことを防ぐために、また、
こういう文字列が頻繁に出てくることを理解するために、
カタカナの表記を制限しているのだと思われます。

3、ポルトガル語を愛し、誇りを持っている

あとは単に、ブラジルやポルトガル語を純粋に愛するあまり、
「他のものを混合させたくない」という思いもあるのではないかと思います。

それでも私はカタカナを使います

以上のことから、ネイティブの先生の言い分も、
私なりに十分理解しています。

ですが私は、先述通り、自分の経験してきた苦痛を多くの人に与えるのではないかと恐れ、
カタカナでのレッスンを行っています。

とても好評です。
そして、とても教えやすいですし、生徒さんの理解も一瞬で完了します。

「『エンコントラー』じゃなくて『エンコントラール』の『ル』の部分まで息を出し続けないと、音が足りません」
(encontrar [動] 会う)

「『ニンゲン』じゃなくて『ニンゲーン』と伸ばし棒を入れてアクセントを出し、その『ー』の時間を使ってnasalをしてください」
(ninguém [代] 誰も〜ない)


こんな感じです。
もちろん、理解をするためだけにカタカナを使います。
これとは別に実際のポルトガル語の発音も音声学の面から解説し、
その理論のもと、発音に挑戦してもらいます。

次回に続きます。

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✼••┈ A sua professora ┈••✼
꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

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