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Ayamé靴下・ものづくりの真髄・奈良生産の靴下とは

Ayamé靴下は、奈良の広陵町で生産されています。あまり世間では知られておりませんが、奈良の広陵といえば、靴下の一大産地です。私、会社員時代も含めると20年以上もの間、年に数回この地に来ていまして、40数年の人生で、住まいがある東京をのぞくと一番多く訪れている街です。

工場はものづくりの現場です。Ayamé靴下が作られていく工程において、ものづくりや素材の選定はデザインを支える土台のようなもので、そこにデザイナーの感性や価値感がプラスされ、全体を刺激して、プロダクトが作られていきます。

この写真は編み地デザインをデータ化する作業です

私、デザイナー自身がものづくりの現場とどのように向き合うかというのは、製品を作ることにおいてとても重要であると思っています。どんな高い素材を使おうが、デザイナーと工場の、お互いの息が合っていないと良いプロダクトは生まれ得ないと思っています。

日本の靴下生産は一つ一つの工程がとても繊細で、強度や品質を保つために、その作業すべてにおいて緻密さが要求されます。それは機械の編み立ても同じことで、日本人ならではの几帳面で丁寧な気質がそっくりそのまま商品の表情を作り上げています。

靴下編み機

靴下編み機のどこの糸道に、どのぐらいの番手の、どの糸を何本食わせるかを決めていくのですが、Ayaméでは業界常識的に "適合番手"とされる糸の太さをセオリー通りにセットせず、あえて "食わせ過ぎ" たり、"食い足らない" ようにして、何回も研究し、絶妙な風合いを探し続けています。

ブランドを始めた当初は、毎シーズン何日か工場に泊まりこんで、自分自身で実際に機械を動かして編み立てをしていました。デザイナーもちゃんと機械や現場のことを理解していないと、という工場の社長の方針でした。

朝から晩まで機械と向き合い、糸庫を行ったり来たり、納得いくまで何回も糸を架け替えて、ああでもないこうでもない、と、体力的にも中々きついのですが、類まれなことで、厳しくも愛ある素晴らしい経験をさせていただきました。

ものづくりの土台があってこそ活きる感性と価値観

我々ファッション・アパレル業界は今、様々な問題を抱えています。大量生産、大量消費、廃棄物による環境汚染や労働環境問題など、あげはじめたらキリがなく、国際機関からは環境汚染産業と指摘され、胸が痛む次第です。

その一方で、海外からの安価な製品に押され、国内生産量は減少しており、戦後に躍進した繊維産業は縮小の一途をたどっています。日本生産で低価格を追求するには無理があり、しかしここ数十年で、人々の衣料品に対する価格基準は完全に下がってしまったので、日本産の手間ひまかかった高品質の商品の需要は減る一方です。

靴下業界・繊維業界内では大きな問題として常に話題になっていますが、解決の糸口は中々見つかりません。何しろ一人が頑張ったところでどうにかなる問題ではないからです。

小さいブランドには小さいブランドにしかできない事があります。それは、日本の工場が持つ技術を最大限に引き出すような商品づくりです。精妙で優美なものは、得てして時間と手間がかかります。

靴下編み機の低速回転生産や、針が飛んで生産効率が落ちてしまう事もしばしばですが、日本のものづくりの真髄を商品を通して伝えるためには必要な事だと思っています。

素材と編み機と工場の特性を活かすデザインを考え抜き、日本産の技術を引き出していく事は、我々のような小規模クリエーターの役割であると思っています。

抗えない時代の変化というのもありますが、良いものはそれなりに値段が高い、という価値観も残って欲しいと切に願います。

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