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母とクレ・ド・ポー

母は喜び上手だ

何をあげても
「わ〜うれしい〜」と言って
よろこんでくれるから

なんでもない日でも
母がよろこんでくれそうなものを見つけると
よくプレゼントしたものだ


車に乗り始めたとき、
遠方のあるケーキ屋さんに行こうと決めていた


桃を丸ごと1個使ったケーキ


母が絶対よろこんでくれると思い
買いに行ったこともある


だから
特別な日、誕生日プレゼントは
念入りにリサーチをして準備をした


中でも
その後リピート買いすることになった
クレ・ド・ポー

県内のあらゆるクレ・ド・ポー台帳には
わたしの購入履歴がのこっていると思う


母はお化粧に興味がなかった

わたしもそうなんだけど、
デパートのコスメ売り場は好きだった


シャネルとかイブサンローランの
口紅を塗るだけで
自分が素敵になるような気持ちになれた


だから母にも
同じ気持ちになってほしい、
もっと母自身を大切にしてほしい


そんな思いから
誕生日プレゼントには
有名ブランドのコスメを贈るようになった


母をコスメカウンターに誘っても
断固として拒否された
自分の顔にコンプレックスがあるからだそうだ


顔のシミそばかすがあるから
自分の顔がきたないと言ってた


わたしは
それを聞くたびにとても悲しくなったから
だったら最高のファンデーションを贈ろう!
と思いコスメ雑誌をよみあさった


口コミやランキングなどリサーチし
自分でもコスメカウンターに通って試し、
クレ・ド・ポーに決めた



お値段は立派だけど
母に喜んでほしかったし
もう自分を傷つけないでほしかった


シミそばかすなんてわたしは気にならないし
母の笑顔はほんとに素敵なのだから
もっと自信をもってほしかった


他のブランドの口紅を贈ったこともあったけど
香りや匂いがきついのがダメらしく
使わなくなって結局わたしの手元に戻ってきた

真っ赤のシャネルの口紅も
そのうちの一つ口紅


リサーチの功をなして
クレ・ド・ポーのファンデーションは
見事、母のお気に入りになってくれた


それから毎年
同じものを贈るようになっても

わかっているだろうに
それでも母は毎回
「ありがとー」と言ってくれた


それに、もう
自分の顔が汚いなんて言葉を聞かなくなった



どれくらいクレ・ド・ポーを
贈り続けただろう・・


そうしているうちに
わたしは実家を出て一人暮らしを始めた


一人暮らしはお金がかかるということで
これからは
母自身で買ってくださいと伝えた


そしたら
やはりデパートのコスメカウンターは
母にとってハードルが高かったらしく

まるではじめての子供のおつかいを
手伝う感じに・・・


さかのぼること1ヶ月前・・

クレ・ド・ポーの場所まで一緒に付き添い、
そのまま中に入るかと思いきや
お店の前でうじうじ・・
うだうだ言って結局お店に入らなかった


そんな経緯を経て
先日母をランチに誘った日、

食事の前になんと母から
「今日はお化粧品を買う」と言い出して
一緒にお店の中に入りやっと購入できたわけです



それがうれしくて うれしくて


母もマダムデビューだわと
その後もしあわせじんわり味わっております


自分を傷つけるような言葉を言わなくなって
そして
自分でお化粧品を買うようになった母


いまだに保育園で働き
今度は講習を受けに行くと言っていた


そうやって何かに挑戦し続けるところ
前を見続けようとするところが
素敵です


わたしの周りには
母だけではなく素敵マダムたちがたくさんいて
お手本になる


いくつになっても
自分をあきらめない
自分を楽しむことを大切にする


そうやってわたしも
年を重ねていきたいと思います


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